91.アキナ流星群
アキナ流星群
アマトに乗り込みデュランたち反乱軍から逃れたサリナ、しかしその直後ベガからタキオン粒子砲の直撃を受けてしまう。その衝撃で床に叩きつけられたサリナに生命の危険が及ぶ、しかしアマトの二人の搭乗者はライフカプセルの中、サクヤがオペレーションによるオートクルーズを続けていた。
骸骨の姿に見えるノアにナナイロテントウが着床し、サクヤのオペレーションが稼働した。それがオロスの地下のクレパスで見つかった「サクヤ」だったのだ。さてインセクトロイドに変異したサクヤはまもなく未曾有の流星群に遭遇するのだった。
「あらまあ、大変。何この流星群、冥王星あたりで遭遇したのと比べ物にならない数だわ」
彼女=容姿は女性のインセクトロイドであるためそう呼ぶ、はそう言いつつ、操縦桿を操り始めた。しかし、全て避けることなどもちろん不可能だ。何度もアマトに衝突する流星に彼女は手を焼いていた。
「アマトには武器らしいものは積んでないのね、このまま避け続けることは出来ない。なんとかしないと……」
『アキナ流星群』は容赦なくアマトを取り囲み、まるで意思でもあるかのように執拗に衝突してくる。彼女はそれを機敏に察知し避け続けていた。アキナ流星群は人工的なもの、火星=マルスから飛ばされてきたものだった。それが火星の衛星『フォボス』から指示されていたことはデュランたちが知っていただけだった。
「あの流星群は決して避けることができない。個々の流星は一つの生き物だからな、サンドラ様の偉大な力があってこそなせることだ」
「ええ、あの方のおかげで私達は命を取り留めた。そしてこうして地球に向かっている」
「そうだ、レガータ。お前に残っていた王族の血に感謝するぞ、あんなかけらのような石粒でさえ、ラグナの力で巨大な流星群と化すのだからな」
レガータにはわずかであるが王族の血が流れていたのである。それを手にし、ラグナの石化を解く実験をしたサンドラが作り出したのが流星群となった、多分裂型生物『アキナ』だった。そのため何度避けようが執拗にアマトを攻撃するのだった。
「やはり、変だわ。ただの流星なんかじゃない……」
彼女もようやくそれに気付いた。
「あなたたちの任務は、ルノクスの再誕後に消息を絶った『サンドラ』を探し出し、持ち出されたラグナを取り返すことと、アマトを無事に地球に送ることです。それができれば私とマンジュリカーナとの約束を破った罪を許しましょう。ただし、あなたたちがこの星を離れることは許しません。どうです、ヒドランジア、デュランタ、フローラル、ゲンチアーナそしてシルティ」
その特別任務を完了すれば、なっぴたちとの記憶は消されずに済む。
サクヤの脳裏にパピリノーラの言葉が蘇る。そしてこの流星群の正体に気付いた。
「これはラグナ生命体の一つだわ。でもどうしたらこれを倒すことができるの、こんなの私には手に負えるはずが……」
「まさか、諦める気?」
その時小さな声が響いた、彼女の他には誰もいないはずの艦内に。
「誰、その声は?」
「さあて、誰でしょう」
サクヤの肩に小さな甲虫が浮き出てきた。その姿は七色に輝くテントウムシ、パピリノーラの許可を得て、テンテンがとうとう明らかにした『なっぴへの贈り物』だった。
「生きたナナイロテントウを贈ったというのですか、全くデュランタはとんでもないことをしたものですね」
「姉さん、それだけじゃあないでしょ。全部話したほうがいいわよ」
「まだあるのですか」
「はい、実は娘の遺伝子情報を少し……」
「……」
「そういえばテンリンのあとに生まれた、あなたの娘の成長が少し遅い気がしたけど、まさか?」
由美子がテンテンに尋ねた。
「最初は娘をアマトに直接乗せちゃおうとも思ったけど、さすがにそれはできないでしょ。だからナナイロテントウにあの娘の遺伝子情報を載せたの、もしもの時は『虹色テントウ』に変異しなさいって。パピリノーラ様、とんでもないことをして申し訳ござません」
「まあ、それだったのね。デュランタの贈り物は」
「はい、でも地球はそれぐらいでは救えないかもしれません」
「私も実はパピィを……」
「フローラが急に巫女の力を失ったのは、そういうことだったのね」
「あのう、私はブラックソードから漆黒アゲハを抽出しました」
「もういいわ、私があなたたちに『この星を出なければいい』と言ったのですから」




