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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第7章 領地運営は苦し楽し
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■■■ Step062 迷子の領主とマッドサイエンティスト

「エリー!砦内にタニアはいないのか?」


すぐに砦担当のAIエリーに指示を出す。


「タニアは砦を出ました。最後の記録は物見の塔からの映像で、砦から出るタニアを捉えています。今から42分前です」

「分かった。アリス、千里眼でタニアの場所を特定してくれ」


今度は夜霧に搭載しているアリスに問い合わせる。

ちなみにアリスの性能はエリーの30倍だ。


「申し訳ありません。現在上空に雲があり、タニアを確認出来ません」


曇りか!じゃあ次だ。


「じゃあ、GPSで確認」

「GPSは砦内に反応があります」


スマートフォンを置いてきているのか...。


「ありがとう。雲が晴れたら千里眼での確認をしてくれ。それと、物見の塔のカメラをエルセリア内に向けて、見える範囲でタニアを探してくれ」

「承知しました」


ともかく、行方不明になってしまったな。

だが、エルセリア内であれば大丈夫なはずだ。


「リョウ...」


リアが心配そうに私を見る。


「大丈夫だ。エルセリアから出るには門から出ないとダメで、流石にそこは...いや、まずは門に連絡してタニアが出ないようにしよう」

「そ...そうね」

「みんなはこのカレーを食堂で食べててくれ。タニアは私が探す」

「で...でも...」


リアが不安そうな顔で私に縋りついて来る。

私の袖を握った手は、細かく震えている。


それを見ていたユリが、眼鏡越しに私を凝視しながら宣言するように言う。


「分かった。了くん、タニアちゃんをお願い。私たちは待ってる。ただ、見つけたらすぐに連絡だけ頂戴。あとは任せるわ」

「ちょっと!ユリさん...よね?勝手に決められたら...」

「いや。ユリの意見に賛成だ。リョウ、全てお前に任せる。タニアを頼む」


ユリの発言にキャリーが慌てて反論したが、そこをミームが止めた。


「分かった。任せろ。アリス、動かせるドローンを全部展開させろ。エルセリア内の隅々に飛ばしてタニアを探せ」

「承知しました。発見次第、ご連絡します」

「頼む」


さて、これで道を歩いていればすぐに見つかるだろう。まずは門に連絡だな。時間的に、まだ門を出てはいないはずだ。それでも、万一を考えれば門への連絡が最優先だ。


「じゃあ、電龍で門に一言言いに行く。さっきも言ったけどカレーを食っててくれ。あ、タニアの分もちゃんと残しておいてくれ」

「了くんの分は?」


ニヤリと笑ったユリを見て、私もニヤリと笑う。

ユリが私の分を忘れる事は絶対ないから、そこは心配はしていないが、こういうやり取りは心を落ち着かせてくれる。


「当然、残しておいてくれよ?」

「じゃあ、どうしても残しておいて欲しかったら、早くタニアちゃんを見つけて、一緒に帰って来る事ね」

「最近、私の扱いが雑になってません?」

「私の扱いが雑なんだから仕方ないでしょ?」

「...失礼しました...」


ユリには勝てん...。



電龍の側車を外し、動きやすくして門に向かう。

大通りは湾曲しているが一本道なのですぐに門に到着。詰めている兵士にタニアが来たら出さない様に言付けて、早々に離れる。


まだアリスからは、タニア発見の連絡はない。

現在、エルセリア内を飛んでいるドローンは15機。決して多くは無いから見つけるのには時間がかかるだろう。


それを待っているのは無駄だな。



タニアが行きそうな所...そもそも、今回の失踪の原因...あ~...俺か...。

なんでも「了くん要素」が足りていない、不足しているって事らしい。知らんけど。



エルセリア内で、私とタニアが関係する場所...決定的な場所は...あそこだけだな...。

これが外れたら、個人的にはめっちゃ恥ずかしいが、それは個人的な問題だ。まずはそこに向かおう。

意味不明な自信だが、間違いないはずだ。


電龍で来た道を戻り、途中にある目的の場所に入る。


ここはもう住んでいる人がいない。全員が引っ越ししてしまったからな。

庭にはコープル村の住人が一時的に住んでいた形跡がまだ残っている。


私もここには何度か泊まらせてもらったな。懐かしいと言うにはひと月ちょっとしか経ってないが、正直懐かしいな。

だが、目的の場所は屋敷ではない。納屋だ。


納屋の扉が開いている。この扉には指紋認証の錠を設置していた。指紋登録は私、リア、ミーム、そしてタニアだ。


開いている扉を通り、納屋の中に入る。


ライトの魔法を使うと、納屋の中が照らし出された。何もない納屋の真ん中に、小さな人影が一つ。

そこには...タニアが背を向けて立っていた。



スマートフォンにあらかじめ用意していた「納屋にてタニア発見」の連絡をチャットでユリに送る。

あと、アリスにもドローンを撤退させるように指示を出す。


その間もタニアは私に気が付かず、以前ゲートがあった場所に向かって佇んでいた。


急に声を掛けると驚くだろうな。とは言え、気が付いてくれそうな気配もない。



コンコンコンコン



開いたままの扉の縁を軽くノックしてみた。

肩がビクンと跳ね上がって、ゆっくりとこちらを振り返る。



タニアが泣いていた。

しばらく泣いていたのか、零れ落ちた雫がタニアの豊かな胸に痕跡を残していた。


「リョウ...私...どうしたんだろう...変なんだ...とても...怖い」


怖いか...。

その原因、私も分からないからちゃんと答えられないんだが...少し、話を逸らすか。


「ここには、どうして来たんだ?」

「分からない...歩いていたらここに来た」

「そうか...ここは、俺たちが初めて会った場所だな」

「そうだな...あの時は本当に驚いた。光の中から人が現れたんだからな。白い衣装だったから天使が現れたのかと一瞬思ったぞ」

「俺が天使!?冗談ではないな」

「そうだな。リョウは『悪の科学者』だからな」


泣きながら微笑む。その姿が痛々しい。身体が勝手にタニアを抱きしめようとするが、寸前で止めた。

私がそんな事をするのは違う。そもそも、タニアに対して責任が取れないんだ。


しかし、そんな私の葛藤とは関係なくタニアが動き、頭一つ背が低いタニアは、丁度いい具合に私の胸に収まる。


思わずタニアを抱きしめようと腕が上がるが、やはり寸前で停止。右手をタニアの肩に置き、左手で頭を撫でる。

その瞬間、タニアの心の壁が決壊したんだろう。声を上げて泣き出した。


私はただただタニアの頭を撫でるだけだ。



「すまない...取り乱してしまった...」


時間にすれば5分ぐらいだろうか。だが、ゆっくりとタニアの頭を撫でていたからか、1時間ぐらいの感覚がある。

泣いて落ち着いたのだろう。タニアは離れる事はなく、顔を上げて私を見つめる。

涙の跡が残っているが、綺麗な顔だ。


男として、かなり緊張する場面だが、タニアの頭を撫でている間になんとかコントロール出来た。

が、見上げてくる顔の破壊力は絶大だ。頬が熱くなるのが自覚出来る。


「何を言っている?俺も結構取り乱してるぞ?」


今現在もだがな。


「いつだ?」

「タニアと初めて会った時」


今も絶賛取り乱しているが、ちょっと気恥ずかしい気がしたのだ。ちょうど初めて会った場所でもあることだし、当時のことを思い出してみるか。


「そんな様子は無かったぞ?」

「ここでタニアを初めて見た時、女神かと思ったんだぞ?」


本当は「絶世の美女」と思ったんだが、天使と言ってくれたからな。

だが、取り乱したのは本当だ。


「確かに、色々と挙動不審だったな。特に私の胸を見ては目を逸らす所なんて...」


タニアがいつもの「悪い顔」をする。いつもは悪代官のような顔に見えるが、今は悪戯が成功した少女のように見える。


いや待て!見ていたのがバレているだと?


「な!!分かってたのか!?」

「リョウは知らないのか?私たち女は男の視線には敏感なんだぞ?」

「それは...失礼しました...」


ユリからも言われていたな。気を付けていたはずなんだが、ダメだったようだ。


「む...ユリの事を考えているのか?」

「え...」

「他の女の事を考えているというのも女は分かるんだぞ。それこそユリに聞かなかったのか?」

「はい...しっかり注意されていました...」


なんか、色々申し訳ない。


「ま、瞬時に色んな事を考えるのがリョウだからな。仕方ないか」


微笑む、と言うか、少しだけ困った感じで笑った後、タニアが身体を強張らせる。

どうした?


「あぁ!!すまない!!」


タニアが慌てて身体を離す。

私に身体を密着させていた事に、今頃気が付いたんだろうな。


タニアが見上げてくる構図はかなりの破壊力があるからな。タニアの方から離れてくれて助かった。


「いや、私は大丈夫だ。それよりも、少しは落ち着いたか?」

「そうだな。怖いと感じていたものが無くなったな。あれはなんだったんだろうな」


とりあえず、不安は無くなったか。

状況的に、「了くん要素」とやらが補充されたからだろう。知らんけど。


「なぁ、タニア。お腹空いてないか?約束通り、カレーを作ったんだが」


タニアの好物であるカレーが出来ているんだ。これを食べればもう少し元気になるだろう。


「本当か!?もちろん食べるぞ!!」


この一言で急いで砦に戻る事になった。



電龍の側車を外していたので、タニアは私の後ろに座る事になった。

どうせ、側車を付けていてもタニアは後ろに乗るだろうしな。


ユリに「タニアを連れて砦に戻る」と連絡し、帰路に就く。


「ユリを連れてきたんだな」


私を後ろから掴む腕に力を入れて、タニアが確認する。

どうしても避けて通れない話なので、何気なくユリに連絡することでタニアに知らせたのだが、しっかりと反応されてしまったな。


「あぁ。起きない娘の対処をしてもらっている。あと数日は目が覚めないだろうからな。もう少しこっちに居てもらう事になるな」

「分かった。ユリの部屋も用意しないとダメだな...」

「う~ん...ユリはこっちの世界での適応力はあまりないかもだし、それはユリと相談してからでも良いんじゃないか?」

「そういう事もあるか...分かった。ユリと相談してから決めよう」


そんな会話をしている間に砦に到着。

入口にはリアを始め、ミーム、キャリー、セミア、レミが待っていた。


「お姉様!!ご無事で!!」


タニアが電龍から降りる前にリアが走り寄り、抱き着く。

かなり心配だったんだな。リアにはタニア要素が必要って事なんだろう。


「リア、すまなかったな。心配をかけたが、もう大丈夫だ」

「はい...良かった...お姉様が無事で...」


しっかりと抱き合う姉妹。そろそろ離れてくれないと私が降りれないのですが...まぁ、気のすむまで抱き合っててもらおうか。


「リョウ様。お二人のカレーですが、夜霧の中に用意しております。ユリ様が言うには温める機能が夜霧にあるとの事でしたので...」


キャリーがそっと近づいて、私に報告してくれる。

電子レンジの事だな。流石ユリ。


「分かった。ありがとう。みんなは食べたのかい?」

「はい。十分に...とは言えないですね。特にミーム様が...」


ミームかぁ...砦で一番の欠食児童だからな。


「...そこはまた考えるよ...」

「ともかく、全員ちゃんと食べたのは本当です。とても美味しかったです!是非、私にも教えてくださいね!?」

「あ~...この世界で材料があればだけどな。ちゃんと教えるから安心して。で、ユリは?」

「起きない娘の所に居られます。今日はあの部屋で一晩過ごされるそうですよ」

「そうなんだ。後で部屋に行くよ。ともかく、お腹が空いたんだけど...まだ抱き合ってるな...ほら、タニア、カレーを喰いに夜霧に行くぞ?」

「!?分かった!!リア、続きはカレーを食べてからだ」

「は~い!じゃあ、お部屋で待ってますね!」


抱擁の続きか!?まぁ、別に良いけどさ...。



その後、少し会話をしてタニアと二人で夜霧に入る。

なぜか誰も、リアもついてこなかったので、二人きりだ。


「え~っと、二人分ちゃんとあるな。タニア、大盛で食べるだろ?」

「もちろん!!」


ご飯とカレーをカレー皿に入れ、レンジでチンしてタニアの目の前に置く。

同じように自分の前にもカレーを置く。


「じゃあ、食べようか」

「そうだな。早く食べよう!」

「よし、いただきます」

「いただきます」


いつもは食べながら色々と会話をするんだが、タニアは食べる事に集中しているようで、何の会話もないまま、食事が終わった。

結局、タニアは前回と同じく3回お代わりした。


「リョウ、お前はカレーに何か粉をかけていたが、あれはなんだ?」

「あぁ、あれはカレー粉だ。私は辛口が好みだからな。もっと辛くして食べているんだよ」

「なに?これよりも辛くするのか?」

「私はお子様ではないからな。甘いのはあまり好きではないんだ」

「私もお子様ではないぞ?その辛いカレーを食べさせてくれ」

「え...まあ良いけど...」


と、タニアに私のカレーを一匙食べさせてみる。


「!?!!!」


言葉もなく、水をがぶ飲みしている。

私が普段食べているのは3倍辛のカレーだからな。甘口が好みのタニアには10倍ぐらい辛いはずだ。


「リョウ!!これはなんだ!?辛すぎるぞ!?」

「だから、これが私の普通だ。ちなみに、これの倍辛いものも食べる事があるぞ?まぁ、体調が良い時ぐらいだけどな」

「なんでそんな毒みたいなものを喰っているんだ?死ぬぞ?」

「死なねぇよ!!」


文句たらたらのタニアは、早々にお風呂に入り、ドライヤーで髪を乾かしている。

私もタニアの後に入り、洗濯物を回し、乾燥機をかけておいた。

う~ん...お風呂は砦の中に作りたいな。出来れば、大きなお風呂を作って、兵士も入れるようにしてやりたい。

清潔にする事で、病気になりにくくなるので、最終的には人材確保に繋がるしな。

あと、女性専用のお風呂もだな。


兵士たちの分は、士官用の建物と兵士用の建物に一つずつあれば良いか。管理は建物毎でしてもらえば良い。

問題はお湯だな。


ここは丘の上だから、井戸水を汲み上げているんだったな。

電動で汲み上げて、電気でお湯を沸かす...魔工で出来るかな?タニアに相談してみるか。

魔工で出来るなら、エルセリア内でもある程度普及させる事が出来そうだし、公共風呂なんか良いかも知れない。


以前から考えていたけど、そろそろ実行していこうかな。タニアと相談...あ、今しようか。


なぜかリビングで髪を乾かしているタニアに声をかける。


「タニア、このお風呂だけど、砦の中に作りたいんだが、問題ないか?」

「砦の中に!?それは良いが...男も入る事になれば、私たち女は圧倒的に人数が少ない...お風呂に入れなくならないか?」

「いや、砦の中は女性用にして、兵士の分は士官用の建物と、兵士用の建物にそれぞれ作れば良い。そうする事で間違って男がお風呂に入って来る事はなくなる」

「リョウはどうするんだ?」

「私は夜霧で十分」


その方が安心安全だ。


「...そうか。まぁ、それは良いが、そもそもの問題としてどうやってお風呂を作るんだ?どうやってお湯を出すんだ?それが一番大変なんだが?」

「そこでタニア先生の出番になります。井戸から水をくみ上げる魔工と、お湯を沸かす魔工。これって作れるか?」

「ん~...リョウが一緒に仕組みを考えてくれるなら、出来ると思うぞ?」

「よし!じゃあ、明日から一緒に考えるか」

「そうだな。まだまだ領内の仕事はあるが、余裕がない訳ではない。一緒に考えよう」


明日以降の予定は、明日の朝の会議で決定するようにしよう。

基本的には、水回りがあるので、設置は1階にしなければならないな。


パストングがいないが、副官のエリーズを呼んで確認をするようにしよう。


ま、ともかく後は明日だな。


タニアを伴って、起きない娘の部屋に行く。ユリの様子も確認しなきゃだからな。


『ユリ、大丈夫か?』


部屋に入ると、ユリが少女の寝ているベッドの横に置いてある簡易ベッドに座っていた。

また、カラーもここにいた。

恐らくだが、眠る事のないカラーが夜間は娘を診てくれるという事なのだろう。

何も言わなくても、自分の判断で行動してくれるカラーは本当にありがたい存在だな。


『あらリョウ。タニアちゃんもお久しぶり。元気してた~?』


と、思わず大阪に居た時の感覚で、日本語で話しかけてきた。


『あ~...ユリ、今タニアは翻訳機...』

『おひさ~ユリ。モーマンタイ』

『おいこら!』


どこで覚えた「モーマンタイ」。あ、漫才か?


『なに?』

『タニア、今の時点で大阪の言葉はどこまで分かる?』

「聞くだけなら、なんとなくだが分かるぞ?」

『とんでもないスペックやな...』

「スペックってなんだ?」

「能力の事だ」

「なるほど、すごい能力ってリョウが褒めてくれたって事だな」

「合ってるわよ~」

「そうか。良かった」


二人の会話はいつもの会話だ。安心した。

ユリをこっちに召喚するって話をした時のタニアの様子がとても気になっていたからな。


「ともかく、今夜はこっちで休むのか?」

「うん。カラーさんも一緒に診てくれるって言ってくれているからね。特に問題はないと思うけど、ずっと診てくれるのは有難いわ」

「カラー、ありがとうな」

「いえ。人間は眠らないと壊れてしまいますからね」


...昔、何かあったのかな?ものすごく実感が籠っていた気がするが、聞くのが怖いので止めよう。


「それにしてもカラーさんってすごいのね。覚えるのが早いのね。流石に針の交換は無理だけど、点滴バッグの交換や流量の調整は出来るようになったわ」

「すげ~なカラー...一応私も出来るけど、こんな短時間では覚えられなかったぞ?」

「そうなのですか?ユリの説明がとても分かりやすいので、覚えるのは簡単でした」


スーパーウーマンならぬ、スーパーゴーレムだな。


「ともかく、この娘を頼む。せっかく生き残ったんだ。ちゃんと生活をして欲しいからな」

「そうね。ところでこの娘をどうするつもりなの?」

「今は何も。まずは目が覚めて貰ってからだな」

「ヴァンパイアに攫われたんでしょ?帰れないんじゃない?」

「可能性は非常に高いな」

「追い出すの?」

「いや?どこにも行けないなら、ここで働いてもらおうと思っているぞ」

「はっきり言うけど、絶対にここで働けるようにして」

「え?絶対?」

「この世界の事は詳しく分からないけど、家に戻ったとしても絶対に幸せにはなれないわ。最悪奴隷にされるだけよ」

「そうだな。その可能性はかなり高い」


やはり...そうなんだな。


「分かった。だが、本人の意志が大事だと思うんだ。ともかく目が覚めてからちゃんと話をしようと思う」

「そうね。本人の意志が大事よね。ごめんね、了くん」

「いや、ユリの言う事は最終的には一番良い回答だと思うんだ。だから、そこに向かって進むように話をしよう」

「うん。ありがとう」

「私からもありがとう、ユリ。色々と考えてくれて助かるよ」

「ううん...タニアちゃんも領主になって大変なのよね。私も出来る事は助けるわ」

「あぁ、よろしく頼む」


これが、雨降って地固まるってやつなのかな?


ユリとカラーを部屋に残して、タニアと二人で部屋を出る。

2階から4階に上り、タニアの部屋の前に行く。


「じゃあタニア、また明日」

「あぁ、また明日な」


部屋の前で別れて、自分の部屋に向かう。


「あ、リョウ...」

「ん?なんだ?」


背後からタニアに声を掛けられ、振り返る。


「明日の朝、リョウの部屋に行くから待っててくれ...」

「お...おう...分かったよ。待ってる」


なんだ?改まって言う事ではなかろう。

いつもは勝手に部屋に来るのにな。


ともかく、軽く手を振ってタニアに背を向けて歩き始める。



明日は平和であればいいなぁ~...。

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