84.流星群
流星群
アマトが「ルノクス」の引力圏から離れ、シリウス型エンジンを「外宇宙用」に切り替えておよそ一ヶ月。アマトは順調に地球へと進路をとり、オート・クルーズもなんら異常はなかった。アマトには若い夫婦のタイスケとなっぴ、それに加えるとしたらAI「サクヤ」の3名が乗っていた。地球時間に修正してある艦内の時間に合わせて規則正しいリズムで「ライフカプセル」に入るように、AIサクヤはモニター内で二人に睡眠を促していた。
「お二人とも、そろそろおやすみの時間です」
「あと、一回だけ。ね、いいでしょうサクヤ」
なっぴはタイスケとのチェスの対戦に夢中だった、しかし未だに彼に勝ったことはない。タイスケ=的場太輔は彼女に言った。
「ダメダメ、きちんと8時間は眠らないと。言ったろ、地球まで高速を超えて航行してるから、アマトでの時間の流れと実際の時間は違うんだ。それをシンクロするためには『ライフカプセル』の中で『仮死状態』になる必要があるってね。でないと本当に地球に着いた時に『老夫婦』になっちまうぞ。それでもいいのかい、なっぴ?」
「うーん、仕方ない。地球のみんなにあった時、腰が曲がってたらさすがに嫌だしね……」
「おやすみ、サクヤ。あとはよろしくね」
アマトはいつものようにサクヤの操縦に切り替わった。
だが数時間後にはアマトの周囲は一変したのだ。
「異常事態、進行方向から巨大な流星群がアマトに向かってきます。タイスケ様、いかがいたしましょう」
サクヤの緊急連絡により、タイスケのカプセルが開いた。
「巨大流星群だって、どこから向かってくるんだ?」
艦内服に素早く着替えたタイスケがサクヤに尋ねた。
「太陽系、火星の方向からです。その中に『生命反応』を数体確認。その中には、戦艦らしきものが紛れています」
「一体どうなっているんだ、今まで進路上にそんなものはなかったぞ」
「現在解析中」
ただならぬ様子になっぴも起きてきた。
「火星からって、まだまだ遠いはずでしょう。今まで気づかない訳ないじゃない」
「それをサクヤが今解析しているんだ……」
「解析しました。その『戦艦』の『空間転移エリア』の中に流星群が入り込んだまま、アマトの進路に現れたのです」
「ではその戦艦も同じエンジン、同じ外宇宙を航行していたということになるのかしら?」
「そういうことになるな」
「多少の衝突はあるかもしれませんが、直撃は回避できます」
「その戦艦は大丈夫なの、サクヤ」
「流星群の速度と艦の速度はほぼ同じです。隕石群の隙間をぬうように抜けつつあります、85%大丈夫です」
サクヤが言った通り、やがてその戦艦は流星群から離脱した。それをモニターで見ていたタイスケが言った。
「すごい操縦技術だ、一体どんな艦長が乗っているのだろう?」
「かなりの高い確率で虫人だと考えられます」
「虫人、移住先を探しに出発した虫人たち……」
なっぴが思ったのは「インセクトロイド・シュラ」との戦いで知った、外宇宙に出発した「ゴリアンクス」の先発隊のことだった。結局ゴリアンクスの滅亡には間に合わなかったものの、広い宇宙には虫人の生き残りがいても決して不思議ではない。
「よし、艦長に会ってみよう。サクヤ、あの戦艦に交信してくれ」
「承知致しました。……こちら地球のアマト、貴艦名、船籍を返信されたし、こちら地球のアマト……」
「返信してくれるかしら、ちょっと不安だなぁ」
そう呼び続けたアマトに、戦艦は船尾灯の明滅により、こう返信した。
「私はゴリアンクスの『ジガ』の艦長『アマネ・ジガ・ゼロス』、外宇宙で出会えた貴艦の艦長に是非お会いしたい……」
「ほうら、なっぴ。久しぶりに虫人に会えるぞ」
興奮しながらタイスケが笑った。
「船尾の着艦用のハッチが開きます」
「よし、サクヤ着艦してくれ」
「承知しました」
やがてアマトは巨大戦艦「ジガ」の中に吸い込まれていった




