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第3話 さらなるお茶会

王子様は家族ぐるみで婚約者(候補)たちと仲良くなりました。


そのせいか、男女の仲というよりは、もはや家族のそれという間柄です。やっぱりお嫁さんにはピンとこないままでした。


ーー倦怠期ですか?



そんな時、やっぱり王様の気まぐれで、大きなお茶会が開かれるのでした。




▷▷▷




女の子がいっぱいいる、とマティアスは思いました。右を見ても左を見ても、美しい、可愛い、女の子ばかり。ーー水準が高い。



王様はマティアスと同じくらいの年齢の女の子を、30人ほど招待したようです。ーー相変わらず、一流の嫌がらせですね。


マティアスはもう14歳。来年は、学園に入学します。子どもから大人に近付き、精通もありました。


そんなマティアスは可愛い女の子たちに囲まれて、大規模なお茶会が始まりました。



「マティアス様、お菓子はいかがですか?」

「マティアス様、お茶をどうぞ」

「マティアス様、ああ、なんて素敵なんでしょう…」

「マティアス様は、どんな女性がお好みですか?」

「マティアス様、お庭を散歩いたしませんか?」

「いいえ、マティアス様、わたくしと…」


これは何だ?とマティアスは目を白黒させます。

かつてない女の子からのすり寄りに、マティアスは胸を熱くさせました。



ーーえ?僕、すっごいチヤホヤされてる…。



女の子が寄ってたかって僕を褒め称える。僕の歓心を買おうとしている。僕って、格好いいの?!僕って、モテるの?!


日頃、婚約者(候補)の3人は、マティアスを褒めたりもてはやしたりしないのです。だから、マティアスは自分の容姿に自信を持つことが出来ませんでした。ーーまして、リリアーナは絶世の美女ですから。


マティアスは麗しい顔に満面の笑みを浮かべて、ご令嬢方に伝えました。


「皆さんとても美しくて…。何だか緊張して上手くお話し出来ません」

「まあ、マティアス様ったら…。お上手ですわ…」


と、マティアスがちょっと褒めただけで、女の子は皆うっとりした表情でマティアスを見つめるのです。マティアスは嬉しくて舞い上がりました。マティアスは女の子たちを可愛がりたくて仕方ありませんでした。


マティアスの昂揚はマックスです。



「では、庭を散策しましょうか。皆さんのように美しい薔薇が咲き誇っていますよ」

「はい、マティアス様」


女の子たちは楚々とマティアスに付いていきました。




そしてその場に残ったのは、婚約者(候補)3人娘と、ディーノです。


「…マティアス様、チヤホヤされたかったのですわねぇ…」

「へー、そうなんだ」

「あんな嬉しそうな殿下を、初めてみました」


3人3様の感想。


「あんな女より、オルガの方が良いのにな」

「そうかな?あたしより、はるかにあの子たちの方が可愛いだろ」

「僕は苦手だね。きゃあきゃあうるさくて」


兄さんも馬鹿だなとディーノは言いました。この3人は、頭軽くて口が上手いだけの女たちより、ずっと上等な女性なのだとディーノは思っているのです。

ーー残念ながら、マティアスは口車に乗せられて、ほいほい女の子たちに釣られてしまったけれど。


「あれ、婚約者(候補)として、許していいの?」

「よろしいのではなくて?結局、マティアス様が誰を選ぼうと自由なのですから」

「ああ…。父上は気まぐれだから…」


ディーノはうんざりしました。ーーそれなら、オルガは僕がもらっても良いんじゃない?とチャンス到来に、少しディーノの心が弾みます。


「リリアーナはよろしいんですの?」

「え?」

「マティアス様、取られてしまいましてよ?」

「うーん。殿下が幸せなら、その方が良いと思います。私はどちらでも」


リリアーナに力みはありません。心からそう思っている様子です。


フィオレは思いました。婚約者(候補)が全員マティアスとの結婚を「どっちでもいい」と考えているから、マティアスは他の女に目移りしてしまうのだ、と。




▷▷▷




婚約者(候補)3人以外とのお茶会は、さらに回数を重ねました。マティアスはモテることにすっかり慣らされ、お茶会を大層愉しみにするようになりました。


お茶会の間、3人娘はそれぞれ適当におしゃべりした後、フィオレはフランカと、オルガはディーノとそれぞれ別れて遊びに行っています。リリアーナ?リリアーナは独りになった後は、王宮の図書館で過ごすようになりました。


オルガはリリアーナがたった独りで過ごしていることを知ると、一つ上の兄を呼びました。オルガの兄はオルガのように豪胆な性格ですが、リリアーナに対しては、とても柔らかく接しました。オルガの兄はすでに学園に入学しているので、リリアーナは学園の話を楽しく聞きます。


こうして3人娘もマティアスから離れ、それぞれの過ごし方を愉しみました。



マティアスは、3人娘のそんな近況を全く知ることはなく、色とりどりの美しいご令嬢方と素敵な時間を過ごしました。


やがて、多くのご令嬢がマティアスの婚約者になりたいと言い出しました。さて、マティアスは困りました。彼女たちは皆とても可愛らしく、褒めて褒められて気分が上がりますが、お嫁さんにしたいかと言われたら、そうではありません。


「マティアス様ぁ…。わたくし、マティアス様のお側に居たいですわぁ」

「あら、わたくしこそが、マティアス様に相応しくてよ!」

「ああ、素敵なマティアス様…。せめて、一晩だけでも慈悲を…」


おいおい。皆さん、相手はまだ14歳ですよー?しなを作って媚びを売るにはまだ早いですよー?


だんだん食いつきが激しくなるご令嬢方に、マティアスはちょっと引いてきました。




ここで、マティアスは少し冷静になります。

そういえば、婚約者(候補)たちは、最近どうしているのだろうか?


「ディーノ。最近オルガたちと会っているかい?」

「…会ってるよ。だって、毎回お茶会に参加しに王宮に来ているからね」

「えっ?そう…だったのか?」


ディーノは呆れた。マティアスは自分の婚約者(候補)の存在をすっかり忘れて放置して、別の女と遊んでいたのです。


「で?兄さんは新しい女が出来たの?」

「まさか。ご令嬢方は可愛いけれど、ちょっと可愛がってお互い愉しむだけだよ」

「…それって、ズルくないか?」


美しく優しい、素晴らしい女性が3人もマティアスのお嫁さん候補なのに。その3人をキープして、マティアスはあっちの花の蜜を吸い、こっちの花の蜜も吸っています。ディーノにはそれが許せません。


ーー浮気するなら、オルガを譲れ!とディーノは訴えたい。


「しかし、王子なら多くの令嬢に愛を振りまいて当然だ、と聞いたんだ」

「は?何その都合の良い情報」

「それに、僕ほどのいい男は独り占めしてはいけないのだそうだ」

「…だから、それどこ情報だよ…?」


ガックリうな垂れるディーノ。確かに、マティアスは端正な顔立ちであるし、鍛えているのにすっきりした体躯。控えめに言っても美青年です。そしてそんな容姿を、婚約者(候補)は決して褒めたりしませんでした。


ーーそこが、イイ女だと思うのにな。


何で兄さんの婚約者(候補)なのか。僕の婚約者なら、すっごく大事にするのに…。


ディーノはそんな思いを強くします。


「…兄さん。もしかして、ご令嬢方に手を出した…?」

「キスだけさ」

「…それは浮気だよ!」

「キスだけだよ?しかも、誰一人勃起しないんだ」

「ぼっ…!」


ディーノの顔が赤くなります。13歳の純朴な少年ですね。


「みんな、可愛いのになぁ。キスだって気分がいいのに。でも欲情しないんだよ」

「サイテー!兄さん、サイテー!」


そう言って、ディーノは部屋を出て行きます。

サイテーと言い切られたマティアスは、キョトンとしています。



キスして勃起。それが、恋じゃない?



マティアスは本気でそう思っています。ーー恋に恋する乙女青年なのです。



でも、マティアスは忘れてしまっています。



過去、たった一人だけ、キスして勃起した相手がいることを。



…若い男の子ですから…。

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