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陽元日記  作者: サツマイモ
食刀の刀鍛冶―――柳生一花編
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11/99

10日目:後輩の家にて

「いやあ、お疲れ様です、先輩」

後輩の家までの道のりで、気になることは無いこともなかったが、そんなことをしている場合ではなかったので、色々無視してやってきた。


ごめんね、重い荷物を抱えたおじいちゃん。

ごめんね、ハンカチ落としていたサラリーマンさん。

ごめんね、道に迷っていた学生さん。


ただ、一つ言わせてほしいのは、皆計画性がなさすぎるよ。特におじいちゃん!ちょっとずつ持って行ってもいいんじゃないの?そんな大きい荷物を持てないことくらいわかるでしょ?


ま、性格の悪いことを言うのはこれくらいにして。


自分の身長より大きな扉をコンコンと叩くと、ざざっと重い扉を開けて、中の使用人っぽい人がすうっと現れて、


「お嬢様は、現在居間におられます」

とだけ言って、また庭の手入れに戻っていった。

「あ、あ…ありがとう、ございます」

その手際の良さ、感服致すところではあるが、そんなに早くて人間の区別がつくのだろうか、というかあたしの顔を一度でも見ただろうか。


「ま、いいか」

居間にいると言われたので、長い廊下をスタスタと歩き、居間へと向かった。なにせ部屋が多いので、どれが居間なのかは分からなかったが、襖が全開の部屋に裸で寝そべっている後輩がいたので、「あ、ここだろう」と見つけられたのだ。


「おいっす、後輩」

「あ、先輩。こんちはっす」

寝ぼけまなこをこすりながら、彼女はこちらの方を向いた。


「あ、あの……服は?」

「え、ああ。裸でしたか、すみません」

「いや、もうちょっと注意しようや。この屋敷が大きくてここまで他人が見られないとはいえ」

「そして、ここには使用人も女性だけ」

「え、そうなの⁈」

まあ、確かに外にいた人も女性だったけれども。


「お父さんは、漁業関係で海外ですし、今ここには女性しかいないのですよ」

……なるほど。でも、それが理由なら、裸でもいいかとはならないからね?

「じゃあ、しょうがないんで服着ますね」


なんか、あたしが強制したみたいになってんだけど……。

あれ、間違ってないよね?


「ふう」

恥ずかしげもなくあたしの目の前で着替え始めた。

「もしかして、興奮してるんですか?」

にやにやしながらこちらを見つめる後輩。

「い、いやあ、別に」

はぐらかすことしかできなかった。

「あーれれ、女性でもいいんですね、先輩」

「まあ、嫌ではない」

「え、否定しないんだ」

「肯定もしないがな」

「想定外でした」

いや、別にそういう目で一度も見ていないだけで。今まで言ったように、あたしは性欲がほぼないと言ってもおかしくはないから、女子だろうが男子だろうが、特に気にしないんだよ。ただまあ、常識から考えて、倫理を論理的に考えて、指摘しただけであって。


つまり何かというと。

『あたしは別にいいけど、他の人は知らんよ』ってやつだ。


「そうですか、じゃあ」

すぐに彼女は着替え終わり、はじに寄せていた座布団を持ってあたしに渡し、自分はしっかりと上座に座った。

「それで、今日はどうしたんですか?」

「いやあ、これと言って用は」


ある。大いにある。ただ、何というか、彼女の家の中心に障りかねない重要な話なので、お気楽には切り出せない。細心の注意を払わなければ。


「この前の、通信のことだけど」

「ああ、そういえば。うちも調べたんすよ」

「お、そうか」

「そしたらですね、押し入れの中にこんなものが」

そう言うと、彼女は言ったん部屋を出て、そしてすぐ戻ってきた。

「これって、やっぱり刀なんですか?」


素養が無いもので、と言ってあたしに手渡した。

あたしだって、素養は無い。

しかしながら、その見た目はまさしく日本刀だった。全体でちょうどあたしの腕の長さで、柄の部分には柳が描かれていた。


「多分、刀だろうな」

「これ、結構貴重なものなんですかね」

「まあ、今の時代刀を使う人なんていないし」

「そうですよね」

「よかったらさ、それ作り主に返さない?」

「別にいいですよ」

「え、そんなにあっさり?」

「想定外でした?」

「想定外だったよ」

「まあ、でもうちが決めることでもないと思いますがね。お母さんは興味がないだろうからいいけど、おばあちゃんがなんて言うかな…ちょっと、聞いてきますね」

ささっと部屋に出て、ささっと部屋に戻ってきた。


「良いですって」

「んな雑な」

「まあ、古くからあるものらしいけど、なんかもう要らないって」

「へ、へえ」

くれるのはありがたいけど、なんかそんな感じでもらったらなあ。

「じゃあ、ご丁重にお預かりを」


「待ってください」

「え?」

後輩、シーっと言ってあたしをかがませた。座っていたので、なんとなく四つん這いのようになっている。

「どした?」

小声で尋ねる。

「なんか、人の目が」

「人の目?でも、塀があたしの身長より高かったんだぞ?いくら男とは言え、さすがに越えれたものじゃ」

「森の中からです」

「いや、森って。よく見えたな、そこから」

「まあ、慣れですかね」

そう言うと、彼女は縁側に仁王立ちし、

「出てきてくださいな」

と非常に萌えるポーズをしていた。


可愛いな、おい。


すると、ざっと音がして、そして着地した音は聞こえず、長身の男二人組が後輩の前に立った。

「いやいやいや、よくも我らをみぬけたのう」

「ほんとほんとほんと、見抜けたなんて驚きですなあ」

妖しさ際立つ二人組だった。


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