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010-狐耳ちゃんを尋問しよう


 テッサの街の大通り沿いにある食堂。そこのテーブルを挟んで、俺と狐耳ちゃんが座っている。テーブルの上には、肉と野菜と穀物をごった煮にした異世界風雑煮が深皿に入れられている。

 要するに、狐耳ちゃんから詳しく話を聞くついでに、ちょっと遅い昼食を食べようという事で、今ここに居る訳だ。


 スプーンでわりと細かく刻まれた野菜を掬い、口に運ぶ。うむ、あまり美味くないな。だが食えない訳じゃない。次は肉を食べてみるが、こちらは良く肉汁が効いて美味い。やはりこの野菜がダメだ。特に茎部分は苦みが強くて単体では食えないな。これ野菜とスープが合っていない気がする。

 対面に座る狐耳ちゃんを見ると、顔を落として、あまりスプーンが動いていない。けっこう強引にここまで連れて来たから、まだ混乱しているんだろう。


 テーブルの上に置いてあるスマホには、『新メンバーの顔写真を撮ろう!』と表示されている。既にパーティーメンバー扱いされているが、実のところ、返答はまだである。多分断らないと思うけどね。


 スマホを持ち、裏側にカメラがあるつもりで狐耳ちゃんにスマホを向けると、狐耳ちゃんの狐耳がスマホに映る。このままシャッターを押したい気分になるが、ぐっと我慢して声を掛ける。


「ちょっとこっちを向いてもらえるかな?」

「ひゃっふぁいっ!?」


 ビクンガタンと盛大にキョドる狐耳ちゃん。こぼしてないから大丈夫。

 やや涙目の彼女の顔をフレームに収め、


 パシャリ!


 はい撮影完了。

 狐耳ちゃんは不思議そうにスマホを眺めつつ、ほぼ無反応である。どうやらシャッター音は聞こえない様子。こいつも指向性がうんぬんの超技術なのか。……盗撮し放題だな!

 まあ、それはともかく。


「自己紹介がまだだったね、俺の名前はソラって言うんだ。……君は?」

「ラナ、と、言います……」


 ふむふむ、ラナね。ラ、ナ、と。はい名前入力完了。

 入力を確定させると、『生体ID検索中…』というファンタジー世界にそぐわない文言が一瞬見えた後、狐耳ちゃん……ラナの顔写真が『キャラ情報』画面に登録された。

 スマホの『キャラ情報』画面は、名前と、顔写真と、謎の青丸と、『状態』が表示されている。『状態』には俺の場所だけ『Lvレベル』があり、ラナには無い。何となく思っていたが、このレベルはスマホの機能開放のトリガーでしかなく、<ちから>や<すばやさ>等が上昇する訳ではなさそうだ。


 スマホの画面がまた変わった。


 『パーティーでモンスターと戦おう!(0/5)』


 いや、今そんな場合じゃないから。まだ顔合わせ中だから、そう急かすな。

 出てきたメッセージはさくっと閉じる。メッセージを閉じてもタスクが動いている事は何度か確認してあるので問題はない。


 顔を上げると、ラナの困惑顔が目に入った。突然謎の板をいぢり回す怪しい男を目の前にして、そうなるのは当然だと俺も思う。

 ここは向けられる疑問をスルーして話を進めよう。


「じゃあ、聞くけど。あの三人とはどういう関係?」

「……その、同じ冒険者で、同じ”星無し”だから、パーティーを組んでいて、その……」


 要約するとこうだ。


 彼女、ラナは”星なし”冒険者としてソロで活動し、貧乏生活を送っていた。

 このままじゃいけないと一念発起し、パーティーを組もうと考えた。その結果、今日組んだのがあの三人。全員”星無し”のパーティーだ。

 ギルドで依頼を探すも、手頃な物が無い。

 すると彼らは言った。

「お前が遅いのが悪い」

 事実、自己紹介やら話し合いやらで時間を取ってしまった自覚はあるため、彼女は謝罪した。

 が、男三人はそれで満足するはずもなく、犯罪行為での稼ぎを提案。

 餌として『お金持ってて弱そうな男』を路地裏に引き込む役を強要され、俺がかかり、今に至ると。


「なるほど、悪い男に引っかかったのか」


 イチャモンからの謝罪、そこから犯罪に関わらせて……ってわりとアリガチな手だよね。この場合、金を取った後は宿を確保して三人がかりで……と繋がるパターンかしらん。


「まあ、そいつらはもう居ないから大丈夫だ」

「あ……あのっ……あの三人は、どうなったんですか……?」

「え? さあ?」

「……」


 実際知らないから、聞かれても困る。

 スマホの奴は超威力の攻撃としか言ってないしな。なんで消えるのかはさっぱりだ。


「そんな事よりも、今は今後の話だ。これから二人でやっていく訳だからね。」

「えっ? あっ、はい」


 うむ、流されるタイプか。臆病だし、この娘は放っておくと破滅しそうだな。


「俺も”星無し”だから、弱めのモンスターを狩っていく事に……そう言えば、ラナが得意なことは? どんな武器使う?」


 今更ながらの質問に、ラナの耳がしゅんと倒れる。


「あの……わたし、剣も魔法もダメで……」

「魔法はともかく、武器は剣以外にもあるよね?」


 街中でも色々見る。槍斧メイスエトセトラ。


「お金が無くって……これしか持ってなくて……」


 そう言ってラナが出したのは片手剣、かな? 刃渡り三十センチ未満の短い剣だ。予備兵装としては十分だが、メインウェポンとしては頼りないな。

 しかもこれで不得意、金が無いから他の武器を試す事も無理と。


「……よく今まで冒険者続けられたね?」

「街の周辺の薬草採取でなんとか……」


 それで無理してパーティー組んでアレか。


「なるほど分かった。正直戦力外もいいとこだが、俺もそんなに戦える方じゃないんで、お互い頑張っていこう」

「はっはい」


 大丈夫かな? 大丈夫だよな?



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