↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンデリ男の敗北 ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~  作者: アル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/13

第7話「俺、お前のこと好きだわ。」

六月上旬。


昼休み。

俺は田中、小川と三人で学食にいた。


「そういえばさ。」


唐揚げを口に放り込みながら、ふと思い出した。


「俺、凛ちゃんと連絡先交換してねえわ。」


田中が箸を止めた。


「……今さら?」


「今さらって何だよ。」


「お前、あれだけ冬城さんに話しかけてるのに。」


「大学で会えるし。」


「わざわざ探しに行ってるだろ。」


「まあ。」


図書館まで探しに行ったこともあった。

美奈に居場所を聞いたこともあった。

なのに、連絡先は知らなかった。


「次に会ったら聞こ。」


そう言って飯を食べようとすると、田中が俺を見た。


「ていうか、お前、最近冬城さんの話ばっかりだな。」


「そう?」


「そう。」


今度は小川が答えた。


「この前のバーベキューの帰りも、ずっと冬城さんのこと気にしてたし。」


「寝てたからだろ。」


「肩で。」


「そう。」


「嬉しそうだった。」


「そう?」


「そう。」


小川が淡々と答えた。

田中が俺をじっと見た。


「……お前、冬城さんのこと好きなんじゃねえの?」


「え?」


思わず箸が止まった。


好き。

凛ちゃんを?


田中がすぐに笑った。


「いや、ないか。夏樹が女の子を自分から好きになるわけないもんな。」


「なんだよ、それ。」


「今までそうだっただろ。告白されて付き合うとか、かわいいから付き合ってみるとか。」


「まあ。」


確かに、それまで彼女は何人かいた。

でも、付き合う前から一人の女の子のことを、こんなに考えたことはなかった。


大学で凛を見かければ、話しかけた。

いなければ、探した。

笑っていれば気になった。

知らない顔を見つけると、もっと見たくなった。

花を見ただけで、凛を思い出した。


「…………。」


頭の中に、凛の顔が浮かんだ。


無表情で俺を見る顔。

呆れた顔。

クレープを食べていた顔。

友達と笑っていた顔。

俺の肩で眠っていた顔。

すずらんを持って、少しだけ柔らかく笑った顔。


「あ。」


「何?」


田中が聞いた。

俺は箸を置いた。


「……好きかも。」


「は?」


田中が固まった。

小川は驚きもせず、水を飲んでいた。


「やっぱり。」


「やっぱりって何だよ。」


「前からそうだと思ってた。」


「マジ?」


「お前、冬城さんの話ばっかしてる。」


田中が俺と小川を交互に見た。


「ちょっと待て。マジで?」


「うん。」


口に出すと、急にしっくりきた。


俺。

凛ちゃんのこと好きなんだ。


「俺、言わなきゃ。」


「何を?」


「凛ちゃんに好きって言わなきゃ。」


「は?」


田中がさらに大きな声を出した。


「おい、早まるな!」


「なんで?」


「今、気づいたんだろ!?」


「うん。」


「せめて一日くらい考えろよ!」


「好きなら言ったほうがよくね?」


「そういう問題じゃ――。」


俺は立ち上がった。


「じゃ、探してくる。」


「おい、夏樹!」


田中の声を背中で聞きながら、学食を出た。


まず、法学部棟。

いなかった。


中庭。

いなかった。


図書館。

いなかった。


「……どこだよ。」


スマホを取り出した。


凛ちゃんに連絡――。


「連絡先知らねえじゃん。」


さっき自分で言ったばかりだった。


なんで交換してなかったんだよ。


何度も喋った。

二人でクレープも食べた。

バーベキューの帰りには、肩で眠られた。

花まで渡した。


なのに、連絡先すら知らなかった。


美奈とのトーク画面を開いた。


『凛ちゃんどこ?』


送った。

けれど、既読はつかなかった。


「美奈までつかまんねえ。」


俺はスマホをポケットに突っ込み、また歩き出した。


それまで女の子の連絡先なんて、向こうから聞かれることのほうが多かった。


自分から連絡したい。

会いたい。

話したい。


そんなふうに思ったことも、たぶんなかった。


「……マジで好きじゃん。」


自分で言って、少し笑った。


それからしばらく、大学中を歩き回った。


そして。


「あ。」


校舎の向こうに、見慣れた黒髪が見えた。

小さな後ろ姿だった。


「凛ちゃん!」


凛が振り返った。

俺はそのまま走った。


「……どうしたんですか。」


「探した。」


「なぜですか。」


「言いたいことあったから。」


「何ですか。」


凛が俺を見た。


走ったせいで、息が少し切れていた。

でも、言うことはもう決まっていた。


「俺、お前のこと好きだわ。」


凛は数秒だけ、俺を見つめた。


少しくらい驚くと思っていた。

もしかしたら、照れたりするかもしれない。

そんなことを考えていた。


だけど。


凛は、いつもの無表情で言った。


「そうですか。私は好きではありません。」


「……え?」


挿絵(By みてみん)


一瞬、意味が分からなかった。


「今、振った?」


「はい。」


「俺を?」


「他に誰がいるんですか。」


「…………。」


振られた。

俺が。

好きだと言った女の子に。


しかも、ほとんど迷いなく。


「……マジ?」


「はい。」


それまでの俺なら。


合わなかった。

じゃあ、次。


それで終わっていた。


なのに。

目の前の凛を見ても、離れようとは思わなかった。


むしろ。


「じゃあさ。」


「何ですか。」


「どうしたら俺のこと好きになる?」


凛が黙った。


その日初めて、少しだけ困った顔をした。


「……知りません。」


「そっか。」


分からないなら、仕方ない。

俺にも分からなかった。


誰かを好きになったのだって、初めてだった。


だから。

これから考えればいい。


どうしたら、凛ちゃんが俺を好きになるのか。


俺はこのとき、初めて知った。


好きだと言えば、相手も好きになってくれるとは限らないらしい。


――俺の初恋は、告白したその日に振られた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。