第3話 アリア・セレイン
少女は、夢を見る。
森の奥。
空は曇り、風は冷たい。
足はもつれ、涙で視界は滲んでいる。
泣いている少女の前に、ひとりの少年が立っていた。
差し伸べられる手。
「お前大丈夫か?」
優しい声だった。
不器用で、少しだけぶっきらぼうで、それでも確かに温かい声。
少女は涙を拭う。
「うん… ありがとう」
その瞬間、世界が少しだけ明るくなった。
――そこで、目が覚める。
朝の光が、窓から差し込んでいた。
「……久しぶりにこの夢見たな」
少女はゆっくりと起き上がり、目元を指でなぞる。
ほんの少しだけ、涙の跡が残っている。
「フフ。一番嫌な夢なんだけど……」
小さく笑う。
「一番好きな夢でもあるんだよね。あの人と会った時の夢だから」
天井を見上げる。
「……十年か」
時間は残酷だ。
それでも、思い出は色褪せない。
「今ごろ何しているのかな? そもそも私のこと覚えているのかな……」
胸の奥が、少しだけきゅっと締まる。
「……会いたいな……ディーン」
名を、静かに呼ぶ。
けれどすぐに、頬を両手で叩いた。
「いけないいけない。暗い顔なんかしてちゃダメ!!」
ぱん、と音が鳴る。
「今日も一日、頑張って~行こう!」
勢いよく立ち上がる。
少女の名は、アリア・セレイン。
アリアの一日が始まる。
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町の名は【アントス】。
人口およそ千人。
街道沿いに広がる、穏やかな町だ。
石畳はない。
土の道が続き、木造建築が並び、屋根からは朝の煙が立ちのぼる。
中央には小さな広場。
その周囲に商店、診療所、鍛冶屋、食料店が並ぶ。
端には冒険者ギルド。
さらに少し離れた場所に自警団の詰所。
そして町の心臓部――教会。
「おはよう、アリアちゃん!」
「今日も元気だねぇ」
通りを歩けば、声が飛ぶ。
「おはようございます!」
アリアは、ひとりひとりに笑顔で応える。
八百屋の主人が野菜を渡してくる。
「昨日の残りだけどな。持っていきな」
「ありがとうございます!」
子どもが駆け寄ってくる。
「アリアお姉ちゃん!」
「転ばないように気をつけてね?」
彼女がこれほど愛されている理由は単純だ。
困っている人を見れば、放っておけない。
小さな怪我も、大きな悩みも、
アリアは必ず耳を傾ける。
誰よりも早く駆けつけ、
誰よりも最後まで残る。
だから、町は彼女を愛している。
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診療所の扉を開ける。
「アリアさん、ちょうどよかった」
医師が、困った顔で言った。
「薬草の在庫がもう尽きそうなんだ……なんとかならないかねぇ?」
棚を見る。
空き瓶が目立つ。
「……ギルドに交渉しに行ってきますね」
アリアはすぐに動いた。
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冒険者ギルド。
昼前の時間、酒の匂いと革の匂いが混ざる。
「すいません……薬草採取は報酬額が低くて誰もやろうとしてくれないんですよ」
ギルド職員は申し訳なさそうに頭を下げる。
「そんなぁ……」
アリアは肩を落とす。
「わかりました。ありがとうございます」
責めることはしない。
ギルドにも事情がある。
それでも、診療所の棚が脳裏をよぎる。
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教会に戻る。
部屋に入り、棚を開ける。
弾丸の確認。
薬袋の準備。
腰に、二丁の銃を装着する。
そのとき。
「こんな時間にどこに行くんだい?」
振り返ると、神父が立っていた。
「……森の方に薬草を取りに行ってきます」
「なんだって! 危険すぎる。そういうのはギルドにお願いしなさい」
「ダメなんです。ギルドでは薬草採取を受けてくれる方がいませんでした」
「だからってアリアが行くことないじゃないか」
神父の声は、震えている。
「……私じゃなくてもいいは、私が行かない理由にはなりません」
アリアは、微笑んだ。
「大丈夫です。すぐ戻ってきますから」
その笑顔は、決意の証。
神父は、長く息を吐いた。
「……無理はするな」
「はい」
扉が開く。
森へ続く道が、静かに広がっていた。
アリアは一歩を踏み出す。
物語は、再び森へ向かう。
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皆さん申仁でございます。やっとヒロインが登場でございます。もしかしてそろそろ飽きてきた?そんなことを言われないように頑張りますので皆さん見捨てないでください。お願いします!ではまた今度。次回は5月24日投稿です




