2日目:いざ探検!
さあ、いざ探検を!と楽しく行きたい所ではあるが、そうもいかないのが旅の醍醐味であり、旅らしさであるように思う。
着いた頃から何となく思っていたが、どうやらここにはロクに人が住んでいないようである。否、どうやら住んでいた形跡はあるのだが、それにしては原住民と出会わなさすぎる。
……もしかして、嫌われてる?
いやいや、まだ遭遇すらしていないのに嫌われてしまうというのは、もうある種の才能である。もしかすると、あたしがちゃんと見ていないだけで、ちゃんといるのかもしれない。空を見上げ、海を眺め、砂浜を見つめ、山を見る。
うん、いない!
それどころか、生物すらもいないとなると、一体全体あたしはどうやって日々を過ごせばいいんだろうか。いやまあ、植物は生えているんだけど、あたしベジタリアンじゃないし。
とりあえず、王国中を散歩してみるか。
海岸沿いから離れ、空っぽになった住居を横目に、山を目指した。
何山というのかは定かではないが、木々は生い茂っており少なくとも禿山にはなっていなかったので、そのあたりに木の実やら何やらが落ちていないかなあっという作戦だ。
歩き出すこと約200m。
平坦だった道が、徐々に坂道へと姿を変えていく。誰かがいれば、話し相手にもなってくれるだろうに、しかしあたしは孤高の旅人で、孤独な旅人だ。そんな弱音は吐かない。
それにしてもあれだな、坂道って、なんで坂っていうんだろうな。
斜道とかで良いのに。
生憎、調べようにもこの辺には図書館は勿論、商店すらもないので、どうしようもない。
思考を巡らせる他ならないようだ。頭を使うのが好きなあたしにとっては至高の時間であり、至福の時である。……あれ?そんな風に見えないって?
ともあれ、坂だろ…?
あれか、逆という意味の逆さから来ているのか?普通の平坦な道とは反対に、登って下るから―――みたいな。真逆の意味だったりして。…真逆って、まさかって読めるよな。まさかの道で、坂道とか?
まあいいや、その辺にしておこう。結論、坂道は普通の道よりも危険な道のりであり、昔の人にとって見れば、まさかの道だった!ってことで。
それにしても暑いなぁ。今着ているのは半袖一枚だし、それ脱いじゃうとただの裸だし―――まあ、誰もいないから見られる危険性は無いけれども―――、着替えも一応持ってはいるけど、今着替えるのもなあ。あーあ、髪の毛切ってこればよかったかなあ。一応縛ってはいるけど、どうも熱い。熱がこもっている。そうだ、いっそここで切ってしまおうか。雑に切っても見る人なんかいないだろうし。
ふと下を見ると、すぐそばにあった。
「お、あんじゃん」
ポニーテールの付け根をバッサリ。
ぼさぼさではあるが、それよりも暑さはなくなった。
「これ、切れ味が良いなあ」
どうせ何もない街だ。これくらい持っている方が良いだろう。
「にしても、坂道長い……長く、ない?」
しかしながら、辺りの景色は完全に変わっていた。
「……あれ?こんなに自然に囲まれていたっけ?」
さっきまでは住宅街のように廃墟が並んでいたのに、そして地面は紛れもなく土だったはずなのに、いつの間にか雑草になっている。そして、森のように木々が隙間なく生えていた。
「もう、着いたのか?」
それにしては、余りにも近すぎる。これじゃあまるで、あたしの目測が大幅にずれているようではないか。
「いやいや、違いますよ奥さん。これは、わたくしの奥義ですよ、ええ奥義ですとも」
あたふたしていると、どこからか声が聞こえてきた。幸い、同じ言語の使い手だったので、言葉は理解できたが(他言語はどうも苦手なんですよねぇ)、言葉の意味までは理解できなかった。
……奥義?
「そうですよ、唯技『虚像刀』ですよ、ええ、唯技ですとも」




