王家の呪い
オーレリアン王国の王族には呪いがある。
私がしていたこの世界を題材にした乙女ゲーム『光の聖女 オーレリアン王国戦記』は第一王子のアスランを失いアルフレッド第二王子が15歳の時に王家の呪いを発症したところから始まる。
それを救ったのが現在残念ヒロインと化しているマルガリータ・ウィルソン子爵令嬢……つまり私。
そのオープニングが無かったので王家の呪いをすっかり忘れていた。
私は馬車に降り立つと同時に倒れたアスランを見て駆け寄った。
「アスラン王子!」
父も慌てて医者を呼び魔法コートの胸元を開けて目を見開いていた。
ちょうど胸の中央に黒い百合の痣が浮かび上がっていた。
「まさか、伝承であった王家の呪い」
私は一度この模様を見たことがある。それがオープニングの時だった。
「あのオープニングがなくなったけど、私に聖女の力はあるのかしら?」
もう話が進んでしまって発動しないかも知れない。
でも。
でも。
私は兄と似た笑みを浮かべるアスラン第一王子の姿を思い出した。
兄の最期は警察の霊安室で包帯にまかれて眠っている姿だった。
なにも。
何もできなかった。
「例えアスラン王子とこの先何があっても助けたい。私が残念ヒロインだって……ううん、もうヒロインじゃなくってもいい」
私はアスラン第一王子の手を握りしめて祈りを込めた。
「お願いします。アスラン王子を助けて」
アスラン王子の手と重ねた手に魔力が集まってくるのを感じた。
それは光の魔力。
父や母。
そして、駆けつけてきていた医師や従者たちも目を見開いて見つめている。
私はそっと瞳を開けて光がアスランを包み込んで黒い百合の痣が光の百合へと変わっていくのが分かった。
そして、アスランの苦悶の表情が和らぎうっすらと瞳が開いた。
「……マルガリータ……」
私はアスランの身体から王家の呪いが解かれるのを感じると笑みを返した。
「良かった、私にまだ力があって……アスラン王子」
父は驚きながら従者に王子を館へ運ぶように指示を出しながら私を見た。
「まさか、マルガリータ……お前に聖女の力が宿っていたとは」
「お父さま、でもこれは秘密しておいてください。私は聖女としてよりマルガリータ・ウィルソンとして普通に生きていきたいんです。だから、お願いします。ヒロインでなくていいんです。ヒロインじゃない方が良いんです」
父と母は顔を見合わせたものの頷いて私を抱きしめた。
こうして私の聖女の力は秘密になった。
アスランは三日後に目を覚ました。
身体はすっかり良くなり、何故か、野良仕事に出ていた。




