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10話

現実と回想がどこで切り替わっているかわかりづらかったので少し工夫してみました。

さて茶を入れろ…と命じた後の彼女の動きは早かった。


というかいつのまにか茶が蒸らされている状態だった。


「後3分で飲み頃です。それまでお待ちください。」


しかしその時の俺は気になったのだ。

なぜカップが2つあるのか。


「なぜカップが二つあるのだ?」


なぜ気づかない当時の俺!チャンスだぞ?今じゃ数多な男に言い寄られながらも全くなびかないために鋼の侍女長とまで言われる俺の大好きなシルフィとお近づきになれるチャンスなんだぞ!


まぁ、過去の俺に言ってもわからないだろうな。


「私が飲むからですが、何か問題でも?」

「問題しかないだろう?!お前本当に侍女部卒業したのかっ?!」


何言ってるんだ!全く問題ないだろう!

他の侍女ならともかくシルフィとならお茶を飲むことぐらい問題ないだろうが!


「ええ、歴史、魔法、家事、護身術その他諸々の採点される項目は全て200点を取りました」

「100点満点だったよな?!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今、思い返しても確かにすごいことだ。


シルフィの学生生活の評価というと……


『歴史を当時の人のごとく語り、魔法を専門家よりも上手く使い、家事は魔法を使い一瞬で終わらせ、護身術は軍人よりも強い。

もはや能力が高すぎて侍女にするのが惜しい…むしろ能力が高すぎるが故に侍女という職業に一番向いていない』


教育者よりも高い武術、魔法、技術、教養、マナー、礼儀作法、全てにおいて高水準。

そんな事実を見せつけ教育者の心を片っ端から折っていったそうだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「確かにそうですが先生方よりも私の方が2倍は優れておりましたので。もちろん先生方も認めてくださりました」


このように傲慢な態度であるが実力が異常以上にあるために誰も反論などできない。

この時の俺はまだシルフィの異常さにも魅力にも気づいていなかったんだ。

なぁ?そうだろ?嫌ってなんかいなかったよな?


「お前嘘つくなよ。私に嘘を吐くと不敬罪になってしまうぞ」


そういえばこの頃の俺はアホだった。

なんで権力をこんな風に使ってしまうのか。


「嘘など吐く必要が今の会話のどこにあったのですか?……3分たちましたね。ケーキも少しもらいますね」


そしてこの頃からシルフィはマイペースだった。

普通の侍女は仕える人とお茶を飲まないし、仕える人の食べ物を横から持っていくこともしない。


だがこの時はそれでよかった。


「うわっ…これ本当に料理長が作ったんですか?……隠し味のポイズンドラゴンの涙はちゃんと処理しないとエグミが出て使えませんよ?まぁそれなりの処理でもまぁまぁ香りがいいので及第点ですね。

ホイップクリームはちゃんとしてますしスポンジもプロの技ですねぇ。季節のフルーツは見た目がいいですし……あっまた処理し損ねてる。

キラーストロベリーの麻痺毒は種にあるから種を取り除かないとえぐみが少し出るし、アサルトマスカットは薄皮を取り除かないと渋みがでてダメですよ。

まぁ、それでも美味しいですね。くどすぎず、あっさりしすぎず、ちょうどいいバランスの甘味で紅茶にぴったりです」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


うわぁ、シルフィがめっちゃ喋ってる。

しかもめっちゃダメ出ししてる。

それでも少し微笑んでる!


……よし決めた

今度、巷で人気のケーキ屋を呼び寄せよう。

権力はこういう時に使うものだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


シルフィの話した内容の中に出てくるこの単語。


ポイズンドラゴンの涙

キラーストロベリー

アサルトマスカット


これらの名前を聞いて当時の俺はそんなことを思うわけもなく恐怖に震えていた。

当時の俺は父上からもらった毒薬の本を熟読して毒について勉強していたからそれらの名前を聞いてすぐに思い出すことができた。


全て解毒薬のない遅効性の猛毒だ。


この皇宮にそんなものを持ち込むことはできないはずだった。

だが万が一の可能性も考えて俺はシルフィに聞いたのだ。

そもそもシルフィは普通に食べてるから嘘だと思ったのもあるが。


「本当にそれらの毒薬が入っているのか?」

「毒薬?あぁそういえばこれ毒あったね。で何?毒ってわかればいいの?」


機嫌を少し損ねたのか荒っぽい口調と態度のシルフィ。だるそうにしながらも、おもむろに澄んだ緑色の液体が入った試験管を取り出した。


それは当時の俺にも見覚えのあるものばかりだった。


賢者の試験液。


その昔、賢者と呼ばれたエルフの女性が毒を見分けられない民衆の身を案じて作ったと言い伝えられているものだ。


その特性としては人の体に害をなすものが試験液に触れると試験液の色がたちまちに紫色に変わる。

ちなみにこの試験液自体は全く毒性を持たず飲むこともできる。ちなみに甘くて美味しい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その時不思議に思ったのは、シルフィはなぜそれを持っていたのかだ。


賢者の試験液…これは本当に一流と呼ばれる薬師かエルフの貴族にしか作れないとまで言われる貴重な品だから、お値段もそれなりにする。


今になって思えばシルフィは俺の侍女でありいざという時に俺の身代わりになる人材だ。

おそらくあらかじめ父上の関係者から受け取っていたのだろう。


シルフィの毒への抵抗力がいくら高いとはいえ俺を説得することや、周りに証明することは無理だからな。


そう考えると当時父上が俺に毒の勉強をさせたのは俺に納得させるためだったのか。

流石父上、どれだけ先を読んでいるのだろうか。

もっと精進しなければ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



シルフィがケーキを少しつまみ試験管の中へ入れる。

するとたちまち試験液は紫色になった。


シルフィはもう一つの試験管に入っている試験液をケーキにぶちまけた。


するとケーキのスポンジ以外は、たちまちにおどろおどろしい紫色に変わった。


「嘘…だろ…」

「あの…残り食べていいですか?」


当時8歳の俺は、初めて暗殺されそうになった。

そしてシルフィは意外と食い意地を張っているということを知ることができた。


=====================================



そうか、ケーキ屋だけでは足りないでは無いか。

今度呼ぶのはケーキ屋だけじゃなく町中の菓子屋を呼ぶべきだな。

きっとシルフィも喜ぶだろう。

その前に告白しなければ。

シルフィもまだ考え事をしているらしい。


今思ったのだが手を繋いで廊下を一緒のペースで歩く。

これは……恋人っぽい!

いや、浮かれてはいけないんだ。

今朝読んだ王都の告白スポット100選を思い出せ。


ん?なぜ皇宮の中のどこも選ばれていないのだ!?

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