4日目:突然の刺客
「ええ、人探しですとも。昔、わたくしが愛した女性を、是非とも探していただきたいのです。ええ、探してほしいですとも」
「……つまりは、恋人、とかってことか?」
そういう話、すなわち色恋沙汰とは無縁の人生を歩んでいるので(孤高の旅人だからな)、いまいちピンとこないが、それでも彼が会いたいというのであれば、探して見せようと思った。
「いえ、まあ。恋人…とは言えませんねぇ。ええ、言えませんとも」
「……恋人じゃないのか?」
「ええ、うーんと」
言葉に詰まっている様子だ。なにしろ、本当にあたしは分からないので、ここで彼の気持ちを察することはできない。だから、ちゃんと言葉にしてほしい。
「友人でしょうかねえ」
「友人?」
「まあ、そこで出会えれば分かる話ではあります。ええ、分かりますとも」
「……そう、か?」
理解できないというより、どうしてそこまで断言しないのか疑問に思った。
「じゃあ、その人の名前を教えてくれないか?」
「……それが、思い出せないのですよ。ええ、思い出せないのですとも」
「いやいや、思い出してくれなきゃ、探せないんだけど」
「そうですよねえ。ええ、分かっておりますとも」
こんな会話を続けている背後で、草花がカサカサっと音を立てているのに感づいた。
……まさか、国の人か?
準備段階で情報を共にしたやつからの忠告の一つに、「今回の咲季先輩の旅には、もしかすると国家機密が隠されているかもしれないから、というか確実に入り込んでくるだろうから、暗殺部隊っぽいのが来るかもしれないねっ!」というのがあった。
どうしてそこまで明るく爽やかに言えるのかさっぱり分からなかったが、この忠告は有用であった。
ここで、そのあたしの友人を紹介しよう。
彼女の名前は笹指詩沙。あたしより10個ほど年下で、あたしより10㎝くらい小さい、小柄な女の子だ。髪の毛は二つに分けて縛り、くりっくりの瞳がチャームポイントな少女ではあるが、ポジティブシンキングが行き過ぎることが多々あり、もはや彼女の考え方は化け物じみているところがあったりもする。ちょうど、ここにいる七人の守り人と引けを取らないような、それくらいだ。
「誰かいますねえ。ええ、いますとも」
「そうだな、誰かいるみたいだ」
辺りを見回しても、誰もいない。しかし、風にしては規則的に音が聞こえる。
「初技:刀砲」
彼がそう話した次の瞬間、口から出たとは思えないほどの量の刃が、砲弾のように口から飛び出し、あたしの切った髪の毛の下を潜り抜け、その先の対象物(仮)へと一直線に飛んでいった。うわーお、怖えな。
刺さったかに思えた刃だったが、対象物にぶつかった途端、勢いを無くし、地面にぽとぽとと落ちてしまった。そして、ついに対象物が正体を現した。
「さすがに、まだまだ改良が必要」
「……あなたは、国の人間か?」
「……名乗り。国際同盟外務部軍事課歴史管理官、用言省」
「また、ですか。ええ、またですとも」
「またなのか?」
またらしい。どうやら、この国はやはり歴史の荒波に呑まれていないといけないらしく、その本体がここにあっては困るようで、いっそのこと存在ごと無くしたいようである。それは世界中の常識であり、定説のようだ。
「何度来たところで、あなた方が死ぬに他ならないのです。ええ、他なりませんとも」
「今回、異なり。旅人抹殺が目標」
「旅人、抹殺?」
ロボットみたいな喋り方するなあ。声は、低くて格好いいのに、もったいない。……あれ?旅人抹殺とか言わなかった?おやおや、もしかして。矛先は。




