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CLUB♪ ~きっとそれは伝説になる~  作者: Mimiru☆
まだまだ続くぜ我ら遊部っ!
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FEATURING OF 高里紅葉

主に女子生徒にモテモテな女たらし、紅葉。

しかし彼には、ある思いが胸に秘められていた・・・

☆紅葉side☆


名前が変わってる人って、どのくらいいるだろう。

オレが所属していた遊部には、少なくとも二人はいる。

名前を偽ってまで自分の名前を嫌がっていた、レンちゃん先輩。

変わっているということにそもそも自覚さえない、永遠さん。

もちろん、オレもその一人だ。


「初めまして、高里紅葉って言います。もみじ、ってかいてくれはです♪ よろしく!」


もみじではなく、くれは。

一度見ただけでオレの名前を読める人は、そうそういなかった。



オレの両親は、とにかく気楽だった。

気さくで、楽観的で、大丈夫かってこっちが思うくらいポジティブで。

子供の名前も、自分が春の植物だからってことで四季にちなんでつけようってことでサクッと決まったらしい。

オレの姉二人も、その被害者。


「紅葉、もう朝よ? 急がないと、朝ごはん抜きにするわよ?」


高里家の長女、純恋姉さんは冬の花「スミレ」から。


「やっば!!! 遅刻ギリギリじゃん! 起こしてくれてもいいじゃあん、純恋!」


次女、椿姉さんは夏の花「椿」から。

もちろんオレは秋の風物詩でもある、もみじが由来。

姉さん二人みたく、そのままもみじでもよかったのに「くれは」にしたあたりがうちの親の変わったところだ。

ま、この名前のおかげで向こう側から話しかけてくる人が多いから、友達も作りやすかったけどさ。

オレに似ていたらしい父親は、オレが赤ん坊の頃に亡くなってしまって顔すら覚えていない。

そのため母と姉二人と、女に囲まれたオレの家はうるさがられる迷惑な家庭だった。


「何度も起こしたわよ。起きないのが悪いんでしょ」


「もう! 鬼! 悪魔!」


「こら椿、口が悪いっ! くれちゃぁん、輝君来たわよ~?」


「分かってるって~」


朝は余裕の純恋姉さんに比べて、早く起きるのがやっとという椿姉さん。

たった一つしか違わない二人はまるで双子のように仲がいい。

母さんは母さんで当時からファッション系の仕事をしており、オレ達を見送ってから仕事に行くのが日課。

うちの家は、朝が一番騒がしい。

一通り準備が終わると、いつも行くのは三人同時だった。


「んじゃ、母さん! 行ってくるっ」


「よぉし! 今日も頑張るぞ~っ!」


「行ってきます」


「はぁい、皆行ってらっしゃい! 気を付けて!」


高里家はいつも賑やかでうらやましい。

であって間もない頃だったにも関わらず輝が嫌味ったらしく言うのを聞きながら、彼とともに学校へと向かったのだった。



中学校の頃、からだろうか。

割と高い頻度で、告白されるようになったのは。

女の子達も積極的で、次から次へとやってきていた。

だから一人の子と付き合うつもりもなかったし、その時は彼女とかどうでもよくて見て見ぬふりをしていた。

でもー


「紅葉~ちょっと話あんだけどさぁ」


「なんだよぉ、椿姉さん。今いいとこなんですけどぉ」


「ゲームばっかりしてんじゃないわよ、まったく。あたし、今度から高校じゃない? 遠いしめんどいから、寮いくから」


なんでそれをオレに言うのか、まずその疑問が生まれた。

寮に行くとか行かないとか、そういうのは母さんにする話だって思ってたから。

何も言わないオレに対し、姉さんは呆れたようにため息をつく。


「ほら、純恋ももう寮でいないでしょ? 母さんもそんな家いないし、ここ守れるのあんたくらいしかいないのよね」


「……ああ、留守番しっかりしろ的な?」


「そういうこと。ま、あんたはそういうの気にしない柄だろうけどね。一応の連絡よ」


それじゃとといって、姉さんは去っていく。

彼女の後ろ姿を見ながら、オレは悟った。

この家で一人、取り残されることになるということを。

姉さんの言うとおり、母さんは忙しかったしほとんど家にいることはなかった。


一人。

そのことがどれだけオレにとって苦痛か、どれだけつらかったか。

あんなにうるさかった家が静かになった感じと言ったら……


「くれちゃん、今日から輝君もたまに来させることになったから。けんかしないように、仲よくするのよ?」


正直輝が来てくれなかったら、どうしようかと思った。

ま、あいつもそんなに口数多いわけじゃないし、一人いても変わんなかったけどさぁ。


誰かにそばにいてほしかった、ただそれだけ。

気が付いた時には、周りにたくさんの女の子がいた。

告白してきた女の子全員を、彼女にしていた自分がいた。


「紅葉君って親しみやすいうえにかっこいいよね! 私、ひとめぼれしちゃった!」


ほとんどの女子が、口をそろえて言う。

その時思った、本当のオレを知っている奴なんていないって。

表面上の好意って、このことかな。

本当のオレを知らないくせに、何が好き、だ。まったく。


「紅葉、お前は高校どこいくんだ?」


中三の夏ごろ、輝が唐突にそんなことを聞いたのはそんな時。

特にやりたいこともなんもなかったオレは、適当に


「女の子がたくさんいるとこなら、どこでもいいかな♪」


といってのけた。

すると輝はさらに追い打ちをかけるように一言。


「ずっと考えていたこと、なんだが……高校になったらお前の家にお世話になるの、やめようと思う」


「は? なんで。お前、一人暮らしなんかできるのかよ」


「まあ、できる範囲でな。おばさんにも悪いと思って。だからせめて、高校は同じところに行かないか? ……お前がよければの話だが」


輝は勝手だ。

勝手に決めて、勝手にオレの先を行く。

オレの気持ちに気付いているのかさえもわからない。

ただ、こいつなりに考えてくれたのは確かだ。

一人なのは、こいつもオレも一緒ってことか……。


「いいよ、その方が楽しそうだし♪ それで、どこの高校?」


オレが輝と、あの場所に入学することになるのは、また別の話―


(本編へつづく・・・)

こうやって紅葉だけ番外編になってしまったのは、本編でやるタイミングを見失ったからです。

ご了承くださいませ。


遊部の中で家庭環境で恵まれているのは、彼と萌ちゃんだけになります。

ただ紅葉にも色々あるので、実質萌ちゃんが一番の幸せ者ですね。


次回はそんな紅葉と、輝の出会い秘話です! 紅輝推しの皆さん、見逃せませんよ!

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