■■■ Step031 異世界に戻ったら首都に呼ばれてたそうで...
第4章に入りました。
ここから大きく物語が動いてきます。
いやぁ、自分で書いてて30話を超えてから動くお話はあまり無いですよねぇ~...。
翌朝、久しぶりに5人で朝食を食べた。
なお、朝食を用意したのはユリ、輝、葵の3人だ。
いつものように起きたのだが、私がリビングに入った時は既に3人がキッチンで動いており、タニアはソファーで優雅に紅茶を飲んでいる。
一瞬、タニアがキッチンに立っていない事に疑問を覚えたのだが、それ以前にキッチンに4人も入れないという事実もあるけどね。
「おはよう了くん」
「おはよう、了!」
「おはようございます。お兄様」
「おはようリョウ」
全員から朝の挨拶を受けた。
タニアの日本語での朝の挨拶はもう問題ないようだな。
「おはよう皆。今日は早いな」
と挨拶を返しておいて、タニアの対面のソファーに座る。
3人娘は忙しくキッチンで働いているので、タニアに声をかける。
「タニア。その紅茶は誰が淹れてくれたんや?」
『これは葵が淹れてくれたんだ。なかなか上手に淹れるもんだな。驚いたよ』
「葵は最近紅茶にハマっているらしいからな」
まぁ、まだ中学生だからコーヒーが苦いっていう事でもあるらしい。
「ところで、昨晩のパーティーはどうやったんや?」
『とても有意義だったぞ?特にだな...』
「タニアちゃ~ん?昨日も言ったけど、情報漏洩はアカンでぇ~?」
と、突然すぐそば...というか、すぐ背後から聞こえる。
慌てて振り向くと、ユリが真後ろに居た。い...いつの間に?
『うぉ!?すまん!思わずしゃべってしまう所だった...』
「もししゃべったら...分かっているわよねぇ~?」
『だ...大丈夫だ』
タニアがたじろいでいる。
こういうタニアは見たことが...いや、おばちゃん相手にしている時があったな。
ん?園田家の女性は全員タニアの天敵なのか?
と、埒もない事を考えていたらユリが睨んでいた。
ふん!と鼻息を軽く鳴らし、タニアに向かっては笑顔になる。
「よろしい!じゃあ、もうすぐ出来るからちょっとだけ待っててね~」
と、言いながら手際よく私の前にコーヒーを用意してくれ、颯爽とキッチンに去っていく。
あ~...びっくりした。
今日の朝食の献立はごはんと味噌汁、チキン南蛮とポテトサラダだ。
チキン南蛮がユリ、味噌汁が輝、ポテトサラダが葵だそうだ。
「了...またあっちに行くんやね」
食事をしながら輝が低い声で聞いてきた。
きっと昨夜のパジャマパーティーで情報共有は完了しているはずだ。
当然、タニアはそのパーティーに参加した。
当然、私はそのパーティー不参加だった。
それはさておき。
「あぁ。向こうがちょっとややこしくなったみたいでな」
「いつお帰りになられますか?」
次は葵からのツッコミが入った。
こればっかりは分からない。
少なくとも領主の思惑が分からないと大阪に帰ってこれないだろうな。
「今回はちょっと面倒な事が起こっているみたいやから、一週間ぐらいかな~」
「戦うの?」
輝の追求は止まらないな。
まぁ、私が色んな武器を作っているのを知ってるからな。
「それは本当に分かんないな。でも、正直それは嫌やから、避ける方向で」
「うん。お願いね」
速攻でユリに詰められてしまった。
『みんな、すまないな。リョウを借りる』
タニアがユリ、輝、葵を見ながら頭を下げる。
う~ん。今回は私も絡んでいるので仕方ないし、そもそもタニアに責任はないのだが。
「大丈夫よタニアちゃん。あっちでは了くんをお願いね?」
ユリがタニアにニッコリと笑いかける。
楽しい朝食も終わり、みんなで実験室に先に行く事になった。
着替えは夜霧の中に入れてあるので、今回は普段着のままだ。
「...これが光のゲート...」
「そうや。この光の向こうはタニアの世界だ」
「あ、向こうに誰かおるで?」
「ん?あれはリアだな」
律儀にタニアを迎えに来たんだろう。
せっかくなのでリアに大阪の3人娘を紹介しておこう。
昼には首都に向けて出発の予定だが、時間に追われている訳ではない。
「ちょうど良いからリアを紹介しようか。タニアも良いよな?」
『もちろん』
と、いう訳でみんなでぞろぞろとゲートを通る。
私とタニアは経験済みだが、3人は初体験だ。
まず私が通り、問題ない事を証明する。
続いてタニアが通る。
3人娘では最初に輝が嬉しそうにピョコンとゲートをジャンプして通る。
輝は私の同じ科学者気質だからな。こういう体験出来るのはとても嬉しいのだろう。もうニッコニコだ。
だが、短いスカートで飛ぶのは止めなさいって言ってるだろうに...。
次いで恐る恐るという感じでユリが通って来た。
異世界ゲートという、非日常なものに慣れていないというのもあるだろうが、おそらくホラー系の結果を想像してしまったんじゃないか?
最後に行儀良くスタスタと歩いて葵がゲートを通って来た。
何も不安に思っていないんだろうな。
「リア、おはよう」
「おはよう、リョウ。そちらの女の子は?リョウたちのハーレム?」
最近リアの煽りが激しいな。
まぁ、それだけ仲良くなったんだろう。
「ちげーよ。幼なじみと弟子と友人?だ」
「なんで疑問符が付いてるのよ。それはそうと、折角だから紹介してよ」
「そのつもりで先にこっちに連れて来たんだ。先にリアを紹介するな」
と言って3人娘にリアを紹介し、3人娘をリアに紹介した。
さて、これでお互いを紹介する事が出来たが、3人娘を屋敷に連れて行くのはまだ時期尚早だな。
『悪いが3人は今はこの納屋までや。みんなが異世界で適応するのは問題ないと思うけど、こっちは急に人が入ると混乱するんでな』
私の場合は強引に行動したのと、逆に悪目立ちしたからな。
『うん。分かってるわ。じゃあタニアちゃん。また今度ね?』
『あぁ、またな。輝も葵も、また行くから、その時はよろしく頼む』
『僕もタニアさんが来るの、待ってるよ』
『私も、今度こそ天然と養殖の違いをちゃんと説明させていただきますね』
名残惜しいが、いつまでも納屋に居るわけにもいかず、3人はゲートを通って大阪に戻ってもらった。
こっちの世界はチャットとネット電話はつながるので、何かあればチャットしてもらうように伝えた。
あと、タニアのスマートフォンにも同じアプリを入れているので、3人娘とは連絡が取れるようにしておいた。
せっかく仲良くなったんだからね。
納屋を出て、いつもの応接室に通してもらい、いつもの紅茶を出してもらった。
いつもと違うのは、私とタニアの服装が、大阪の普段着のままという事だ。
おかげで私はともかく、メイドがタニアをちらちらと見ている。
そりゃ気になるだろうな。
「さて、国王陛下からの招聘だが、昨日の今日だから昼には出発したいんだけど、国王陛下からはいつまでに来るようにとか言われてないのか?」
「え_そんなのは無いわよ?」
え?どういう事?急いでないの?
「昨日の夕方に連絡が来て、アタシが連絡を受けたでしょ?」
「そうだな。その後にタニアに連絡が来て、今に至る訳だが」
いまいち話が通じない。
あと、いつもならフォローしてくれるタニアだが黙ってリアに説明を任せている。
とりあえず、黙って話を聞いておこう。
「でね、その連絡をくれた人は伯父様にその事を伝える為に首都に戻るんだけど、それがたぶん今日、おそらく今ぐらいからエルセリアを出るはずなのよね」
「まぁ、確実に伝えるには人が直接伝えるのが一番だからな。それに一日で往復するのは難しいからな。こっちで一晩休まなきゃな」
なるほど。
私たちの世界だと電話で終わりだか、ここはそんなものは無いからな。
「じゃあ、その伝令の人は今日には首都に着いて、そして国王陛下に報告をしてって流れになるんだな」
「いいや、違うぞ?まずはハブという街で一泊、翌朝川を渡ってワツナでまた一泊。で、昼過ぎに首都に到着かな?」
「片道3日かかるって事?...ん?待ってくれ。それじゃ計算が合わないぞ?」
情報が片道3日かかるという事は往復6日かかる訳で、それで言うとまだ国王からの招聘は届いていない事になるぞ?
「コボルドを倒してギルドで報告した翌日からあっちの世界に行ったけど、5日しか経ってないぞ?」
倒した日を入れると6日だが、その日は昼過ぎにトモニアに戻ったから、その日に情報が動く事はないだろうしな。
「それは多分だが、トモニア村から直接連絡が行ったかもな」
「トモニア村から?」
「トモニア村からなら早馬で1日で到着できるからな」
「早馬って...そこまでするか?」
早馬というのは知っているが、そこまでするような案件とは思わないんだよなぁ~。
「場合にもよるし、隊長の判断にもよるな。ボスゴブリンにサイクロプス2匹だったんだからな」
「あ~...一大事と言えば一大事か」
「あと、それをたった4人で倒したんだからな。確実に報告案件だ」
「で、その4人のうち2人は法皇様の娘だったと...」
「あと、奇妙な男だからな」
「そうだよね。で、すぐに呼んでまいれ!ってなって、2日で走破したんじゃない?」
マジか~...。だがしかし、
「それはそれで計算が合わないんだが?」
「まぁ、それほど変な事もないぞ。トモニアから1日、首都で1日協議、使者の移動で3日って所じゃないか?」
あ~確かにそういう事もあるか。
まぁ、正確に把握しようとするのは難しい事もあるか。
ちょっと色々焦っていたようだな。
反省。
「確かにそんな所な気かするな。真相は分からないが」
「そうね。だから、私たちが首都に着くのは明々後日以降で良いんじゃない?」
「なるほどね。でも、その考えは領主側も持っているだろうから、出し抜くならもっと早く出るか、裏を掻くかだな~」
本当は絶対安全な移動方法がある。
一度大阪に戻り、ゲートを首都の近くに展開して移動する方法だ。
だが、この方法は今回は取るつもりはない。
理由は一つ。それをすると、領主の動きが分からなくなるからだ。
どう考えても領主が胡散臭い。
何を考えているかは無理でも、何をしようとしているのかは把握したい。
その為にも少なくともこちらが「動いた」事を知らせないと向こうは動いてくれないと思う。
逆に、動きを見せれば向こうもすぐに動くはずだ。
昨晩、タニアとも話をしたのだが、聞けば領主は武闘派なんだそう。
37年前のエルセリアを併呑した際の戦いも、第一線で戦い勝利に貢献したそうだ。
その情報を得て私が考えたのは、領主が動乱を起こすという可能性。
ジョーチェ法皇国は37年前の戦争以降、小競り合いはあるものの、戦争は無い。
だから、あえて乱を起こそうとしているのではないか?
魔石による魔物を集めを行い、それを導火線としてこの地域に不安を蔓延させ、そこにクラスタンプ軍を呼び込む。
期せず大きな戦闘が発生し、そこから大きな騒乱を起こし、戦争に発展させる。
ありえない事はない話の流れだと思った。
この考察はタニアにさえ話をしていない。
さすがに突飛すぎると思ったからだ。
ただ、千里眼で確認した「砦に兵が終結している」という情報だけはタニアと共有している。
戦乱のない砦の場合は通常200名程度。兵士が詰めていても平時はせいぜい500名ぐらいになるはずだ。
今、砦には予想する数字になるが、700名近くになっている。
「今の話から、簡単に領主の裏をかこうとしたら出来るだけ早く首都に着くのが良いんだけど、そもそもリアは準備できているのか?」
「もちろん。あと言われたとおり、お姉様の旅の準備もしておいたわ」
「ありがとう。助かったよ」
ま、リアは冒険者だから必要なものは分かるだろう。
「よし。じゃあ、移動する道を決めたいんだけど?」
「え?電龍でびゅ~んって行くんじゃないの?」
「リア。途中にチェーベン川があるだろう?」
「だから電龍なら大丈夫なんじゃ?」
無茶を言わないで欲しい。
川の深さは分からないが、普通に電龍が沈むと思うぞ。
「今回は電龍だけじゃないから、びゅ~んとは行かないんだ」
「え?そうなの?」
「後でリアにも見てもらうけど、今回は宿泊施設を引っ張っていく事になる」
「宿泊施設?」
「あっちの世界では『キャンピングカー』って言うんだけど、それを電龍に引っ張ってもらうんだ」
こっちじゃキャンプなんて娯楽にはならんだろうしな。
「とにかく、ちょっと物が多くなったから、どういう道で行けば良いか、冒険者であちこち行っているリアの意見も聞きたい」
「なるほどね。まかせて!」
「で、これがエルセリアから首都セルドイまでの地図なんだけど」
と言って、タブレットを取り出し、先日タニアに聞きながら情報を埋めた地図を表示させてリアに見せる。
「なにこれ!?すごいんですけど!?」
そこまで近づかなくても見えるはずなんだが?
「千里眼の情報を元に、見やすい地図にした。書いてある情報はタニアに教えてもらった奴だから間違っちゃいないはずだ」
「合ってる合ってる!へぇ~...こんな風になってるんだ」
リアは興味津々といった感じで地図を見ている。
「で、見ると川のそばにあるハブっていう町を通るのが一番良いと思っているんだけど、どう思う?」
「え?それで良いんじゃない?」
がばっと顔あげて不思議そうな顔をするリア。
リアにとっては普通の認識なんだろうけど、私には普通じゃない。
この世界では、馬車が通れるような長い橋はほとんど存在していない。長く強固な橋を作るのが難しいのだろう。
そして、ハブの所の川幅は300mを超えているのだ。
「いや、良いとは思うけど、この川幅だと電龍が沈んじゃうからな。船に乗せてもらわなきゃだけど、船ってあるのか?」
「あ~そういう事ね」
「そうだ。この川幅にかかる橋はないみたいだしな」
「そういう事なら、トモニアからもうちょっと山側に馬車も通れる橋もあるわよ」
「少し遠回りになるが、電龍なら問題はないだろう」
確かにあったが、もう一度同じ道を行くのは趣味じゃないんだよな。
「なるほどね。ちなみに、こっちの海の方も港町があるけど、こっちはどうなんだ?」
「そっちはダメだ」
「どうして?」
「領主の息がかかっている町だ」
「あ、却下で良いです」
流石にこのタイミングで領主の町は面倒だ。
「じゃあ、トモニア経由かハブ経由か」
「リョウはどうしたいの?」
と問われ、ちょっと考えてみる。
地図を見ても、ハブを通るのが最適と思える。
「あくまでも個人的な話だけど、新しい場所を見たいからハブ経由で行ってみたいかな」
「じゃあ、それで良いだろう」
「そうね」
2人からは了承を得た。
が、問題はある。
「なるほど。じゃあ、ハブ経由で良いんだけど、川をどうやって渡る事になるんだ?」
「ハブでは渡し舟があって、馬車も渡し舟で渡るようになっている」
そういや、船が何艘か出ていたが、それかもな。
あとで千里眼で確認しておこう。
「じゃあ大丈夫そうだな」
「あと、ハブは交通の要衝だからな。領主の手は伸びていても下手な事は出来ないはずだ」
「どういう意味だ?」
「ハブは国王の直轄地だ」
「なるほど。ますます都合が良いな」
よし。これでルートは決まった。
あとは行くだけだ。
「これが...キャンピングカー...」
夜霧を見たリアがビックリして、それを言ったまま固まった。
まぁ、そうだろうな~...。
タニアもこれを見て固まったもんな。
「普通に馬車を想像したけど、全然違うじゃない!!」
幅2.5m、高さ3.5m、長さ10mの四輪のボックスカー。
ほぼ観光バスサイズだからな。
「ところで、私は簡単に説明してもらったが、リアにも説明しないとパニックを起こしてしまうぞ?」
「あ、そうだな。タニアももう一度聞いた方が良いよな。リア、説明するよ」
と、2人を連れて夜霧に入る。
そこから約1時間。リアにしっかりと説明した。
お約束のトイレには感動して、いきなり使用しようとするし、お風呂に興味を覚え、いきなり脱ごうとする。頼むから私が居るので勘弁して欲しい。
こういうものは使っている内に納得するだろうけど、ちょっと時間がかかりそうだな。
「そうだ。ミームには何て伝えてるんだ?」
「今日から首都に行くって話をしているから大丈夫よ」
そこは相棒だからな。ちゃんと連絡をしているようだ。
「こないだの討伐報酬で潤っているはずだから、あと10日ぐらいはゆっくりするんじゃない?」
「そんなもんなのか?」
「ここんところ、コボルド討伐で忙しかったからね。休むのも冒険者の仕事よ」
なるほどね。
冒険者は体が資本だからな。
おっと。エルセリアを出る前に、いくつか設置しておきたい設備があるんだった。
家主であるタニアの許可を貰い、屋敷にいくつか機器を設置する。
出来るだけ安全を確保する為には、やはり情報が重要だからな。
千里眼だけでは領主の動きは分かりづらいので、出来るだけの布石を打っておこう。
さて、準備も出来たので、2人には夜霧に乗ってもらい、屋敷を出る。
時間は10:27だ。思ったよりも早く準備が出来た。
以前と同じようにパレード状態になりながら門へと向かう。
リアは夜霧に乗り込んでいるので、道案内は頼めない。が、正確なエルセリアの街の地図はあるので、道に迷う事はない。
門の所で門番に申告して町から出る。
前回とは違う門番だが、国王からの招聘って事ですんなり通してもらった。
そこからリアが側車に乗りたいと言い出した。
別に構わないので、側車のシートに座らせ、シートベルトをしてやる。
リアは「これは嫌!」と言ってきたが、安全上必要な事なので、使い方を説明しながら、これをしなければ乗せないと言ったら大人しくなった。
言う事を聞いてくれる素直さは持っているのでありがたい。
で、リアはそれで構わないのだが、タニアが私の後ろに座ったのだ。
「おいおい。ここよりも夜霧の方が楽だぞ?」
「私が居るとダメなのか?」
上目遣いで見上げてくるのは止めようね?
ぶっちゃけ、最初から抵抗しても無駄な気がしてたのだが、今の一言で完全に諦めた。
「いや?そんな事はない...あ、そうだ、話しておきたい事があるんだ」
「話?」
「領主の方で動きがあった」
「なんだと?」
タニアの顔色が変わる。
そして、タニアの一言がリアにも届いたようだ。
リアもびっくりしてこっちを見る。
「砦から馬が出た」
実は、千里眼で砦を監視していたのだが、タニアの屋敷を出たぐらいから動きがあったのだ。
屋敷近くで監視していたであろう人物が、電龍を見た後に砦に向かって走って行ったのだ。
ちなみに、例の女性ではない。
タニアの屋敷に遠隔操作できる望遠カメラをいくつか設置させてもらった。
千里眼で検知した怪しい人物を追跡出来るようにしたのだ。
早速役に立ったのは良いのだが、正直複雑な気分だ。
やはり、ずっと監視されていたようだな。
監視員が砦に到着してしばらくしたら、馬が3騎出てきたのだ。
これは、こちらを追う部隊だと思われる。
「普通ならな。だが、この馬は砦の出てまっすぐ門に向かっている。おそらく、私たちをこっそり尾行するつもりだろう」
「どうするのよ?」
リアが心配そうに見てくる。
追手はさっき砦を出たところなので、エルセリアの門まではまだまだかかる。
あと10分って所だろうな。
「安心しろ。あっちはお馬さんで、こっちは電龍だ」
「でも、首都に行くのはあっちも分かっているのよ?」
首都からの使者が来た時、領主の使者と鉢合わせになったんだよな。
「要は相手よりも早く首都に着けばいいんだ」
「え?って事は?」
「速度を上げる。だから、夜霧に戻って...」
「分かった」
タニアが私の腰に腕を回して来た。
「あの~タニアさん?一番安全なのは夜霧の中なんですが?」
「なぜだ?急がなければならないのだろう?それにもう一度あの速さを体験したいと思っていたのだ」
「アタシも!!あのびゅ~んっての体験したかったのよ!」
「だそうだ。ほら、早くしないか」
最後の切り札も虚しく、2人は電龍での移動を選択した。
まぁ、しゃ~ないか。
「よし。じゃあ、ハブまで一気に行くぞ!」
「承知」
「は~い」
ちらりとディスプレイを見ると、追手はまだエルセリアを出ていない。
高速移動する際の土埃が舞い上がるだろうけど、どうせハブに向かう事は理解されていると思った方が良い。
ならば、早く移動するだけだ。
私はアクセルを回し、電龍を発進させる。
後ろに大きな荷物の夜霧を牽いているので、急発進急加速急停車は厳禁なのだ。
そして、徐々にスピードを上げていく。
モーターは静かに唸りを上げ、タイヤが高速回転を始める。
それに伴い、スピードが上がる。
電龍と夜霧には高速安定制御システムがあり、速度に合わせて自動的に起動する。
サスペンションを利かせ、車体を安定させるのだ。
側車ではリアが「ひゃあ~~~~~!!」と悲鳴を上げている。
うん。笑顔笑顔。いわゆる「張り付いた笑顔」だけど、大丈夫って言ってたから別に良いだろう。
タニアは...いや、意識するとマズいので意識しないようにしよう。
ただ、こっちは悲鳴を上げていない。代わりに腕の力がすごいな~...。
ともかく、2人の体力を考えて、15分ぐらいしたらスピードを緩めよう。
もっとも、その時にはハブの近くまで行ってるだろうけどな~...。
今回は景色を楽しむ余裕はなさそうだな。




