78.確証
確証
「確証ですって?」
マイとリンリンが同時に叫んだ。
「その件は地球にも関係することだわ」
テンテンがそう言うと小さな包みを取り出して「それ」をマイたちに見せた。
「それは、まさか……」
干からびた木の根のようなそれを、地球でも彼女らは見ていた。
「そう、これはみんなの知っている『ラグナ・マルマ』なの」
由美子はそれを掘り出したのが「スサ」という虫人だと前置きして話を始めた。
「私たちが知っている『ラグナ』は地球では、石化の後『亜硫酸ガス』により粉々に砕けて消滅するわね、でもルノクスでは違う。石化したまま壊れることはないようなの」
「死んでいるの?」
マイが目を細めてこわごわ由美子に聞いた。地球で見たラグナは王国の虫人やアガルタの魚人に寄生していたのである。由美子は首を横に振った。
「ううん、おそらく休眠ってとこかしらね」
「一体それはどこに埋まっていたの」
リンリンの問いに、今度はテンテンが答えた。
「トレニアの丘。以前に誰かが掘り出した跡があったわ、そして持ち去った残りがこれ。きっと持ち去ったのは『サンドラ』という男に違いないわ」
「でもこんな石化したラグナを持ち出すなんて」
「由美子、ラグナは休眠しているって言ったわよね」
「そう、リンリン。この石化したラグナを実は蘇らせることができるらしいのよ」
「それをサンドラっていう男が?」
「いいえ、彼には不可能なの。石化を解く方法は、王族の『ベガ家』と『ジガ家』にだけ伝わっている。サンドラはルノクスから出発したアマトを追ってこの星を飛び去ってしまっている……」
彼の目的はラグナの石化を解くことに違いない、テンテンはそう思っていたのである。
「サンドラの行き先はセイレやミーシャの住む地球……」
「このままだと新たな危機が地球に起こるのは間違いないわ」
「なんとかしなければ……」
だが現在アマトは外宇宙にある、しかも艦内になんらかのトラブルが起こり、生体の反応は全て休眠カプセルの中だ。その中に「ベガ家」の「サリナ」が乗り込んでいることがせめてもの救いだった。
「サンドラとサリナはまだ接触していないみたいだわね」
「ジガの王子とは?」
「アマネは、ゴラゾム王の命を受けて、いち早く虫人の新しい移住先を探す任務に就いていた。艦隊を率いて出発したまま未だに行方が分からない……」
「もし、サンドラがアマネに会い、ラグナの石化を解いたとしたら、そのラグナは太古から続く、虫人たちの特殊な遺伝子情報を持つ。しかも強大なものに違いない、例えばあの『イト』のような……」
「イト……」
「イトの遺伝子情報を持つラグナが寄生する……」
悪夢に相違ない。そうなれば誰がそれを止めるのか、ルノクスの巫女にはその『イト』の伝説を思い出すものもいた。
(以下、「なっぴの昆虫王国」より)
「闇の暴君『アギト』と光の暴君『イオ』がこの国に現れた。まさにこの国が破壊つくされようとした時、『虹の勇者』が突如現れた。勇者は『七色の龍刀』を使い、暴君を止め、そしてこの池(虹の池)に封じ『イト』と名付けて祀った」
(以上、「なっぴの昆虫王国」より)
マイとシルティは知らない、しかしテンテン、リンリン、そして由美子もその名を聞くとすぐその姿を思い浮かべた。イトが邪悪なものに召喚されれば再び闇が暴走を始める。地球では『創始』の時代は終わり、天上界、人間界、海底界の力を結集して、それをくい止めねばならない。パピリノーラは、任務についてこう話した。
「あなたたちの任務は、ルノクスの再誕後に消息を絶った『サンドラ』を探し出し、持ち出されたラグナを取り返すことと、アマトを無事に地球に送ることです。それができれば私とマンジュリカーナとの約束を破った罪を許しましょう。ただし、あなたたちがこの星を離れることは許しません。どうです、ヒドランジア、デュランタ、フローラル、ゲンチアーナそしてシルティ」
「えっ、私もですか?」
シルティが思いがけないことに驚いた。
「あなたの協力なしで、あんなことはできないでしょう。あなたの念波はラベンデュラ、アロマリカーナさえ超えている、それがまさしく『ヨミ』が認めたルノクス最高の巫女の力なのね」
「恐れ入りました、パピリノーラ様……」




