表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束の地  作者: 黒瀬新吉
PR
26/328

26.囚(とら)われの女王

26.(とら)われの女王


「まあ、なんて失礼な人」

立腹した黒人魚が男の背中に言葉を投げつけたが、ゼロは短く笑ってこう答えた。

「あいつは記憶の一部を消去している、あれは、まあしょうがない。しかし黒人魚よ、アマネは使える男だ、何よりこのバゴスを作った男だからな」

「記憶の一部を消去された……」

「そうとも、やつは根っからの軍人、しかも別の星の者だ。俺と同じく、この星を手に入れようとしていた」

「なぜこの星を?」

「……さあ、おしゃべりはおしまいだ。それにまた言葉遣いが戻っているぞ、黒人魚」

「申し訳ございません、お館様」


「まあいい、お前はアレを手なづけることに腐心しろ。アレは天空を()べる一族、その女王だ」

「天空族の女王、アテナだとおっしゃるのですか」

「ほう、さすがに黒人魚。アテナのことも知っているとは、やはりお前を仲間にしておいて正解だったな」

「しておいた……、それはどういうことでしょう、お館様」

ゼロは黙った、黒人魚もまたアマネと同じく記憶の一部をゼロに削り取られていたからだった。

「見張りはほどほどにしておけ、アテナはもう空を飛ぶことはないからな、死んでしまっては元も子もない」


ゼロは目前の天まで届くかのような塔を見上げてそう言った。


アテナが幽閉されている塔は城の南にそびえていた。そこに訪れるものは小鳥たちだけだった。天空族の女王の部屋は鉄格子のはめられた窓、そしてべッドが一つだけの簡素なものだ。アテナはその天空族の誇り「(あま)の翼」を剥ぎ取られていた。それは人魚の「フィン」のように取り外し可能なものとは違い。直接背中から生え、翼に成長したものだ、それは再生しない。アテナはその塔から逃げることはできなかった。だがゼロの思い通りにもならなかった。


ようやく隼が戻り、格子の外枠に止まった。気配を感じ、振り向いたアテナは閉じたままの目を開いた。

「ホルス、私にあなたが見てきたことを伝えてちょうだい」

隼の眼は左右の瞳の色が違っていた。その赤と青の瞳がアテナの目に戻る。彼女は隼をねぎらう言葉をかけると、その役目を解いた。隼が見てきたことがすべて再生され、アテナにも見えた。

「ご苦労でした。アガルタにはまだ希望が残っているのですね」


塔から飛び去ったホルスはアテナの「目」となっていた。アテナは天空族の女王、およそ空を飛ぶ生き物はアテナの思いのままだ。だがその根源「天の翼」はゼロにより剥ぎ取られてしまった、今ではその能力は隼のホルスにしか及ばないのだ。

「この星にプテラが蘇っているということは、太古の天空族もこの星に現れているのかもしれない。恐ろしいのはゼロ、それを見据えて私を捉えるなどあいつは、一体何者なのでしょう……」

ホルスを見送るアテナの背中に黒人魚の声が投げかけられた。

「教えてあげようか、アテナ。ゼロはこの宇宙を作られたお方の意思で動いている。そうねエスメラーダ、オロシアーナの二人でも叶わなかった。おそらくあのマンジュリカーナでさえ、足元に及ばない最強のインセクトロイド。造物主『マスター・シード』に最も近いお方、それに抗うことなど無意味。あなたも諦めたらどう、そしてこの星の再建に力を貸したらどうかしら?」


挿絵(By みてみん)


迂闊(うかつ)にもこの能力を見られたかもしれない、アテナはとっさにそう思った。


「さすが黒人魚、こっそり盗み見するのもお得意のようね」

「それってどういう意味かしら、あなたは自分の立場がわかっていらっしゃらないようね。少しお仕置きが必要かしら」

黒人魚が長い鞭を取り出し、それを二、三度しごいた。すると鞭は牢柵の隙間からアテナの体に向かってくねりながら伸びていった。

「きゃーっ」

アテナの足首に絡みついた電磁鞭から、焦げ臭い匂いが部屋に立ち込めアテナは気を失った。


「ふん、情けないこと。ゼロはたいそうあなたがお気に入りのようだけどね、翼のない天空族など人魚の敵にもなりはしない。いいこと、私があなたを折檻(せっかん)したことは秘密にするのよ、その代わりあの隼のことはゼロには黙っておいてあげるわ。それともう一つあなたの気が変わらない限り、そこからは出られない。その間あなたは何もすることがなくておヒマでしょうからね、せいぜいあの隼でこれから起こることを楽しんだらいいわ、おほほほほっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ