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ラファエルの瞳が爛々と輝く一方で、廃校舎では獰猛な声が反響していた。
「よぉ、籠の中から食い殺される気分はどうだ?」
「「っ!? いつの間に!!??」」
それが対するは薄闇に漂う黒い影で、地を這う天使たちは初めてその存在に気づいたと息を飲み。
間を置くことなく表情引き締め影見据え、立ち上がりながら武器握り。
「認識阻害」
「感情なし」
「干渉阻害の可能性あり」
それぞれが自身を中心とした魔法陣を展開し、鋭く静かに言葉紡いで鈴が鳴る。
鈴の音重ねるごとに微かな光が降り積もり、一際大きな鈴の音ととも光の剣が影を刺す。
「「なるほど。こっちの担当だね」」
「―――そうか。じゃあ、頼んだぞ」
「「え?」」
理解したと自信に満ちた顔上げた瞬間に、瞳に怪しい光灯した和輝が地を蹴って。
呆然とした声が響くを待たず天井を破って姿消し、以降の音は何もなく。
ゑ?
暫しの時置き再び戸惑った声が重なるも、当惑に応える音はどこにもあらず。
「「ぇ?」」
更に時置き現れ揺らめく無数の黒影に、乾いた声を響かせた。
対する和輝は顔を覆う黒い髪を靡かせ真紅に染まる服纏う、唇を三日月形に歪める少女に刀を向けて嘲笑っていた。
「籠の中で、逃げられるとでも思ったのか?」
「よく言うな。鳥籠に入っているのはお前も同じだろうに」
高く震える声を響かす少女は嗤い返して手を伸ばし、影より様々な暗い色で彩らる、人の形をした奇妙な帽子を被る物体が起き上がる。
「お前、人間か?」
「人間じゃなきゃ、何だって言うつもりだ?」
魔女の災禍……?
ほとんど唇を動かすことなく声を紡ぐ和輝は息を吐き、刀を高く掲げて振り下ろし。
三重に現る小銃に火を吹かせて何をさせる隙も与えずに、人形を一掃しては少女の体を吹き飛ばし。
「はっ! 自認人間の悪魔じゃないか!!」
そんなことも分からないのか。
嘲る声を響かせながら同じ場所に現る者の体に穴を開け、平然と佇む怪異の方へと視線投げ。
心外だな。俺ほど心優しい者なんてほとんどいないと思っているが?
怪異が浮かぶ空間の真下を虚空に変えて、虚空より飛び出る鎖が呪塊を縛り引き摺り込もうとするを見ながら平坦な声を響かせる。
「あぁ心優しいな。こんなか弱い子供を平気で虐待してくるんだもんな!!」
そんな和輝に叫び声を響かす少女は踵打ち、返答とばかりに和輝の立つ床を漆黒の闇へ変え。
はぁっ!!??
戸惑い見せることなく平然と空中に立ってのけるその様に、ふざけるなと怒気孕む声が吸い込まれ。
どこまで舐め腐って……
忌々しげな声が響いたその瞬間、刀薙いでは覆う前髪切り落ちる。
あぁ、なるほど
露出した瞳の奥では赤く光る時計の針動き、針の動きと共に光の鈍さ増し。
「コトリバコの破壊でお前を殺せないのなら、それが完全に黒くなるまで殺せばいいのか」
さも容易いかのように、拍子抜けとでも言いたげに紡がる声に、目が驚愕に染まっては親の敵を見るより昏く憎しみに満ちた感情顕わして。
同じことは、何度も何度も言われたよ
先程までの甲高い声とは打って変わり、低く老練な声が響くと同時に。
少女の体は、弾け飛んだ。
―――――――――――――――――――――――――――
同時期に廃校舎の外にある、寂れた不気味な森の中では悲痛な叫びが連鎖する。
「「アアァァァァァッッッッ!!!」」
「死なぬなら、死ぬまで殺してやるのがこっちの仕事なんでねぇ!!」
目に残酷な光を灯し鈍く輝かす、底冷えすると評されし冷酷な笑みを浮かべたラファエルが剣振り荒々しい声で踏み躙る。
「ラファエルがあの反応するって、相当やよな」
「はい。関わらないのが賢明かと」
「あのラファエルは、冗談言っても魂ぶった斬って来るからな……」
「……ウリエルさん、何をしたんですか?」
魂殺の天使より離れた位置に固まる天界勢は息潜め、蒼い顔に恐怖浮かべながら手を振って。
……いくらでも湧いてきよるな、邪魔くさい
影より起きる人形の物体を塵へと還し、疲労に満ちた声吐き気配消す。
そんな者たち気にした様子も見せることなくラファエルは、前方に相対する少女ただ1人だけを視界に収めて剣を振り。
鳥籠で囲んだと思ったはずが、逆に囲まれた気分はどうですかぁっ!?
嘲る声を響かせながら、苦悶に満ちた呻き声を挙げる少女に剣を振り上げてはまた落とす。
「散々拗らせてきたみたいだけどなぁ!! 鳥籠の中から見上げてたのは、私たちじゃなくてあんたなんだよ!!」
嗤い嘲笑う声が反復重ねるごとに強まれど、ただただ苦悶の呻きを吐き出す少女に害意が疑問で弛むときだった。
―――止めい。無駄じゃ
徐ろに響く声へ胡乱な視線向け、他の天使たちも顔を向け。
「霞を切ろうても何も変わりゃせん。のう、虚ろやい」
「「婆様!?」」
響く声の主を見るや轟く叫び声だが当の者、飛鳥姫巫女命は微かに頬を引き攣らせて息を吐き。
〈砲弾で霞を祓えるか? 1つの街や国を覆うほどの、巨大な霞を〉
虚空から取り出した扇を広げ少女へ向けて、蔑むような、憐れむような視線を突き刺し平坦な声で言紡ぐ。
〈霞を祓うなら風を使え頭を使え 主ら幾年無駄に年を重ねておるか〉
凍てつく波動をその扇に纏わせ振るい、氷獄の呪いを少女ただ一点へと集約させては扇を大きく振り上げて。
〈凍れ 動くな〉
腕を振り下ろすと同時、喋ることも動くことも能わぬ少女の存在を凍らせる。
対して呪いを纏う者、唯一見ることを許された直線上に佇むスラオシャを睨みつけ。
〈呪ってやる……!! お前の家族の末代まで呪ってやる……!! 光を奪って死霊に国襲わせるとか楽しいだろうな……!!〉
怨嗟の呻きが空気を震わせた瞬間に、弾け飛んで蠢く氷塊霧散する。
「「す、スラオシャ(先輩)……?」」
その元凶、憎しみに満ち昏い闘志を漲らせたスラオシャに、周りの者たちは怯え混じりに問い重ね。
何を呆けておる。この世界が気に入ったかの?
唯一平然とする飛鳥姫巫女命は何事もなかったが如き動きで朱色の空見上げ、獰猛に口元歪めては視線戻し囁いた。
「―――こんな世界、壊してしまうぞ」




