5日目:最速の決着
「あ、あたしのことか?」
「正解」
と答えるのとほぼ同時に、彼は拳銃と刀をこちらへと向けた。見た感じ、海外のものではないが、むしろそちらの方が良かった。こういう形の刀は、なにしろ切れ味が良い。ゆえに、少しでも当たればすぐにでも切れてしまう。
「……待て待て待て。怖いって」
眉間に拳銃を押し付けられ、更に首に刀を添えられている状況、もう終わりだと思った。
正直、これ以上の未来はないと思った。
死んだと、思った。
「……初技『刀砲』」
「先ほど見た技、よけるに越したことなし。……ぐっ」
勢いよく飛びあがり身軽に躱したので、あたし間一髪で状態をそらし撃たれた弾丸をよけることができたが、それよりも驚いたのは、彼柳生一花の行動である。
いくら至近距離とはいえ、国際同盟なんちゃらで働いているくらいの凄腕なはずだ、逃げられないわけがない。しかし、逃げられなかった。むしろ、もろに受けてしまった。
何が起きたんだ?
「スポーツというと、私ではなく彼女の領分ではありますが、フェイントという奴ですね。ええ、フェイントですとも。撃つと見せかけて、少しタイミングをずらす。ええ、ずらしましたとも」
あたしは、スポーツをそこまでしっかりと見ていないので知らないが、それでも見たことがあるシーンがある。あれは、確か国際スポーツ大会で、キックボール?フットボール?とかいうスポーツのシーンだ。
相手ゴールキーパーとの一対一という状況で、キーパーをシュートすると見せかけることで動かし、空いたスペースにシュートを打つというものだった。
つまり、それは逆バージョンということか。
あれ、案外ポンコツ?
「お前、戦闘派か?」
何百という刃の破片を右足に撃たれた用言は、何とか振り絞ったような声で、辛うじて聞いた。
「ええ、まあ。一応刀鍛冶ですから、ええ、ですとも」
汗一つ流さない涼しげな顔で、彼はそう言ってのけた。
「……まだ、終わらず」
彼は、ゆっくりと立ち上がるが、それにしては遅すぎる。また同様に、彼は一応戦士ではあるはずなのに、どうしてわずか1分ほどのこの流れの中で、疲労が見えるのだろうか。
そう思っていると、とうとう彼は力尽きた。
全身は、紫色へと変色していた。口から血が噴き出る。その血も、また紫色になっていた。
「ええ、毒ですとも」
あたしの心を見破ったかのような答えだった。
「……おお、毒か。てか、そんなものを口に入れてて危険じゃないのか」
「まあ、わたくしの能力ですから」
そういうと、彼は刺さっていた刃を一本ずつ抜き取り、口の中へ放り込んだ。
「おお、これが食刀の所以」
「そう言われているのは、初めて知りましたねえ。ええ、初めてですとも。いやはや、これにはれっきとした理由がございましてね。ええ、ありますとも」
「どういうこと?食べられる刃ってわけじゃねえよな?」
「ええ、もちろんです。素材は、皆さんのものと同じです。ただ、量ですよね」
「量?」
「刀鍛冶という仕事は、もう廃れてしまっております。ええ、廃れておりますとも。ですから、リサイクルをしなければなりません。ええ、リサイクルですとも」
「ほう、リサイクル。……」
気持ち悪い想像を、してしまった。あまりの気持ち悪さに、聞くのも少しためらったが、しかし聞かないといけないと悟った。
「も、もしかしてなんだけど。最初にあたしが噛んだやつって」
「ああ、それなら大丈夫ですよ。あれは唯技ですので、リサイクルなどはしておりません。ええ、しておりませんとも」
「……はあ、よかったぁ」
心の底から安堵したあたしである。
「そういえば、名前を思い出しましたよ」
「お、そうか」
「その時の容姿も何となくですが、ええ思い出しましたとも」
「お、聞かせてくれ」
「ええと、言いづらい名前でしたね。わたくしの半分くらいの身長で、いわゆるおさげと呼ばれる髪型で、確か…さささし、しささんでしたか。ええ、そうでしたとも」
「……」
近場にいたああああああああああああああああ!
いやでも、あいつそこまで年は言っていないはずだぞ?
「ああ、間違えました。笹指冴枝さんですねえ。ええ、さえさんでしたとも」
「笹指、冴枝さんか…じゃあ、少し調べてみるよ」
「くれぐれもお気をつけて。ええ、気をつけてくださいね」
「ありがとう」
日も沈んで暗くなってきたので、行動は明日からすることにしよう。
とりあえず、海沿いの廃墟へゴー!




