早過ぎですがノンビリ進路を考えられるのでOKです
私ことマルガリータ・ウィルソンは悪役令嬢が二周目の残念ヒロインなんだけど旧人生でもイージーな割りに一番大切なモノを手に入れられないという運命が今回も大当たりを起こして本来なら公式カップルの相手であるアルフレッド第二王子は既に二周目悪役令嬢のリアンナ・ウェルズ公爵令嬢と固い恋で結ばれていた。
私は魔法学校の寄宿舎で一人本を読んでいた。
空には星が瞬き澄んだ空気が夜の風に乗って部屋に舞い込んできている。
王都に館を持つ王族や伯爵以上の令嬢や子息は自宅へと戻り男爵以下で地方に領地のみを持っている私のようなベータクラスの学生は寄宿舎で生活をしている。
その中には魔法学校での勉強についていけず故郷に戻るものや、魔力に才能が無さ過ぎて去っていくものが少なからずいた。
私は取りあえず今のところどちらも問題はなかった。
けれど……大問題があった。
夜遅くに寮監のミリア女史が私の部屋を訪ねてきた。
「マルガリータ、貴方の噂は聞きました。ウェルズ公爵令嬢に嫌がらせをしたということですが……その、もしかして王族の方に指示されたとかですか?」
私は意味が分からず首を傾げた。
「え?」
ミリア女史は息を吐き出すと私を廊下に誘いそっと告げた。
「今、アスラン第一王子がお忍びで応接室におられます。貴方に会いたいと」
私は目を見開くと慌てて駆け出した。
えーと、まだ、それほど徹底的な話にはなっていなかったはずで……王様に呼ばれて断罪の状態ですらないんですけど。
私は応接室の戸を開けると中で魔法マントを目深に被って待っていたアスラン第一王子を見て声を上げた。
「王子!? あの、あの、私まだ断罪シーン迎えてませんけど!?」
バーンと開けて立っている私を見てアスランはプッと笑うと笑顔で告げた。
「ごめんね、たった今、一気に王と王妃に話をして廃嫡されてきた」
アハハハ、とそんな笑顔と笑い声で言う内容じゃないことをあっさりポンと何言っているんですか?
私は「早過ぎ」と心で叫び駆け寄った。
「じゃあ、逃げます?」
アスランは笑むと私の頭を撫でた。
「君は良いよ。俺は王都を離れて静かに暮らそうと思うから。ただもう君は彼女に嫌がらせをする必要はないし、ちゃんとやってないと言って大丈夫だからね」
つまりはそう言うことだったのだ。
私はむっとアスランの手を掴むと怒った。
「そんな中途半端な気持ちで手伝うって言ったわけじゃありません!! それに残念ヒロインは断罪されるか、和解という名ののけ者で終わるんですよ? だったら、今退場しても良いと思います」
私は笑みを作った。
そう、兄似たアスラン第一王子に協力したいと思ったのだ。
だったら最後までやるつもり。
「逃げましょ、私の故郷……ウィルソン子爵の領地へ」
私は大切な本だけをカバンに入れてミリア女史にお願いをした。
「アスラン王子は王位継承権争いに敗れて逃げて来られたので一刻を争う状態なのです。私は匿うために故郷へと帰ります。荷物はまた取りにまいりますので良しなにお願いします」
王位継承権争い。
ミリア女史は驚愕すると私とアスランを心配した。
「ご無事を祈りますよ」
私は頷いてミリア女史が手配した馬車にアスランと乗り込み故郷へと向かった。
ウィルソン子爵領地は王都からかなり離れた南の小さな土地であった。
私は闇夜を走る馬車の中で小さく欠伸をするとうとうとと眠った。
この終わりに大変な事件が待っているとはこの時は思いもしなかった。
1週間ほど馬車で南の街道を下り、小さいけれど落ち着いた田畑の緑が広がる田園地帯と館を中心にオレンジの屋根の家が波状に広がるウィルソン子爵家領地の最大の町サンフローラ。
そこに辿り着いた時にミリア女史から連絡を受けていた父と母が心配して飛び出して来て馬車から降りた私を抱きしめてくれた。
「マルガリータ!! お前は大丈夫だったのか?」
私は転生した今の両親を抱きしめた。
「ええ、私は大丈夫。でも、お父さま、お母さま、ごめんなさい」
「いいのよ、マルガリータ。貴方が無事なら」
「そうだぞ、今はゆっくり休みなさい」
父はそう言って続いて降りてきたアスランに頭を下げた。
「アスラン王子、ようこそ。我が領地へ……事情は国王より手紙で伺っております。御身をお守りいたしますので安心してお暮しください」
アスランは王が全てを理解していると分かり笑みを浮かべて馬車を降りかけた。
瞬間であった。
私は背後で倒れる音と父と母の悲鳴を聞いて振り返った。




