85.アマネ・ジガ・ゼロス
アマネ・ジガ・ゼロス
床のイルミネーションライトが二人を館長室まで誘導する。その途中なっぴは不思議なものを感じた。それはどこかで確かに感じたものだったが、彼女には思い出せなかった。
「……この感じ、どこかで私、感じたことがある……」
「この壁は柔らかい材質のようだ、地球のものとは全く違う」
タイスケはその材質に興味を持ったようだった。やがて艦長室に二人は着いた。扉が無音で開き二人は部屋の中に進んだ。
「アマネ艦長、お招きいただいきありがとうございます。アマトの的場タイスケと妻の小夏です」
タイスケがそう挨拶した。
「タイスケ、コナツ、ようこそジガへ。私はアマネ、そして副艦長のメルサー、彼はレビエル、本艦の通信士だが実は科学者でもある」
「よろしく」
「我が艦が突然、貴艦の進路上に突然現れてすまなかった。流星群の衝突を回避するため、やむなく空間転移を行ったのだ。ところで見たところ、あなたがたのアマトは脱出ロケットのようだが流星群による、損傷はありますか?」
アマネはそう二人に詫びるとアマトを気遣った。
「アマトは外宇宙でも充分航行可能なシステムを持つ、星間航行用の小型ロケットです。損傷などありませんわ、ご心配ありがとうございます」
なっぴはほんの少しムッとしたが、そう言って笑顔で答えた。それに気づいたタイスケが場の雰囲気を変えた。
「ところであなた方は火星から空間転移されたのですか?」
「火星、あの焼け焦げた星の事を地球ではそう呼ぶのですか。確かに我らはマルスにいました」
「マルス、それがなぜこんなところまで……」
「あの星で私たちは伝説の『人口生命体』を発掘し、回収したのです。そしてそれがマルスの怒りに触れたのです」
「あなたがたの伝説による『サクヤ・スカーレット』のことですか」
なっぴの言葉にアマネは驚きを隠せなかった。
「あなたはなぜサクヤのことを知っているのです。我ら虫人の伝説を一体誰から聞いたのですか」
「私はゴラゾムとリカーナの娘『マンジュ』につながるものです。それに私達は新生ルノクスから地球に戻る途中なのです」
「そうか、ゴラゾムはリカーナを妃にしたのか。それにあのルノクスを出発してきたというのか?」
「ええ、残念ながら既にゴリアンクスは消滅していました。ルノクスはゴラゾムとリカーナ、そしてビートラが地球に移住させた虫人たちによって再び光を取り戻しています」
「聞かせてくれ、ルノクスの虫人たちの様子を」
なっぴは話した、新生ルノクスの女王となったマイ、それを支える由美子、テンテン、リンリン、シルティ。一度は敵対した虫人の王、ラクレスやコオカそして何よりもアマネやカグマのことを気にかけていたゴラゾムの話を彼女は話し続けた。
「ゴラゾムは我々のことを気にかけていてくれたのか」
「ええ、ギリギリまであなたたち『先発隊』の帰還を待っていました」
副艦長メルサーがアマネに向かってこう話した。
「では、あのエネルギー弾もゴラゾム様が……」
「ああ、おそらくそうに違いない」
「エネルギー弾ですって?」
「我々の乗ったジガは、外宇宙で推進エネルギーとなるルノチウムが底をついてしまった。そして外宇宙を漂流中、ある星の引力に捕まり制御不能に陥った。その時その星から、多量のルノチウムがジガに向けて発射された。とっさにレビエルは『ルノチウム移送システム』を使いジガに取り込むことに成功し、その引力圏から離脱できたのだ」
アマネがその星に立ち寄っていれば、キャステリアを発見しただろう。しかしその破損した姿からは、その後の虫人の未来などもちろん想像もできなかったはずだ。その後二人の乗るアマトにもジガと同様にゴラゾムの『救いの手』が差し向けられた。
「カグマのインセクトロイドは、すでに完成していたのか。ならば我々が掘り出す事はなかったのだな……」
「あなたがたが掘り出したものって?」
なっぴはアマネに確認した。
「虫人伝説創始の頃、ダーマンがイブに似せて作ったと言われる『スカーレット』あるいは『サクヤ』と呼ばれた最初のインセクトロイド」
「それが火星にあったというの?」
「そうだ、しかも鎖を幾重にもかけられていたまま」
「厳重に拘束されていたみたいね」
「石化したままだがお目にかけよう。レビエル案内をしてくれ」
「承知致しました」
「私もすぐ行く、君たちにもう一つ見てもらいたいものがあるんだ」




