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新解釈・アリとキリギリス短編小説集〜余命三ヶ月の働きアリ、キリギリスと出会う〜  作者: 地野千塩


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10/20

健康マニアなキリギリス、働きアリと踊る

 昔、昔。あるところにアリとキリギリスがいました。


 夏の間でのアリは一生懸命働き、冬に備えています。一方、キリギリスは毎日歌って踊っています。


 こうして季節が流れ、秋が過ぎ、冬になってきました。食糧を溜め込んでいたアリは大丈夫です。そのために夏もずっと働いていたのですから。


「お腹減った。助けてくれ……」


 毎日、歌い踊っていたキリギリスは飢え死にしそうです。雪の上に倒れてしまいました。


「ちゃんと労働しておけば良かった……」


 良い子のみんなも真面目にコツコツ働きましょうね。さもないとキリギリスみたいになってしまいます。


 ◇◇◇


「なぁ、君はアリとキリギリスっていう物語どう思う? 最近、働きアリ界隈で流行っているらしい」


 今日はジムの日だ。ランニングマシンに乗りながら、コーチに聞いてみた。コーチも俺と同じキリギリス族だが、働きアリは性格が悪いからとジムを出禁にしたこともある。


「またアリ界隈か。よくやるねぇ。そんな一方的に我々キリギリス族をバカにすんなって感じさ」

「コーチの言う通りですよねー。てか、この物語って、政治家や企業のトップとかに都合良すぎだと思いますよ。結局、従順な労働者という奴隷が欲しいだけですよ」

「なんか陰謀論っぽいねぇ」

「陰謀論でも中には真実があります」


 コーチは呆れていたが、この世の中の食品も不健康なものが多い。特に大企業が混ぜ込んでいる添加物はとるすぎると健康を害すると知った。ソースはない。それこそ陰謀論だったが、無添加を徹底した生活を送ったら、頭痛、めまい、鬱、不眠などの不調も全部解決。今は毎日ジムで汗を流し、健康を追求していた。健康マニアだって笑われていたが、別にいい。


「ふぅ。今日もいい汗かいたわ」


 ジムを終えると、気分爽快だ。あんなに運動したけど、一駅ぐらい歩いてもいいか。若いころに足腰を鍛えておくだって健康マニアとしては重要だったりする。歯や骨、皮膚も年取った時、取り返しがつかない事だってあるし。


「うん?」


 そんなことを考えながら家についたが、玄関の前になんか倒れてた。


「お前、働きアリか?」


 よくみたら働きアリじゃないか。どうして倒れてるんだ?


 まあ、放置するのも気分が悪いし、一応介抱してやった。ツボも揉んでやる。意識が戻ったら特製のチキンスープと玄米がゆを食べさせてやった。もちろん全部無添加かつ手作りの美味い飯だ。特に玄米にはこだわってる。信頼でくる農家から直接購入したもの。


「う、うまい」


 働きアリは感動して涙をこぼしている。聞くと毎日ファストフードとコンビニだったという。


「そんな飯食ってたら具合悪くなるだろ?」

「でも毎日残業続きで。飯作る余裕もお金もない……」


 働きアリはまだ泣いていた。さっきとは別の涙だとは思う。しょっぱいな。いたたまれない。実際、とっくに医者から過労と言われているにに、仕事を辞められなかったんだそう。


「そんな健康を害してまで仕事する意味はあるのかい。本末転倒ってやつだ」

「そんな……。てか、キリギリスさんは何で食ってるんですか」

「俺? 俺は健康インフレエンサーとして動画作ったり、無添加食品会社とコラボした」

「はぁ? そんなの仕事!?」

「仕事だ。だったら、働きアリさ、俺とコラボしないか? お前が仕事辞めて俺が健康指導して、実際どう変化していくか動画やブログ記事にするって企画。今思いついた」

「そんな仕事は辞められませんよ」


 働きアリはもはや涙目だったが、報酬金額を提示したら、あっさり折れた。平均年収ぐらいの金額だ。なんだ。やっぱりお金のために仕事していたんじゃないか。


「まず、食事はよく噛め。あとは腹八分目で。発酵食品や和食中心で」


 そんな基本的なことから教えていった。食事の効果はすごい。働きアリの慢性的な頭痛や腰痛はすぐに治ってしまった。


「これでもけっこう健康だと思うんですが」

「いや、まだまだ。筋肉が足りんな。ジム行くか?」


 といってもジムは働きアリが出禁になってたんだ。健康には運動は欠かせない。さて、どうするか。


「だったら、踊るか?」

「は?」


 働きアリは目玉が飛び出るぐらい驚いていた。今まで長時間労働をしていた働きアリ。全然遊ぶことに慣れていなかったらしい。


「踊る?」

「そう、踊るんだ!」


 ダンス動画を再生しながら俺は踊り始めた。リズムに乗り、時には歌う。動かしているだけで身体がふわっと軽い。楽しい!


 こんな俺をみていたら働きアリもつられてしまったらしい。働きアリも踊ってるじゃないか。全くリズム感もない。体幹もブレブレだったが、笑顔だ。そう言えば働きアリの笑顔、初めてみた気がする。


「どうだ、働きアリ。楽しいだろ?」

「た、楽しい!」


 こうして働きアリと毎日踊っていた。他にも日々の習慣がどれほど大事か、老後に影響するかも伝え、率先して健康的な生活を送っている。


 ちなみにこの経緯を動画やブログ記事にしたら好評だった。今度また無添加食品の会社とコラボが決まった。働きアリも健康マニアライターとして仕事を始めたという。


「何だ、この記事は?」


 さっそく働きアリが書いたブログを見に行くと、新・アリとキリギリスという童話もアップされていた。健康マニアのキリギリスが長生きし、日々労働に追われ病気になり早死にしたアリの物語だった。仕事は誰でもできるが、命は失ったら終わり。健康は大事だと締めくくられてる。


「俺、働きアリの一生変えちゃったか……?」


 戸惑うが、後悔はなかった。そう、アリもキリギリスも誰もが代わりはいない。仕事よりも大事なもんってあるし、また働きアリと踊りたくなってきた!

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