63途切れたデータ
途切れたデータ
カノンは「ソムテル」に予定の時間を三十分ほど過ぎて到着した。二人から受け取ったメモリーを再生しながら日高は言った。
「……アマネは地球人ではないのか、そして彼には『ゼロ』というインセクロイドが関わっている。火星から月へ航行する間に何らかの異変が起きたことは疑いようもない、とにかく二人ともよく届けてくれた」
「カグヤのおかげです。ノイズが多くデータの修復が完全にはできなかったのですが、もう少し続きがあります」
「君にも修復できないほどのノイズか、それは意図的なものだな。君達を追跡してきた奴らの仕業だろう」
「おそらくそうだと思います」
「ところでケイジは?」
「亜矢のところへ行く準備にかかっています」
「ホバージェットを使うつもりなのか?」
「雪上車だそうです。空はもうこりごりだと……」
日高にメモリーを渡すとケイジは研究所の「格納庫」へ向かった。新しい雪上車を使うためだった。
「そうか、彼はその方が確実だと判断したのだろう。よし、続きを見てみよう、何かわかるだろう」
日高はそういうと再びモニターを見つめた。
「ここから少しノイズが多くなり、途中で再生が終わります」
コレッタが再生のコマンドを打ち込んだ。
「xxxxルナまで通常航行する。余分なルノチウムは『石化剥離』に使用、何としてもゼロの石化を止めるのだ」
「しかし、うまく甦らせたとしても、インセクトロイドは心無き者、我らの力にはなりえません」
「メルサー、伝説が本当ならば、ゼロもxxxxを持つことができる」
「アマネ様はゼロに『赤い翡翠』を使うxxxx。あの石は元々『ナツメの石』、『闇の石』xxxxx。心にいったん闇が湧きおこれば、邪悪な『ヨミの化身』にxxxxしまうと伝わっております」
xxxxxxxxxxxx
「xxxxx彼女は『闇の石』を自らの力で浄化してくれた」
「それが真実だとしても、ゼロに『赤い翡翠』が適応するのか私には予測できません」
「メルサー、お前の話はもっともだ。まずはゼロの石化を解いてからにしよう、それに私は『三番惑星』に届ける物もあるxxxx」
「艦長、ところであの小型のカプセルロケットは『三番惑星』に自力で帰還できるのでしょうか。ジガに曳航された方が早く、そして安全に戻れるはずだったのに……」
「xxxxマトバはあのロケットに誇りを持っていた。彼の正確なデータを見れば、私にもxxxxが理解できた。学者とは未来のためにxxxxxなのだろうか」
「それは私にはわかりませんが、xxxxするために生きている生き物なのでしょうか?」
「人間の気持ちは、わからないが、彼女はxxxxのとき、私にこう言った。不老不死も再誕もいらない……と」
xxxxxxxxxxxx
コレッタの技術を駆使してもデータには予想以上のノイズがあり、修復できない箇所が多くあった。そしてそのデータもやがて途絶えた。日高が少し思案してこう結論付けた。
「ドクター・マトバは少なくともアマネたちが火星に到着し、ゼロを回収する以前に『外宇宙』で会っている。そしてカプセルロケット「アマト」で地球に戻ろうとしていた。アマネが彼女と言っていたのは『万寿小夏』という女性のことだ、私は彼女について次元を解明したアカデミアきっての才媛と聞いてる。ゼロはルナで『闇の石』に心を奪われたに違いない……」
日高の手元には哲生からの情報も届いていた。それをメモリーに複製保存して、コレッタに預けた。
「これを亜矢君に渡してくれ。アマネが地球で『Z-CROSS』の教祖になった経緯が入っている」
「所長『Z-CROSS』というのは何ですか?」
「新興宗教だ、滅亡から次の繁栄が始まるというのが『教義』だと哲生が調べている」
「それがアマネの過去……」
コレッタがバッグにメモリーを仕舞い込むと、日高はこうコレッタに言った。
「ケイジとここを出たらもう戻る必要はない。キラー衛星はすぐにここを見つけるだろう。カノンを追ってきたドローンを撃ち落としてくれた分、十分時間は稼げた。いいか、君も知っている趙とサラはモンゴルへ向かった」
「モンゴルに二人は何のために」
「雄馬の護衛だ、彼は月に出発する準備をしている」
「ジーザス・コア計画」の試験は成功し、いよいよ本格的にルノチウムを移送する段階になった。その移送設備を管理・運用するため、橘博士が月面基地に赴くことになったのだ。
「準備完了、スノー・バギーの調子は完璧だ……。どうした、コレッタ」
「ううん、何でもない。亜矢なんだけどパリ郊外にいるみたい、電波が届かないから地下の研究所かしら?」
「そうか、急ごう。追っ手が来るかもしれない、吹雪の中でもこいつなら問題なく飛ばせる」
「所長、気をつけてください」
「私のことは心配するな。コオが開発した『ペンシル・ミサイル』でキラー衛星は必ず破壊する」
「念のため、地下に避難してくださいね」
「わかった、わかった。さあ一刻も早く出発するんだ、そうだひとつ言い忘れていた」
「所長、それはなんですか?」
「君たちはお似合いだよ、これからも仲良くな。ははははっ」
「えーっ!ないない」
二人が顔を見合わせて吹き出した。




