92.ラグナ生命体
ラグナ生命体
アマトに次々と迫る流星群、実は『アキナ』というラグナの生命体だった。サクヤの操縦は素早かった。しかし相手は個々に意思を持ちその軌道を何度も予期せぬ方向に変える。
サクヤの肩に現れたのは『虹色テントウ』に変異した七色テントウのペンダントトップだった。
「私はミンリン、あなたの言う通り外の流星群はアキナという名のラグナ生命体よ、このままではそれを倒すことはできない」
「じゃあどうしたらいい、ミンリン」
「あなたが力を借りれる妖精はパピィね、パピィこの生命体に着床して」
「やれやれ、由美子ほど動けるのかい。この娘は」
「さあ、少しなら大丈夫でしょうね」
たちまちサクヤは空色の霧に包まれた。
「メタモルフォーゼは持って5分、避けて避けて避けまくれ!」
メタモルフォーゼによりサクヤの感覚が研ぎ澄まされた。サクヤは今までとは比べようもない速度で流星を回避し始めた。そしてさすがの流星群も次第に遠ざかって行く、サクヤは少し安堵した。
「安心するのは早い、またこっちへ来るぞ。さあここからだ」
やり過ごしたはずの流星群が一つにまとまり、アマトの後方から向かってきた。彼女には獲物を取り上げられた猛獣のように思えた。
「牙を持ち、まるで獰猛な怪物に変異してしまった。一体どういうことなの?」
「流星群じゃあなかった。あれは『ラグナ生命体』だ。身体中の細胞が攻撃用に変異した訳さ」
「変異細胞?」
「原始生命体『ラグナ・ノア』の持つ能力の一つ、メタモルフォーゼに匹敵するものさ。さあサクヤ来るぞ」
「く、来るって。一体どう、どうしたらいいのよ」
サクヤは狼狽を隠せなかった。
「祈るんだな、ナナ様お助けくださいってね」
「何冗談言ってるのよ、こんな時に」
「馬鹿、本気だよ。ナナを起こすんだ、それしかない」
「わかった、言う通りにする。ナナ様、お助けください……」
パピィのメタモルフォーゼは解除された。フェアリーを着床するには相性、細胞のシンクロ率が深く影響するのだ。空色シジミのパピィは単独では動けない、マイがアマトに乗り込ませた『ナナ』にはそれが可能だった。
「何がナナ様よ、パピィったら。私とサクヤはねえ、最初のパートナーだったのよ、ナナでいいわよサクヤ」
マイがアマトにナナを乗せたのは、ナナが地球を再び救えると思ったからだった。(過去の話はまた後述する)
「サクヤ、私はナナ、でも私のことは記憶にはないかしら。あなたの最初のパートナーとして地球に行ったこともあったのよ」
そういいなかがら振り向いた少女は緑髪を片手で軽く掻き上げた。
巨大なラグナ生命体は一旦、球体に形状を変えた。そして赤茶色の海サソリのような体に変異すると二本ある捕獲器を伸ばした。
「アマトはあんたの食べモノなんかじゃあないわよっ!」
ナナはそう叫び、すぐに今度はこう言った。
「そうねえ、でもそんなに食べたいなら、食べてみれば?」
「ちょっと、ナナ何言ってんの、早く逃げなきゃあ」
「逃げる?」
ナナはサクヤにそう言って笑った。どうやらその気は無さそうだ。迫り来るラグナ生命体はアマトの後部に追いつき、今度は一変し、投網のように変異した。どうやら周囲を取り囲み、アマトごと飲み込むつもりのようだ、しかしナナは少しもひるまずこう叫んだ。
「ヒドラ行きなさい、あなたの出番よ!」
アマトの後部カメラに、長い紐状のモノが次々と映り込んだ。それが襲ってくるラグナに一斉に向かう。その数7本、ヒドラの触手だ。先端には鋭い牙を備えた口器がある。最強の『親ヒドラ』だ、その姿をサクヤが間近で見るのは今回が初めてだった。
「アマトの船体に練り込まれていた原始生命体は、ルノクスに眠っていた親ヒドラだったのね」
「そう、ダーマが作った『ラグナ・ノア』よりもっと強大な生命体。どちらが取り込まれるか勝負するまでもないわ」
ヒドラは一斉に巨大な口器を開き、ラグナをまるで貪るように食いちぎり続けた。




