12日目:ばあちゃんの語り
「なんかすごい音したけど、大丈夫だったかん?」
縁側の襖を思いっきり開いて、おばあちゃんは息を切らしながら心配そうな面持ちでこちらに問いかけた。
「こ、こんにちは」
「あらまあ、こんにちは」
どうやら来客があったことを知らなかったようだ。
「あ、それ!いかんで!持って行っちゃあ!」
ハッとした表情を見せ、勢い良くあたしの腕から刀を取り上げた。
「え、いや、そのお」
「え、なんで?ばあちゃん、さっきOKゆうてたやんか」
「これいがいならいいんけんども、これだけはいかん」
「……ちなみに、どうしてか教えてもらえますか?」
「うーん。じゃあ、部屋に戻りん。お話するで」
訝しそうに、あるいは面倒くさそうに、しぶしぶ了承した。
ここで一つ、皆に言っていなかったことがあるのを思い出した。
あたしたちが住んでいるこの国は、東西に長い。
そのため、3つの京を置いて、それぞれで運営・管理することで国を成り立たせている。
地名は単純で、西京、中京、東京である。
まあ、名前と言うのはそのものの状態や能力を表すものだから、簡素に越したことは無いのだ。
そして、ここは中京であるため、西の方とも東の方とも言い難い、何とも言えない丁度境目な方言であるため、人によって使い方がまちまちなのだ。
閑話休題。
部屋に戻ると、おばあちゃんはすべての襖を閉め、あたしと後輩を下座に座らせた。さすがに名家だと、そういった規律はあるんだなあとつくづく思う。
「これは、お前にとってのひいばあちゃん、つまりは笹指冴枝が、未だ10代だったころの話じゃんね。
「彼女は、10人兄弟の中で唯一の女の子じゃんね、ほうだら男勝りな性格に育ったもんで。
「当時の世の中は、荒れに荒れとったもんだん、剣士の家系の名が廃ると、9人全員が戦乱へと駆り出されたんよ。
「だけども、両親は、冴枝の出陣を許さなかった。
「まあ、当然の判断じゃんね。女子が戦いに出るなんて、名が廃るどころか、名が落ちる。
「それでも彼女は、諦めなかった。別に世界の平和を求めたという純粋でまじめな理由も、自分が天下を取るという不順で生意気な理由もなかったんだけんども、それでも彼女は戦おうとした。
「ある日、彼女はいつものように両親と喧嘩をし、家出をした。そして気づけば、大きな山奥にまで、足を運んでいたげな。ほいで、周りにだあれもおらんことに気づき、これこそ絶好のチャンスと思ったげな。
「何って、しーちゃん。修行だよ、修行。
「彼女は持ちだしとった木刀を堂々と持ち上げ、素振りの動作に入った。道着はさすがに来とらんかったみたいけんど、当時の通常の服装からして、あまり変わりはなかったんでしょう。
「ほいだら、彼女の背後から、何やら妖しい者が迫ってくる気がしたもんで、木刀を向け、『誰だんっ!』と叫んだ。
「その人は、『妖しいものではございません。ええ、そうですとも』と言ったそうだ。
「ほんでもう、そこからは水掛け論。最終的に冴枝が折れた形で、決着したそうな。
「何者かと問うと、その男は『刀鍛冶です。ええ、鍛冶ですとも』と答えた。」




