第10話 プロトス村の戦い ②
お待たせしました。
俺、匠、綾華、そして名前も知らないおじさんの4人は悲鳴の聞こえた方に急いで向かっていた。
目的地に近付くにつれて生き物が焦げたような匂いが鼻をつく。
「酷い匂い……。鼻がもげそう……。」
「ああ、おそらく村か集落のようなものが襲われているか、何かしらの戦いが起きているのは間違いない。」
「別に、あなたには話していないわ。」
「っ!てめえなぁ……。」
(どちらにしろ無関係な俺達がどちら側につくのか、しっかりと見極めないといけない。)
「紫っ!そろそろ着くわ!」
「よし、どっちにつくのかは俺が指示する。綾華は俺と来てくれ。匠はそこのおじさんと退路の確保。」
「「了解!」」
「行くぞっ!」
「え?君達、本当に行くの?ちょっと待って!」
(……相手を殺さなければいけない時、俺に人が殺せるのか……。)
結論を出せないまま、俺は村の入り口で、1人の女性を5人がかりで押さえ込み、衣服を破き、今にも襲いかかろうとしている騎士風の男達に向かっていった。
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ー思えば、今日は初めから何かがおかしかった……。
私の名前は中村徹。
さっきまでは普通のサラリーマンだったはずだ。
いや一般人とは一つだけ異なるところがあった。
それは、勤めている会社が完全なブラック企業であるということだ。
今日は珍しく仕事が早く終わったので、新しい仕事を言われる前に会社を出て帰路についていたのだが、ふと、昔よく遊んだ森が目に留まった。
そして私は、久しぶりに様子を見ようと森の中へと入ったのだ。
そんな時だった。
彼らに出会ったのは……。
いきなり、3人の子ども達が飛び出して来たのだ。
彼らにぶつかる直前。
3人の内2人は高校生……。
あと、1人は中学生ぐらいの妹なのかな……と私は呑気にそんなことを考えながら意識を失った。
そして意識が戻ると、目の前でその3人が悲鳴が聞こえるから、そこに向かうと話していた。
私も、彼らについて行くことになったのだが……。
(……速すぎるっ!)
とにかく、この3人は走るのが速かった。
同じ人間とは思えない程……。
彼らが今から戦うことになるであろう相手から隠れるために止まってくれたおかげで、ようやく私も彼らに追いついた。
どうやら、私は匠と呼ばれた高校生ぐらいの男の子と一緒にここに残り、退路を確保していたらいいらしい。
というか、さっきから思っていたんだが……。
「君達は妹に判断を任せるのか?」
「は?何言ってんだ、おっさん。」
「いや、だから。うんっ!?ちょっと待て!あの娘、敵に突っ込んでいったぞ!?」
先程まで、私達の前で隠れていた彼女が今、当に襲われようとしている女性を助けようと飛び出していった。
「落ち着けって、おっさん。あんた、勘違いしてるよ。」
「勘違いだって?」
「ああ。」
そんなことを言っている間に、彼女が女性のもとへとたどり着き、走って来た彼女に気付いた周りの騎士達と対峙する。
そして、5人の内の1人の剣が彼女へと振り落とされ……。
(……うん?)
ない。というか、斬りかかったはずの騎士の首がふっ飛んだ。
「まず一つ、紫は女じゃない。髪が長いのと、女みたいな顔で、よく間違われるけどな。」
「え、そうなの?」
「あと、あいつは妹じゃない。同い年だよ。」
と、彼が言ったのと同時に何語か分からない言葉を叫びながら、他の騎士、3人が彼?に襲いかかる。
が、また襲いかかったはずの騎士達の首がふっ飛ぶ。
「最後に、片腕っていうハンデなんて関係無しに……。」
「え?」
そして、最後の1人も剣を抜く事すら出来ず、首がふっ飛ぶ。
「ー紫は強い。誰よりも、強いよ。」
当に、彼の言葉通りなんだろう。
生身の人間が完全武装の騎士5人をあっという間に斬り殺したのだから。
まあ、私には速過ぎて見えなかったのだが……。
そのまま、女性を助けた後、彼らはどんどん村の奥へと向かっていった。
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