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場所は変わらぬも世界が変わり、天神和輝のいる場所は灰と白の境界ぼやけた廃墟の焦土。
「で、時間稼ぎも失敗したわけだけど。そろそろ死ぬかこの世界壊すかしてくれない?」
「黙れよ、どっちも同じ意味だろが」
「はー! 分っかんねぇかなぁっ!? 綺麗な見せ場与えてやるって心優しい気遣いが! だからお前空気読めないって言われるんだよ!!」
「はっ! 言葉調べてモノ言えよ! あぁお前は生まれ直した方が早いかもな!!」
「遺言は済んだか!? 精々泣き叫んで……」
互いが互いを煽る中、唐突に気付いたと顔でいう和輝は言葉止め、眼前の少女に感情のない視線を突き刺した。
そんな和輝の様子に眉潜め、口を開きかけた怪異あれど甲斐はなく。
あぁ、そうか
納得言う和輝に時計嵌め込まれた目を輝かせ、警戒隠すことなく口を開いた瞬間だった。
これ、夢か
刀を虚空に放りながら呟く和輝は虚空に腕伸ばし、立方体に楕円体が溶接された物体を取り出し体上げ。
ちょま……
手を伸ばし詰め寄る者を捨て置き大きく振りかぶり、全力で物体を投げつける。
「「え"?」」
様々な方面から呆然とした声が響くと同時、眩い光が世界を包む。
僅かな時置き硝子が砕ける音を連れ、世界は漆黒へと染まり。
幕が消えたと語らる様で、世界は惨劇が起こる前の学校へと姿を変える。
「あ……れ……?」
「学……校……?」
「私、確か死んだはずじゃ……」
「俺も、確かそうだったような……」
瞳に理性の灯火映す桜丘の制服を纏う者たち起き上がり、自身の体を触りながら呆然と声を吐き。
「おいお漏らし女、臭うから近づくな」
「はぁっ……!? 黙れよ! バーカバーカ! あと……バーカ!!」
「黙れ語彙貧困者」
「うぐぐ……」
そんな教室の空気を壊すかの如く、和輝と金髪の魔法少女は騒いでいて。
お家帰るぅー!!
叫ぶ勢いの声を残す者が転移して、一瞬の静寂戻る時だった。
「「あ……あぁ……あぁぁああぁぁ………!!!」」
教室にいる桜丘の生徒たちが、逃げること忘れ恐怖に染まる掠れた声を微かに挙げる。
敵はいなさそうだけど……
疑問の表情浮かべた和輝は手を伸ばすや響く今際の声に瞳孔開き、額に血管を浮かべ声すら発する能力消えた生徒たちを威嚇する。
「俺が何をしたのか言って……」
「こいつら思いっきり虐殺してたじゃん」
銃を片手に凄む和輝を見る視線は逃れぬ死を見るそれと、隣にいた女子生徒は疲労に満ちた声を投げ。
ねぇ。どこから夢でどこから現実なのか、分かってる?
そんな声が響くと同時、世界は再び闇へと染まる。
―――お前はこっちだ!!
怒りに満ちた声が響くを景気とし、和輝の体は時と共に色が消え。
「おいビッチ!!」
「あ"?」
額に血管を浮かべ拳を握る女子生徒へと、虚空から取り出す紙を投げつけた。
それを大事に持ってろ!!
それを最後に和輝の体は完全に消失し、安堵の空気流れど行動移す間もなきままに。
「ニガサナイ」
教室の中央に眼球失い腸を引き摺る白髪の少年が現れて、怯え戻り動けぬ生徒の一人へ手を伸ばす。
ひっ……!?
怯える生徒に対する少年に浮かぶは無邪気な笑みで、残虐に歪む顔は一周回って純粋だったと語らる他所で。
た、確か銃が……
離れた位置で屈む茶髪の女子生徒は手にした紙束を鞄に仕舞い、震えた手で銃を取り出し弾を打ち。
「何で……!?」
打ち出された銃弾は対象物をすり抜け壁を抜き、響く破裂音なぞ誰の気にも留まらず虚へ消える。
ナニヲシテイルノ?
驚愕に染まる女子生徒へと白髪の少年の眼球なき目が向いて、顔が触れる位置に現れ平坦な声を響かせる。
「ヒッ!?」
「ネェ、コタエテヨ」
「ネェッ!!」
恐怖で目を見開く生徒に苛立ち交じる声刺さり、憤怒の声と共に伸ばさる手が首を締め。
嘔吐く生徒は見開く目が戻るを待たずして、腰へと手を動かし力込め。
……ッ!!??
引き抜く短剣を、少年の首へと突き刺した。
短剣が食い込むと同時に締まる首より手が離れ、刺される首へと移動して。
アァァァアアァァァァッッッ!!!
女子生徒が壁に打ち付けられる時重ね、怒りに満ちた声が大気を震わせ窓を割る。
「ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ……!!!!」
唐突に闇夜に響き渡る雷雨に合わせるかの如く、声を震わす少年の体は透けてゆき。
対する者は苦悶の呻き吐き出しながら首元に手を当て天井付近まで浮かび、大きく口を開けて涙を流す。
声すら挙げることすら能わず藻掻く生徒が、次第に動きを止めた頃だった。
よくやった
後は私達に任せなさい♪
荘厳な声と人を喰ったような声が響いた瞬間に、轟音闊歩し闇夜の世界が崩れ去る。
「よくも手こずらせてくれたではないか! さぁ絶望したければ抗うがよい!!」
「泣き叫びながら魔界にでも落ちてくれると、すっごく嬉しいのですよ♪」
光を得て音を失う世界の中で、桜丘高校の教室の一画で。
淡く光る鎖に縛られた少年は、向けらる声に何を言わず辺り見て。
〈魔王リーングランデ・イラストリアス・リリストレーネが命じる!〉
〈魔王選定侯が一柱、ベルフェゴールが命じる!〉
〈〈この者に相応しき地獄を与えよ!!〉〉
重なる荘厳で無慈悲で残酷な声に、初めてその存在を認知したかの如く目を見開き息を呑む。
口を開けど何をするも叶わぬままに、漆黒に染まる床より現る嗤う炎に飲み込まれ。
炎と共に、この世界から消え去った。
「「うちの主を、よろしくね」」
誰もの時が止まる中、茶髪の女子生徒を二つの声が優しく包み虚へと消え。
え……? え……?
対する者は、自身の体と声がした位置とを何度も何度も見比べて。
どういうこと……?
静まりに怯える者たちが声に成らぬ息を漏らす中、呆然とした声を響かせた。
金髪と紫色の髪が見えたような……?
――――――――――――――――――――――――
場所は変わり桜丘高校の教室で、白髪の幽霊が現れたのとは別の教室で。
「ちょっと話を聞かせてもらってもいいかしら?」
「「うわ、確かこの人ら……」」
刀を担ぎ冷酷に嗤う望來と月菜が、冷汗流す天使たちを恫喝していた。
うし、ここはスラオシャがやな……
噂に聞いたところだと、みんなで袋にした方が成功率高いと思いますが……?
わ、私は自死命令されそうなんで見学にさせてください……
じゃあ、私らで殴ってラファエルが魂を……
即座に始まる緊急会議だったが急転空転繰り返し、最中に疑問浮かべた魂殺の天使が顔を上げ。
飛鳥の婆様……?
辺りを見回し首傾げ、眼前に迫る望來と月菜に目を向けた。
「知りませんかね?」
「「知るか!!」」
振り下ろした刀を難なく打ち返された者たち目を開き、何事もなかったが様相で佇むラファエルを睨めつける。
対する天使は濃厚で押し潰さんばかりの殺気を放つ人間たちへ疲れたような視線向け、僅かに時置き眉を潜めては黄金に輝く瞳の位置を固定したまま吐き出した。
「呪い……?」
「「分かるの!?」」
「ややこしくて面倒くさい、性格悪すぎる意味不明な呪いとしか言えないものに。縛られてるってのしか分かりませんよ」
瞳孔開き叫ぶ人間から目を離さぬ天使の声音に感情欠片もありはせず、暫し時間が経った後、瞳を戻し視線下げ。
あなた方、どれだけ恨みを……
ふと後ろを振り向くや、納得したと頷いた。
「あぁ、なるほど」
「「何を納得した!?」」
生者の別を問わず響く声に何も答えずラファエルは、人間へと向き直って荘厳で感情無き声投げつける。
「あなた達……歪んだ世界、見せられてますよ」
「「は……?」」
「中途半端な感情反転の魔法と、何か性格が異常に捻くれる……」
「―――あ、これ相当前からのやつだ」
途中で言葉を止めたラファエルが望來と月菜の顔を見直し言葉吐き出すその瞬間、鋭利な刃が煌めき胴体と分かれた首が舞う。
「からかうのはいい加減にしてくれない?」
「あんまり舐めてたら、殺すよ♪」
「殺してから言わないでもらえます?」
残酷な笑みを浮かべる人間たちは落ちる首へ冷徹な声を投げ浴びせ、背後に現る死人見ずに息を吐く。
で……その中途半端な感情反転魔法っての、本当にかかってるの?
美味しい物は美味しいと感じるし、嫌な物は変わらず嫌なんだけど
暫し時置き振り向いた、刀収める二人は何事もなかったが様子で声を遣り。
「えぇ、しっかり中途半端にかかってますよ?」
「じゃあ、実感ないのは何で? 今まで生活してきておかしいって感じたことないけど?」
首傾ぐラファエルへと向ける、尚も揺れる瞳が願望混じりに願う他所。
いや、だからそれは世界と一緒にあなた方の思考回路も歪められてるからでしてね……
食い下がる二人へ諭すが口調の声が鳴り、静寂置いてのことだった。
「え? 和輝の四肢切り落として監禁して世話をして、一生私達の側に居てほしいって思うのも普通でしょ?」
「「普通なわけあるか!!」」
「は!? 普通に決まってんじゃん!!」
「そうそう! これを愛って言うんでしょう!!」
「少なくとも天界の管轄するところではない!!」
「はぁ? 自分たちが気に食わないことは全部否定するってこと!?」
「気に食わんも何も、そんなもの私に言わせれば愛ではないわ!!」
悲痛な叫び声重ねたを機に割って入るミカエルの、響く威勢の良い啖呵に噛み付く二人が口籠る。
さすが愛の守護者、良いこと言いますね〜!
しみじみと漏れる声に開きかけた口閉じる、大天使の挙動止まるは数拍で。
……黙れ
顔を赤らめ腕を振り、経験者曰く岩より堅き拳を煽る桃髪に突き刺した。
頭を抑え蹲るラファエルだが自業自得だと顔で言い、憮然とした表情浮かべながら息を吐き。
「そんなことより、これどうします?」
表情戻して指差す先へと視線向け、瞳の温度下げたときのことだった。
ラファエル、魂殴ったり?
ラファエルの肩に手を置き清々しい笑み浮かべ、慈愛に満ちた声を響かす女神に弾けんばかりの笑み返り。
「あ、はい了解です! 私殺された恨みあるんで!!」
「―――さぁ泣き叫び赦しを請いなさい!」
……もう色々突っ込ませて
残虐に歪んだ口より高らかに響く、粘着質な声に呆然とした声重なった。




