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約束の地  作者: 黒瀬新吉
53/328

53.ケイジとコレッタ

ケイジとコレッタ


代替エネルギーの探査はついに海底にまで及んだ。多少のシェールガスや化石燃料は確認できたがとてもそれでは持たない。エネルギーの消費は統制されたままの生活は続いた。その探査の途中、海底の巨大な大陸「アガルタ」はついに発見された。未知の海底大陸は人類の新たな希望となる。しかしこの大陸の探査は遅々として進まなかった。その原因は不明だが探査途中、探査船のAIが不意に作動しなくなるのだった。それは何度潜っても同じことだった、このままでは計画は進まない。原因究明のため「海洋センター」からケイジが派遣された。しかし、アガルタへ向かう途中、彼の潜行艇も制御不能に陥った。


アガルタに近づくとその探査艇は突然機関が停止した。「海洋センター」からは「久我啓示(ケイジ)」、「日本アカデミア」からは「揚羽舞人(マイト)」が派遣され搭乗していた。

「AIの不具合のようだ。障害の原因は不明だが手動で航行しよう、まだ予備バッテリーで半日は動ける」

「了解、あの海底のクレパスに入るぞ」

「オッケイ」

アガルタの入り口になる深いクレパスに向かうのは小型の球形の潜行艇「AMATO(アマト)」。その基本設計は古いが何より手動のシステムも併設されていたため「韮崎甲(コオ)」がケイジの改良した耐圧殻を使い作り上げたものだ。「AMATO」は少しの停止の後、再び動き出した。


しかし、クレパスの手前で「AMATO」は不意に大きな衝撃を受け、海底の岩盤に叩きつけられた。そのため二人は気を失った、その時の話は亜矢以外には、夢を見ていたのだと一笑されるのだ。


「深海で停止した探査艇は故障ではなかった。海底の人魚たちは、人間が地球のコアを使うのを拒んだのさ、きっと取り返しのつかないことになるからといって」

「地球のコアをエネルギーに利用できるということなの、でも人間にはそれは制御不能だということなの?」

「そうらしい」

彼は当時を振り返りながらコレッタに話し続けた。

「その人魚はセイレと名乗り、直接僕の脳に話しかけた『ジーザス・コア計画』はまだ早すぎる、的場と万寿の二人が戻るまで待つべきだと繰り返したんだ」

「もしあなたの言う通りだとしたら、セイレという人魚は二人のことをよく知っているということになるわね……」

「ああ、その通りだ。二人が異界の住人たちのために外宇宙に出かけたこともその目的も話してくれた」

「異界の住人?」

「彼らは虫人というらしい。彼らの星が滅びようとしている時にその王が虫人とともに地球に漂着したというんだ、そして異界に暮らしていたんだとね。その星はまだ完全に消滅していない、その星を再生するために二人は地球を出発した。耐圧殻で覆われた小型のカプセルロケットで」

『それが消息の不明な『amaato2』ということなのか』

コレッタはケイジの話をどうやら信じ始めた。


「二人の乗ったアマトは太平洋上で無事に回収されたのね」

「なぜかマイトはその時のことを何も覚えていない。おかげで俺が夢を見ていたことにされた。妄想癖があるんじゃあないかと、海洋センターからとうとうここへ配置換えだよ、まったく」


度重なる探査の失敗が続き、ついに「ジーザス・コア計画は中止された。そのため「海洋センター」に勤務していた彼は次に「コスモアカデミア」に配属された。そこには「ソムテル研究所」で同僚だった「コレッタ・オブリアン」が別の研究をしていた。彼女は月のヘリウム3を地球に移送する方法を模索途中、雄馬を通してアマネの計画を知る。そして何回かの実験を終えてついに昨日、大規模な実験が成功した。


「いいじゃない、憧れの亜矢に会えたし」

「まあね、彼女にはどこか普通じゃないところがある、そこが魅力なんだけどね」

「ハードルは高〜いよケイジ、ははははっ」


彼はアマトのAIを狂わせたのが「アガルタオオウズガイ」の念波であり、あの衝撃は「アガルタの門番」ダイオウイカの足の一撃だったことは知らない。しかしそれよりも重大なことを思い出した。

「待てよ、アマネ、アマネ・ゼロ……。そうか、思い出した。最後セイレは僕にこう言った。『あなたたちはゼロのように力ずくでアガルタに入ろうとしない。だからこのまま帰してあげましょう、そして私たちとともに二人が戻る日を待ちましょう』と、今ようやく思い出した。アマネは僕達より先にアガルタに行っている。そして強引にアガルタに侵入しているんだ」

コレッタはそれを聞いて推理した。

「そうか、アガルタでアマネは何かしでかしたのに違いないわ」

「そうだろうな、だけどおかしいぞ。少なくとも海底ではAIは狂うし、耐圧殻で覆われた潜行艇は「海洋センター」の他にはない。果たしてそんな艦はこの地球上に存在するのだろうか?」

それを聞き、コレッタが冗談を飛ばした。


「それじゃあ外宇宙からでも来たんじゃあないの、虫人みたいに」

二人は目を見合わせた、そして同時に叫んだ。


「それだっ!」

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