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9話

「こちらの子が今日からカイン殿下の侍女に付きますシルフィ・アルベルタです」

「シルフィ・アルベルタです。これからよろしくお願いします。」


その当時の侍女長がシルフィを俺に紹介した。

侍女長は当時58歳でその当時はこの道40年の大ベテランである。

60歳になった時に高齢のため辞職したがそのあとは学園の侍女部で精力的に若い侍女候補達を育て(シゴい)ている。


そんな彼女はその当時の俺が信頼を置いていた少ない人の中の一人だ。



なぜ信用できる人が少ないのかというと、その当時、俺の侍女になりたいという奴らがたくさんいたのだ。しかし、それらは全て皇族家との繋がりを持ちたいだとかお金が欲しいだとか、あわよくば側室や正室を狙おうなんて魂胆も見えていた。


そんな奴らが俺のことをちゃんと見てくれるわけもなく仕事も最低限、しかし媚びて猫なで声で話しかけてくるのは本当に恐怖に値した。


しかも当時の俺から得ることができるものが何もないと確信するとすぐに彼女たちは辞めていった。


そんな経験をした7歳の俺は若干の人間不信になっていた。

いや、今は誕生日の時の話を後しているから8歳か?まぁここでは8歳として話そう。


「なぁ、お前はいつ辞めるんだ?」


だから俺がこんなことを聞くのも仕方ないことだ。


アホか?!過去の俺っ!そこでシルフィが気分を悪くして辞めたらどうするつもりなんだ!


ところで心の中でくらいシルフィって呼び捨てにしてもいいよな?嫌われないかな?


大丈夫。心の中を読むなんて物語の中の賢者でもできないだろうし。

シルフィ、いい響きだ。


結果として辞めることはなかったから過去の俺の態度は問題ないだろう。

いやいや、結果論じゃないだろう。

第一印象はずっと頭に残るとこの前、本で読んだぞ。

くっ、あの頃からやり直したい。


まぁ結果から言えばシルフィはそんな俺の態度を気にもせずただ質問されたと思ったような答え方をした。


ん?そう言えばその時の表情は……真顔だったな。

あれ?今思いかえすと明らかに機嫌悪くないか?


「いえ、お暇をいただくまでは仕えさせていただきますが?」


ほらっ!暗にさっさとクビにしろって言ってるよ!俺馬鹿じゃねぇの?!

いや、ここで発想を変えるんだ。

こちらがクビにしなければシルフィは俺の側にいてくれると言質をとったんだと。


うん、大丈夫だ、多分。


「そうか…わかった」


シルフィの返しに慣れていない俺はそんな返事をした。

そこら辺にいる人なら『暇をいただくなど!滅相も無い!』とか『一生お仕えさせていただきます』とか言ってくるのだが、シルフィは至って真面目な顔で……あっ真顔か、そして落ち着いた声で……抑揚のない平坦な声で……


俺、絶対嫌われてるだろ。


いやその当時はそんな感じだっただけで今はふとした時に見せる笑顔とか感情も結構わかるようになってきたし。

それがまた愛おしいんだよな。可愛いし。



そのあと料理長からケーキがホールで届いんたんだ。


その当時の俺はシルフィがどれくらいできる奴なのか確かめようとして紅茶を入れるように言ったんだ。

ちょうど3時で小腹が減っていたというのもある。


今思えばケーキをホールで出すなど7歳の子供なのだから残るに決まっている。

全くずいぶん無駄なものだ。


そして、この時からシルフィはシルフィだった。

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