230話 魔神教団本拠地
俺たちはイオーに黙ってついて行った。しばらく歩いていると林を抜けて開けた平原を歩いた。月明かりが綺麗で歩いていて心地良かった。今のうちにルナにテレパシーをしようと思ったが、グロウみたいに魔力感知に長けた人物がいた場合、もしかしたらテレパシーがバレてしまうかも知れないと思いやめておいた。歩いていると視線の先に馬車が見えてきた。あれで移動するんだなと思っていると、イオーが微笑みながら言った。
「馬車で移動するから眠たかった寝てていいからね」
「はい」
優しい人物を演じているのかイオーの微笑みは少し不気味だった。俺はその違和感に気づいていないように返事をした。このイオーがリベル宛に手紙を送ったの可能性は十分にあるが、あの火魔法は誰がやったのか分からない。俺たちのように勧誘された人なのか獣人などの魔族かも知れない。もしかしたら、各国に勧誘役の人物がいてリベルに手紙を送ってきた人物とは違うのかも知れない。魔神教団の規模感や思想は分からないが、かなりの手練れがいるのは間違いない。下手に逃げ出したりしたら反感を買う可能性だってある。しばらくは大人しくしておくのが吉だろう。
「さ、乗って」
考え事をしていたらいつの間にか馬車までついており俺とヒューは有無を言わずに馬車に乗った。御者が二人、馬が二頭、馬車の後ろに護衛と思われる人物が一人いた。俺たちが乗り込むとイオーも乗り込んだ。俺はイオーが乗ってくることに不快感を覚えたが、グッと堪えて何も言わずに耐えた。イオーが乗り込み御者に合図を送ると馬車が動き始めた。俺たちは進行方向に向いて座っておりその対面にイオーがいる。初対面の人がこの距離感でいることは珍しく俺は馬車の窓から外を眺めていた。馬車が動き始めてしばらく経った頃、イオーが語り始めた。
「二人に僕たちの組織がどんなものなのか教えてあげるよ」
俺たちは情報を得られるチャンスだと思い興味を示した。意外にもイオーは俺たちの反応に驚いていた。他に勧誘した人たちはこのような反応ではなかったのだろう。俺たちは対応を間違えたかと思ったが、イオーは嬉しそうにしており何とかセーフだった。
「それじゃあ話して行くね。まず、僕たちの組織について知ってもらおうか。僕たちの組織は魔神教団って言って、その名の通り魔神を信仰している組織なんだ。と言っても、組織の大半は信仰してなくて上層部が魔神を信仰してるんだ。その上層部っていうのは魔神教団を作った初期メンバーなんだ。だから、みんな結構なお年を召してるんだ。でも、噂によると教団の中でその人らに一対一で敵う人はいないんだって。凄いよね」
やはり魔神教団の目的は魔神を復活させることだった。でも、組織の大半が魔神を信仰していないとなると、大半のメンバーが勧誘された人物である可能性もある。もしくは、教団の別の目的に共感した人かも知れない。
「話を戻して、教団の上層部が何で魔神を信仰しているかっていうと、上層部は全員が魔人で魔神をこの世に復活させたいって思ってるらしいんだ。そして、魔神が復活した暁には人間に魔人たちが受けた屈辱をそのまま返してやるって言ってたな。具体的に何がしたいかとかあんまり分からないんだけど、僕たちが聞いた話をザックリ纏めると、魔神復活させてこの世界を教団の物にしてやるって感じかな? だからそういう野望を持っている人が結構多いね」
イオーの話で引っかかるところがあったので聞いてみた。
「ちなみに私たちみたいに勧誘された人以外で魔神教団に入った人はいるんですか? イオーさんの言い方だとそういう野望を持った人が入ってきてるみたいに感じ取れますけど」
俺がそう聞くとイオーは答えた。
「結構な人数入ってるよ。まぁ最近はめっきり減ったけどね」
俺はさらに質問をした。
「ちなみにどれくらい前から活動されてるんですか?」
「えーどのぐらいだろ……僕が入ってからもう十年は経ってるからねー……具体的な年数は分からないけど、上層部が結構ご高齢だから三十年ぐらいじゃないかな」
「ここ数年は全然なんですか?」
「そうなんだよー。結構知名度が上がってきて、各国でマークされ始めちゃったから、今はこうやって勧誘しかできないって感じなんだ」
かなりの情報を聞き出せたので俺は質問をやめた。イオーも話すことがなくなったのか黙った。しばらく馬車に揺られていると馬車が止まった。すると、イオーが馬車から降りて俺たちも降りるように促した。イオーは馬車から降りる際にエスコートしてくれて育ちの良さが見えた。俺たちが馬車から降りると、そこにはかなり立派な防壁が建てられていた。どこかの国なのかなと勘違いするほど見事な防壁に俺は質問せざるをえなかった。
「ここって何て言う国なんですか?」
俺の質問にイオーはふふっと笑いながら答えた。
「ここは国じゃなくて、魔神教団の本拠地だよ」
俺はその言葉に絶句した。普通の国と見紛うほどの防壁を持っているにも関わらず、他国には一切バレていない。このことから学園長レベルの魔法使いが風魔法でこの辺りをただの平原と勘違いするように魔法を施しているのだろう。エクサフォン国にいた魔法使いがテレポートを使ったことから、その人が認識阻害の風魔法を施しているに違いないと確信した。
「さ、行くよ」
そう言われ俺たちは魔神教団本拠地に入った。中は普通の街のようになっており、まだ何人かの人はいた。もう深夜だというのにこの人たちは何をしてるんだろうと疑問に思った。俺たちは街を進んで行くと、目の前に大きな屋敷が見えてきた。魔神教団幹部って感じの奴がいるんだろうなと思って、その屋敷に行こうとした時イオーは屋敷の手前で曲がり屋敷には行かなかった。期待外れな行動に少し残念に思ったが、またいつか必ず会えるだろうと思いイオーについて行った。
「着いたよ。ここが君たちの家だ」
そう言われてその家を見ると、そこはアパートのようになっていた。二階建てで、たくさんの部屋がありまぁ普通といった感じだった。俺たちはイオーに部屋まで案内された。部屋の中は普通に生活できる物が揃っており本当に普通なんだなと思った。魔神教団だからもっと粗雑な所に住まわされるのではないかと思っていたのでラッキーだと思った。俺たちが部屋を見ているとイオーが言った。
「明日の午後から君たちにやってもらうことがあるからそれまでに準備しててね。迎えに来るからここで待っててね。それじゃあおやすみ」
俺はイオーが行く前に最後の質問をした。
「ちょ、ちょっと待ってください。やってもらう事ってなんですか?」
「主に君たちが教団でやることの確認と今後の準備だね。と言っても、君たちはまだまだ弱いから当分は訓練だろうけどね。後のことは心配しなくても大丈夫だよ。それじゃあおやすみ」
ひとまず安心していいのかな思い今日は眠ることにした。ヒューは先に寝ており流石ヒュドラだと感心した。
次回もお楽しみに




