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聖剣サックソール

再開遅くなりすみません。

 深い深い、真っ暗な闇が続く。

 ここはいったいどこだろうか。

 自分は何をしていたのだろうか。

 ロクでもない生活を送って次第にひきこもってはコミュニケーションを誰とも図ろうとはしなかった。

 その中で出会ったゲーム『KNIGHTOFSEVEN』。まさに自分を育成しどんどん強くなってくという夢のような世界。

 強くなればなるだけ周りにちやほやされてそれが心地よかった。現実は絶望的。どれだけ努力しても報われる奴と報われない奴の差は出る。

 後者だった。

 そんな人生だからこそ最悪でオンラインゲームという現実逃避を見出したのであろう。

 でも、そのゲームの世界では自分は有名人で努力を少しすれば大抵のことは手にすることができた。女、名誉、金、武器。

 すべてがすべて思い通り。

 そう思ってたけど、結局終わりはやってきた。

 最悪の気分でそのサービス最後の日にやり続けた。気持ちはどんよりしてた。

 顔には出さなくても。だから、あの運営からの奇妙な手紙は衝撃的でうれしかった。

 目を覚ましてみると奇妙な世界。

 自分の今の人生から脱出できるのなら持って来いのルートがそこにはあったではないか。

(俺はまたしても失敗したのか)

 闇の中で沈みゆくのは体だけではなく心も。

 伸ばした手は空を裂いてむなしくから回る。

 もう一度やり直せればと思う。

 けど、この世界はゲームではなく現実だ。

 やり直しは利かない。

『主、主』

 光が差し込む。

 この闇の世界になぜだろうか。どこからか光が差し込み聞き覚えのある女性の声が聞こえる。

 体は動かないでもその光に伸ばす手だけは動かせる。

『主はまだここでは死んでなりません。役目を担ってください。新たな力を解放します』

 光をその手でつかんだ。

 体が力に満ちあふれていく――


 ********


「あひゃひゃ、さぁてっと、ボスに差し入れだよぉっと。これは結構な代物だよねぇ」

 ずるずると一人の男の死体を引きずって持ち去っていこうとする病弱なまでに色白い顔の女性。

 グランド王国の拷問官たるカツェ・シャールランドは薄気味の悪い赤黒い色をした短剣を肩でトントンと叩きながら軽快な足取りで立ち去る。

 だが、その足取りを阻むように後方からの襲撃を受ける。

 襲撃をしたのはクリュルッハ。

 先ほど、カツェがしっかりと自らの知恵で生成した特殊毒薬で眠らせた女だった。

 右手に握った剣が豪快に振りかぶられカツェの首は切断され、違切断面が噴水のように湧き出て、その首から先は地に落ち転がった。

「やったか‥‥くっ‥‥」

 毒薬の効果がまだ残る体をむりに引き起こしたのにはさすがに無理がたたり体に激痛と苦痛が走り前のめりに倒れる。

 もはや、完全にマヒした体は起こせない。目の前には斬り落とした首が転がりこちらと目が会う。不気味にそらそうにもそらせるはずはない。

 瞳孔が開き、病弱な色白の肌とひどいクマ面の女顔。綺麗な容姿がその病弱性で台無しなのは何とも同情する。

 その顔をじっと見つめていたときクリュルッハはお化けでも見たように声をひきつらせた。

「あらぁ、久しぶりに首が取れちゃったわぁん」

「な‥‥な‥‥化け物‥‥」

「ひどいじゃなぁいん。あひゃひゃひゃ」

 首は舌を出して動いていき、もとの体まで動こうとする。

 次第に体のもとまで動くと体もひとりでに動きその首を持ち上げ切断面へ癒着する。

「馬鹿なっ」

「私は死なないわよぉ」

「アンデットなのか‥‥」

「あんなのと一緒にしないでよぉ。私はぁこれのおかげぇ」

 きらりと光る不気味な短剣。

 確かに、クリュルッハの人生でも初めて拝むかのような短剣だ。

「この聖剣サックソールがあったおかげなのよねぇん」

 振り回した短剣をキラリとなびかせてクリュルッハのもとまで歩み寄る彼女。

「あなたの力も存分にこのこのぉえじきにさせてもらうわよぉ」

「何をする気っ」

「いひひ」

 クリュルッハの上で短剣を逆立てそのまま刀身が振り下ろされ――

「っ」

 クリュルッハ絶望し死を悟るように目をつぶった。

 でも、痛みが来ない代わりにごどんと背に何かが落ちる衝撃がきた程度。

「あぎゃぁああああああああああああああああああ!」

 とんでもない絶叫が上がる。

 恐る恐る目を開け、その目の前の光景に唖然とした。

 拷問官の女が腕を抑えうずくまり、傍らに煌めく刀身の剣を握って立つ男の姿。

 その男は先ほどまで死んでいたはず。

 だが、生きていた。まるで、傷は見当たらない。

「いたいたいいたいぃいいなんでぇえええええ!」

 カツェは絶対に痛みを感じない体だったために焦っていた。

 自らの体に来るこのとんでもない激痛がどうしてひき起こるのか分からない。

 ただ痛いし嘆く。

「ちっとばかっし、チートだけどな。リカバリーってやつだよ。このレミアスの力の一種だ。所有者の傷を再生させる。まあ、ある程度までだけどな」

 そういう彼はおもむろに破れた上着を脱ぎ捨て上半身裸になる。

 そこには先ほど刺されただろう傷跡が細い線となってあった。地味にそこからまだ血が流れているがクリュルッハが先ほど見た出血量よりもかなり小さい。

 いや、傷そのものが全体的に小さくなっている。

「やっぱし、その短剣は聖剣か」

「あひゃひゃ、そうよぉ、私の聖剣。ボスから頂いたぁ聖剣」

「ボス? グランド王国の王様か」

「あひゃひゃ! 違うわぁ。アルツランド皇国、皇女殿下に決まってるでしょぉ」

「なに?」

「あひゃ、くちがすべっちゃたぁ」

 彼女はそんな自らの失態などどうでもよさげなように喜々として笑っている。

「こんなに生きがいい人はじめてよぉ。まぁたころしてあげるぅ」

「腕は大丈夫なのかよ」

「あひゃ! もうなれたわぁ」

「化け物が」

 短剣を振り回し、そのままにじり寄るカツェ。突貫攻撃か。

 そう、思ったが動きは軽やかな踊り子のような回転で放たれた注射器の射出。

 どこかに隠し持ってるのか。はたまた魔法か。

 注射器は目元に向かい一直線だ。

『主、彼女の聖剣は相手の魂や血や養分を吸い取る類のものです。決して死者を操るというわけではない』

 レミアスからの伝えられた情報をしっかりと聞きながら注射器を剣でたたき斬り中の溶液が自分に降りかからぬよう素早く後退する。

「どういうことだ? 奴は明らかな不死身だ」

『それはどうやら、他の聖剣の力でしょう」

「――ってことは何かあの女のバックにいる奴も聖剣持ちか。どうにもきなくせえ話だ」

『気を付けてください。それでも彼女の剣に一度でも致命的な攻撃で刺されれば死にます。彼女が聖剣の力を放出すればの話ですが』

「忠告どうも。けど、どちらにしろやべえだろっ」

 彼女の続けざまの攻撃は間合いを詰めた攻撃。短剣による振りかざす攻撃が左右へくる。

 そのたびに剣で捌き、相手の隙を探った。

『相手の弱点を主の持つスキルアイでどうにか探ってください』

「スキル愛?」

『スキルアイです』

「なぁにごちゃごちゃしゃべってるのぉ!」

「うぉ」

 レミアスとの情報交換がまともにうまくとれない。

 彼女の強い短剣の左からの斬撃と大ぶりな蹴りの合わせ技が優騎の横っ面を盛大にたたく。

 吹き飛ぶ体は地面を跳ね跳んで転がった。

 斬撃は剣で防ぐも蹴りの一撃は強烈にもらってしまい頭をぐらつかせ起き上がると肺からこみあげるものを地面にぶちまける。

「あひゃひゃ」

「くそっ、きもち悪い」

『主! 大丈夫ですか』

「安心しろ。まだ死んじゃいねえ。2度目はねえ。ふぅー、氷結しろ! コキュートス!」

 地面に剣を突き立て聖剣の力を解放する。

 最初の吸収した聖剣、アイスグラシエルの氷が王城の裏庭を凍りつかせていきスケートリンクに変わる。

 そのスケートリンクに相手のステータス情報が映り込む。

 カツェ・シャールランド Torture officer Lv.87

 攻撃 10000

 防御 300000

 対魔法 25000

 対物 25000

 体力 1000

 器用さ 200

 速さ 1000

 才能 5000


 スキル 不死の影響


 何とも不気味な数字の表記に驚きを通り越して笑いが込み上げた。

「防御が30万とか0一つ多いんじゃねえのか」

『いえ、確かです。彼女のスキル、不死の影響。あれは何らかの聖剣の効果によって与えられたものでしょう。ステータス数値もバランスが悪いですし聖剣によって生かされてるしたいとでもいうのでしょうか』

「おいおい、不気味なこと言うなよ」

「あひゃひゃ!」

 何やら彼女が狂いに満ちたように今度は踊り始めた。ふらふらと社交ダンスにしては雑な動きでひらひらと体を翻す。

 すると、足場がどんより変色していく。白色の鏡のような色合いをした氷は黒く塗りつぶされ、彼女の周辺だけ溶けていく。

『腐食っ!? あれは呪刻の力』

「んだと!? それって、例の宿敵の聖剣じゃねえか。けど、奴の聖剣はサックソールとか言ってたぞ」

『そうです。それであってます。彼女の不死の力は呪刻の物なのかもしれません』

「そっちか。やっかいだな。じゃあ、あの腐食もその不死のスキルからか」

『可能性はあります』

「ちなみに食らったらどうなる?」

『腐ります』

「げげっ、じゃあ、まじいな」

 軽いやり取りをしてる間にもどんどん腐食は進行してる。

 その時に目に入ったのは倒れたクリュルッハだ。

 一瞬、放っておけばいいとかいう考えが及んだがみすみすそのようなことをしたら後味が悪い。

「あーくっそっ!」

 飛び出しざま、腐食が迫るぎりぎりで彼女を掴み後方へ飛びよける。

 腐食から逃れてもまだ虫の大群のように迫る。

「あひゃひゃ、私の腐食からは逃れられないのよぉ」

 今度は注射器がほほをかすめる。裂けたほほから血が流れる。注射器が連続で目の前に迫る。

「ちっ! そんなんありかよ! 氷結しろ!」

 剣を振り氷の壁が現れ注射器から身をかばうも腐食が氷壁を溶かす。

「くそっ! 打開策はないのか」

『あります』

「それはなんだ?」

『彼女を置いて逃げることでしょう。氷で自らを持ち上げてあの王城の天井につかむことの脱出方法を推奨します』

 上を見上げるとわずかに氷で自らを持ち上げれば届く距離に王城は居を構えている。

 その屋根伝いに逃げればいいことは確かだった。

 だけど――

「この女を置いてけはしない。こいつは俺を助けた。その恩人を見捨てたら後味悪いぜ」

『意外ですね。主なら平気でそういうことすると思いました』

「おまえ、決行口悪いよな」

『なんのことでしょうか?』

 このすっとボケる毒舌剣にいら立ちつつも、他の打開策を早急に考えねば腐食と注射器の餌食となる。

 彼女が歩幅歩み寄り始めてるので腐食もその分進んでくる。

 注射器も先ほどから放たれてるので氷の壁で防ぎながらいるが腐食のおかげで何度も何度も出さなくては身を守れない。

「レミアス、お前を彼女に一撃与えれば死ぬんだよな。お前は『聖剣』。だからこそ、聖剣の力で得た体にも影響を及ぼすそうだよな?」

『はい、そうです』

「仮にだ、腐食が当たる直前に奴を倒せば万事休すか?」

『ばんじきゅうすという語源は知りませんが助かる見込みはあります』

「それなら、だ」

 凍えるように寒くなるような行動だろうと思いながら優騎は剣を構えた。

「突き出でよ!」

 氷のつららが幾重も突き出て場を支配した。

 それはカツェにまで襲う。

 むろん、そんな急襲が簡単に通用する相手ではないことを百も承知だった優騎。腐食で溶けた氷柱。

 氷柱の溶けた場所を足場にして彼女へ接近する行動を取る。

 さすがにこれにはカツェも目を見開きながら獰猛な笑みで君の悪い発狂をした。

「キヒャハァー! おもしろいわぁ!」

 彼女の手前で飛び上がり頭上高く剣を振りかざす。

「そんなのあたるはずはないですわよぉ!」

「ああ、そうだろうな」

 短剣と聖剣がぶつかる。

「これを待っていた――凍り付け!」

「っ!?」

 とたんに彼女の腕が氷結し動きを封じる。短剣を持った腕はこれで短剣ごと封じ込める。だが、腐食が始まり自らの体にも汚染が始まった。時機に氷が解ければおしまいだ。

「この程度でぇ」

 左手に握りぎらついた注射針が喉元に突き刺さる。

「クッ」

 顔をしかめつつも優騎は戦慄に満ちた。

「悪いな。俺の勝ちだ」

 弱り切った体を力強く踏ん張らせ剣を天高く掲げた。

「うぉおおおおおおお!」

 神々しく輝く剣を一直線に振り下ろす。

「まさか、単なる力任せで‥‥」

「作戦なんかねえ。もうこれしか考えつかなかったさ」

 勝利を確信した敵は一番油断をする。

 特に相手が目前にいて自分が有利な状況となればなおさらだ。

 その時に相手がまさか、剣をふるうなどとは思わないだろう。特に弱り切った体で。

 真っ二つに裂かれた体は地面に横たわり血の海が流れ出す。

 体の首元が腐食で黒ずんでいたがそれも次第に落ち着き元の肌色を取り戻した。

 最後にとどめとばかりに短剣を氷ごと砕くと短剣の欠片は次第にレミアスに吸い込まれていった。

 しばらくして、憤慨した言葉が脳内に響いてきた。

『主、作戦あったかと思いましたけどなかったんですね』

「いや、あっただろう。氷柱を足場にするという」

『確かに敵の注意を一瞬だけそらしてはいましたが元のもくあみだと思います』

「まあ、勝てたんだからいいじゃん。さて、内部は終わったかな」

「ええ、内部は終了してマスよ」

 ぞわり。

 まるで背筋をなめられたような尾ぞ蹴るような触感。

 不気味な気配を背後から感じ取り振り向くとそこには妖艶なドレスを着飾ったモノクルメガネをかけた美女の姿。

「どうも、こんばんわ。レミアスの所有者デスわね」

『呪刻の所有者です。気配を感じます』

 レミアスの言葉を聞いて剣を構えるも体がぐらつき、うまく立てない。

「くそっ」

「無理をなさらないで。今日は戦うつもりはありませんワヨ」

「だったら、なんだ?」

「ただのご挨拶ですわ」

「あいさつにしては物騒な殺気を感じるぜ」

 優騎の目には確かに見えていた。

 何かの力で姿を隠してはいようとも彼女の傍らには黒い衣装――忍者のような格好をした女性がいる。

 そいつからのさっきであろうものがじかに伝わってくる。

「っ、まさか見えてらっしゃるとは驚きデスワ。彼女の粗相を許してくださらないカシラ」

「まあ、いいけどよ。んで、さっき終わったとか言ってたがどうしてわかる?」

「それは時期に判明いたしますわ。それよりもレミアスの所有者にお伺いできて何よりでしタワ。呪刻の使用者として」

 そう言って彼女の腰に色合いがマッチしすぎて気付かなかった黒鞘におさめられた細身の剣があった。

「いずれ、また」

 風が吹きすさび目を閉じるとその場に彼女は消え、カツェの死体も消えていた。

「あれが呪刻の剣か」

 初めて目の当たりにした剣に背筋が凍りつきただ体が震えあがるのであった。

ここから順調に次の聖剣への戦いは始まります。

次の話で第2章最終です。

そこで一度この物語は完結し再度新作投稿としてタイトルを変え掲載予定です。

つたない文章ですが引き続きお楽しみ頂ければと思います。

次回掲載は未定ですがなるべく早くするよう心がけます。

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