↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能力者の用心棒 少女を王にする  作者: 酒吞ピース


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/11

#11 工業都市ドルマー

 工業都市ドルマー。


 自律型アーミーギアの生産量は、大陸でもトップクラスだ。


 訪れるのは十数年ぶりになる。


 あの頃よりも、随分と街が大きくなっているようだ。


「ここに、テトラ=パトラさんがいるんですね」


 ユウナは胸元に手を入れ、ペンダントを握りしめた。


「……えっ?」


 小さく声を漏らす。


「どうかしたか?」


 ユウナはゆっくりと右手を上げ、目の前にそびえる大きな煙突を指さした。


「あそこに、テトラ=パトラさんがいます……」


「……なんで分かるんだ?」


「アンサーさんが、そう言って……」


「……ユウナ。それを握ったとき、何か思わなかったか?」


「えっ! ……えっと、テトラ=パトラさんが見つかりますようにって……」


『ある程度の距離まで近づけば、連絡します! どうぞー!』


 あのとき、アンサーが言っていたのは、こういうことか……


「話が早くて助かるな。行くぞ、ユウナ」


「はっ、はい」


 黒煙を吐き続ける、あのデカい煙突を目指して歩き出す。


 通りの両側には、赤茶けた煉瓦造りの建物が並んでいた。


 壁には太い配管が這い、建物と建物の間を渡っている。継ぎ目から漏れる白い蒸気が、足元まで流れてきた。


 頭上で金属の軋む音がする。


 見上げると、通りを跨ぐ鉄の橋の上を、荷物を積んだ台車がゆっくりと進んでいた。車輪が継ぎ目を越えるたび、ガタン、ガタンと音が落ちてくる。


 昔も騒がしい街だったが、今は上まで使っているのか。


「……すごいですね」


 ユウナが台車の行方を目で追っていた。


「よそ見してると、ぶつかるぞ」


「あっ、すみません」


 ユウナが慌てて前を向く。そのすぐ横を、煤で顔を汚した男たちが通り過ぎていった。


 皆、袖を捲り、重そうな靴を履いている。手に下げた金属製の箱が、歩調に合わせて揺れていた。


 開け放たれた工場の扉から、赤い光が見える。


 中では何かを叩く音が、一定の間隔で響いていた。その奥に、腕のないアーミーギアが何体も並んでいる。


 ユウナの歩みが、わずかに遅くなった。


「出来上がる前のやつだ。動かんよ」


「……分かってます」


 そう言いながらも、扉が見えなくなるまで横目で見ていた。


 石畳には荷車の轍が黒く残り、道の端には鉄屑や折れた歯車が積まれている。


 油と煤の臭い。


 ときおり流れてくる、熱を含んだ空気。


 その中に、肉を焼く匂いが混じっていた。


 通りの角に、小さな屋台が出ている。鉄板の上で焼かれた肉を、親父が手早くパンに挟んでいた。


 ……腹が減ったな。


 煙突を見る。


 屋台を見る。


「ナツカゲさん?」


「……いや。行くぞ」


 煙突は、まだ何本もの屋根の向こうにそびえていた。


 近くで見れば、さぞデカいんだろうな。


 俺たちは行き交う荷車を避けながら、通りの奥へと進んだ。


「私がここにいること、テトラ=パトラさんはもう知っているのでしょうか?」


 ユウナが不安そうな顔で俺を見る。


「アンサーが各ペンダントにいるとするなら、その可能性は高いな……」


「そうですよね……」


 ユウナは祈るように、胸の前で両手を握り合わせた。


「しかし、テトラ=パトラがペンダントに聞いていないなら、こちらから接触できる。交渉の余地はあるはずだ」


「……どういうことですか?」


「メレー曰く、好戦的な性格ではないらしいからな。継承戦のことが頭になきゃ、他の王子についてペンダントに聞くこともないだろ」


「なるほど」


 ユウナの顔が少し明るくなる。


 全部、俺の憶測だ。


 この街に来た時点で、テトラ=パトラにバレているかもしれない。


 それに、秋津に入ってきたアーミーギア。


 あれは恐らく、テトラ=パトラが遣わしたものだろう。


 装備からして、ユウナを捕らえるだけのつもりだったと思うが……


 俺は左腰に差した刀の柄を、強く握った。


 大きな煙突のそびえる工場の前に着いた。


 大扉へと続く一本道。その両側には、アーミーギアが整列していた。


「ユウナ……俺から離れるな」


「えっ?」


「テトラ=パトラには、もうバレているようだ」


 アーミーギアが一斉に拍手を始めた。


 金属同士がぶつかる音が、道の両側から響く。


 ユウナが俺の背に隠れた。


「随分と舐めた真似をしてくれるな」


 俺は煙草をくわえ、火をつけた。


 煙を吐き、背後のユウナに声をかける。


「俺がいる。安心しろ」


「はい。心配なんてしてません」


「上出来だ」


 俺たちは鳴り続ける拍手の中、工場の大扉へと歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。