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旧)忌み子の願い  作者: あぽ
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第8話 講習会4

「ウラアァァァァアァアア!!」

「っ!何だ!?」



 抜き身の大剣を持って走る。5匹のワーウルフが此方に気付き、走ってくる。迎撃に備えて大剣を右腰に構えて、接触のタイミングを測る。

 


「おい!何処へっ!?」



 ………横に一光を走らせる。飛び掛かり、今にも鋭い爪がレイに届こうとした時、まとめて切り裂かれワーウルフ達は上下に別れて肉片が飛んでいく。勿論飛ぶのは肉片だけでなく体液を、切断面から吹き散らしている。この飛沫はレイ自身だけでなく、ゲイルにも付着している。

 強力な一撃の迫力により圧倒され、体を強ばらせている手近なワーウルフを次なる獲物として捉える。



……さっきの一撃のお返しを沢山してやるよ。そこのワン公だったよな。仕返しだっ!



「くそがぁ!」

「……っ!?」



 レイの5匹をまとめて切り裂く程の一太刀を少し前に襲った1匹対して大剣を振った。しかも仕返しの念を込めている為、敢えて切り裂かないで剣の腹で殴っていた。腹で殴っているからと言って無事な訳もなく、場外ホームランをぶちかまして夜の闇に消えていった。つまり、それだけの勢いを受けたワーウルフは全身の骨は砕けて筋は千切れている。

 とてつもない一撃にカナミアは思わず息を飲む。カナミアの方が技量はあるが、最早あれ程までの膂力であれば技術など問題外である。



「何だあれは?」



 グラトスがワーウルフ達の異変に目敏く気付く。レイを最大の脅威と認めたワーウルフ達は連携を取り、大半の頭数で小柄な少年を潰しにかかる。

 昨夜のたった2匹でさえ、素晴らしい連携を見せたワーウルフ。今夜はその10倍以上に及ぶ数のワーウルフ達が連携するのだから、昨夜の単純な時間差攻撃では済まないだろう。

 レイはグラトスの声を聞き、視線の先を追う。そして、素早く大剣を構えて戦闘態勢を整える。この間僅か1秒もかかっていない。

 態勢を整えたとほぼ同時にワーウルフ達が駆け出す。5匹1組の3組がレイの左右後方へと回り込もうとする。大外から距離を保ちつつも、位置取りを確実にしていく。当然背後を取られて安心出来るわけもなく、後方に回り込む組を目で追う。その隙を突くかの様に視線の外れた正面の5匹が襲いかかってくる。慌ててこれらを視界に納めて気付く、正面には5匹しかいないことに。30匹以上いたはずであるので、前後左右の組の数が5×4で20匹つまり、10匹以上が姿を消しているわけである。



「はあっ!!」



 正面5匹の初めにレイに到達した1匹を一刀の下に切り伏せる。縦に一直線に切り裂かれたワーウルフは死んでも尚、慣性の力を保ち死体はレイへと向かうがあっさりと避けられてしまう。1匹が死亡した時点で残りの4匹は足を止め急に減速してレイの間合いに入る前には停止する。そして横に拡がり様子を伺う素振りをする。



「ヴヴゥ……ガァッ!」



 喉を鳴らし始めたかと思いきや、大きく吠えて前後左右のワーウルフが一斉に動き出す。先ず左から3匹が跳ねて首または頭を狙い食い付こうとする。左足に加重して大剣を振り抜こうとする。



「うおっ!?」



 顔の高さまで跳んでいたワーウルフ達がレイの下半分の視界、つまり足元の視界を遮って見えにくくしていた為、二段構えで来る足元の2匹に気付くのが遅れる。しかし、鬼気をさらに纏い避ける為に体を捌きつつ右足に重心を置く。



「ーーーーっ!」 



 しかし、回避したと思っていた矢先に右肩に痛みを感じて右を向くと5匹のワーウルフが同様の形態で二段構えを作り、跳んでいる3匹の内1匹の牙がレイの肩を浅く抉っていた。着地したその1匹を見ると、大きく尖った牙に付着した血が紅く焚き火に照されている。

 ギラリと光る牙に物怖じせず、着地の為に動きが止まったそいつを切り上げる。その返す刃で右足を狙って来ている2匹を斬る。



「後ろだ!危ねぇぞっ!」



 ゲイルが叫ぶ。後ろを振り向けば5匹全てが身を小さくして地面を滑るように迫り、足元から崩しに掛かっている。このまま足を餌にさせる訳もない。身を屈めている状態では身長の小さいレイでも少々見下ろす形になり、5匹の首は綺麗に一筋の一振りで胴体とおさらばしている。5つの首はやがて地面に落ち、無造作に散乱している石同様になる。

 ゲイル達もレイに集中している以外のワーウルフを相手に戦闘を繰り広げている。カナミア、グラトスは各2匹のワーウルフづつ相手取っているが、ゲイルは10匹程を相手にしている上に、全員に気を配り注意を促しているのは流石と言うべきだろうか。



「グルァアッ!!」



 レイの相手の1匹が吠えると、足元が盛り上がる。咄嗟にその場から離れて、さっきまで立っていた場所を見る。



「ワーウルフっ!?何故、地面から!」



 地面からワーウルフが鋭い牙を剥き、前世で見たイルカの跳躍にも勝る勢いで飛び出してきていた。地中からの襲撃は予想しておらず驚いたレイだったが、即座に駆け寄りワーウルフが地に降り立つ前に、切り捨てる。

 ちなみに、このワーウルフはレイの正面に位置していたが、目を離した隙に姿を眩ました奴等である。



「……くっ!」



 2匹の俊敏な連携により、じり貧のカナミア。すなわち、レイは30匹程を相手にしていることは、異常なわけである。



「これは、きついな」



 グラトスも同様に苦労しているが、じり貧のではなく微少に優勢に事が進んでいる。



「そこだっ!!」



 ゲイルにおいては10匹という数を相手にしているが、着々と数を減らして現在では5匹まで減っている。



「ワオォォオオォン!!」



 そして、5匹目が死ぬと林の夜闇にから遠吠えが聞こえてくる。



「おいおい!増援は勘弁してくれよ!!」



 増援を予期して気を引き締めるが、ワーウルフは踵を返して林へと消えていってしまう。



「おや?何も……ない?」



 警戒態勢で暫く待つが気配もない為、一旦全員で焚き火に集まることに。



「大きな怪我は無いようだな!!」

「こんな事って稀にあるですか?」

「いいや、今回は異常事態だ!!ギルドへ報告のためにも、講習会は終了とする!」



 まだ短いこの世界での生活だが、ワーウルフの集団襲撃はギルドでも情報が無かった為、熟練冒険者であるゲイルでさえ無かった経験であるようだった。初心者講習会は異常事態報告の為、現在をもって終了してガーランに帰る事となった。現在空は明るみを帯びてきており、帰還にも問題ない時間である。



「準備できたな?ワーウルフの素材はギルドが検証後に明け渡してくれる筈だ!じゃあ、帰るぞ!!」



 夏の朝はひんやりしていて気持ちが良い。しかし、つい先程まで死闘を繰り広げていた4人は汗、泥まみれで清々しい朝には似合わない疲労感を漂せつつ帰路につく。

悪文ですが最後まで読んで頂き、ありがとうごさいます。

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