戦争終幕と暗躍する裏
どこからか、馬の駆ける音が響いてきた。
それは徐々に近づくにつれて人の叫ぶような声まで聞こえてくる。
「キジョウユウキ!」
声の方角に目を向けた。軍馬にまたがる騎士の軍勢。鎧には薔薇のような徽章がついた華中を身につけている。それがどこの国の物なのかは騎士の軍勢の者を見るからに明らか。
「アリシア第1聖騎士団長!」
クリュルッハがすぐさま彼女のもとに駆け付け頭を垂れた。
「何があったんですこれは?」
アリシアの強い瞳がクリュルッハと優騎に突き刺さった。あたり一面は雪化粧のように白く、アイススケートのような氷の世界があった。
だが、あちこちの氷は砕けたり隆起したり、血で赤く染まった跡があったりとここでの戦闘があったという凄惨さを物語っている。
アリシアはすぐにそれを悟ったのだろうか目を伏せて無事であったことに喜んでくれる。
「無事で何よりでした。外で王女らが待機しております。すぐに撤退をいたしますよ。それから、事のあらましは城にて聞きましょう」
「ああ。それはいいけど、サクヤさんたちは?」
「別の騎士隊が迎えに行ってます」
すると、間もなくして一人の騎士がやってきてサクヤさんらの無事を伝令した。
ほっと、優騎は肩をなでおろして空を見上げる。火の手のせいで黒煙が上がり空を黒で埋め尽くす暗黒。
ふと、脳裏をかすめたのは『呪刻の剣』の使用者の「ミシェル・アルツランド」。
彼女がいかにしてこの惨事を引き起こしたかはわからないまでも彼女と言う存在には危険性を優騎は身にしみて体感した。
今後がどうなるかは分からないが危険な道をたどることになるのだろう。
なによりも、今回のグランド王国の侵略の裏に彼女がいたというのが明らかな示唆。
カツェと言う拷問官を使い、グランド王国を勢いづかせ、ローズ大国侵略させる。
あのモンスターの襲撃も考えるとカツエの「聖剣サックソール」の力であるのならば納得がいくがあくまであれは死者を操るものではない。魂を吸うもの。一部にはかかわってると考える。
(俺の仮説は間違っちゃいねぇよな)
「聖剣サックソール」と「呪刻の剣」この二つの剣をもってするのならばモンスターを操ることなど容易に思える。呪刻の剣は見た限りだと使者を操る要素も含まれてるかのように感じられた。ならば、「聖剣サックソール」の無作為に魂を吸う力を利用し容易にモンスターを殺した後であれば余裕でモンスターの人形の完成だ。そうすることで、村の一つを襲うなど出来うるであろう。
「おい、何をぼうっとしてるのだキジョウユウキ。いくぞ」
クリュルッハのキツイ叱りの声をうけ、優騎はその場を後にした。
短かったグランド王国との戦争が幕を閉じたのだった。
******
遠い大地の地に薄暗く誰も近寄ることはないような不気味な森の中にひっそりと構える居城があった。
居城下には元は活気あふれる街でもあったろう面影ある廃墟と化した街の残骸がある。
そんなホラーな居城へと帰還する一団があった。その一段の軍勢のほぼは死者で構成されている。
生者はわずか3人。
生者のうちの一人、妖艶な美貌と見事なプロポーションを兼ね備えた漆黒のドレスに身を包む美女は居城の王室の間にある玉座に腰を下ろす。
彼女は居城の主であるからこそ当たり前。
美女、ミシェル・アルツランドは目の前にいる軍勢共下がらせ、わずか数名だけに残るように指示した。
残った数名は生者。わずか、二人だけが残っている。その内一人の黒装束に顔を半分ほど隠すマスクをした小柄な体形の美少女、アイナ・クルスに目を向ける。
「アイナ、カツエを下ろしなさい」
アイナは死んだというよりももともと死体であったカツェを下ろすように命じた。
カツェ・シャールランドはミシェルの人形だった。『呪刻の剣』の力によって生を与えていた。
だが、それに感情や意志と言う概念は存在しないからこそ狂気な性格へと変わってしまう。
「お命じるままに」
アイナと言われた少女はミシェルに従い彼女を乱雑に下ろした。見事に体を貫かれて負傷したカツェの肢体。しかも、『聖剣』によってつけられた傷のために新たに生を与える施しはできない。
これではただの肉片に過ぎなかった。
なので、ミシェルは腕を振るいカツェを焼いた。
燃えて行くカツェの肢体。持ち帰ったのはまたしても人形にするためではない。
彼女の存在だけでこちらの情報を与えるリスクがある可能性を考慮したからだ。
「なるべく、あちらに情報を与えるという行為は避けたいですワヨネ、アイナ」
「ハッ」
ミシェルは愛らしい右腕に頬笑みをむけながら、今度はアイナとは逆方向にかしづくもう一人の騎士に目を向けた。
青と黒の騎士甲冑を着た白銀の美女。
騎士甲冑に包まれながらにしても体の輪郭から見事なスタイルが維持されているのと筋肉質な体だとわかる。
それも彼女の種族が起因する。彼女は世界で絶滅した種族、ワルドの一族の生き残り。
ワルドは俊敏さと腕力に嗅覚というように暗闇などでは最強とされる暗殺を主とした職業に就いていた一族。
だが、ある時期からそんなワルドの一族を妬むものが現れ根絶やしにされてしまう。
そんな中での生き残りが彼女、クルル・シェルファ。
「今回の活躍見事ヨ、クルル。あなたのおかげでキリンを使いレミアスの使用者を成長させることができタワ」
「いえ、私は貴方様におほめにあずかるようなことは一切しておりません。私ができる限りのことを正していただいたまでのことです」
相変わらず自分に対して過小評価する彼女はそう冷たく言い放った。
今回の作戦はすべては聖剣の力で誘導していた。
ミシェルは思いを浮かべる。
ある時期に空の光を期に『聖剣レミアス』の噂がでてきた。最初はただの噂で気にもとめなかったが世界侵略のために各国に配置していた騎士のひとり、『グランド王国側』のカツェからの伝達を受けてミシェルは噂の信憑性を確信した。
そこからは素早く動いた。
ローズ大国側にあるというレミアスを表に出させるために『ローズ大国』領土内にグランド王国をそそのかして侵略行動を促す。
その手助けを行う。
それが最初のモンスターの操りだ。クルルの聖剣を使い幻惑に陥れたモンスターたちを素早く手玉に取っていく。
カツェの力を使い村人はすべて死なせる。
まさに楽ちんな仕事だった。特に厄介だったのはキリンである。
サック―ソールでまずは痛めつける段階で手づまりだった。なぜならば、サックソールには術を発動するためのある条件があった。
物思いにふけると部下のアイナが心配げに聞いてくる。
「そういえば、サックソールの件はあれでよろしいので?」
「いいのデスワヨ。あれはある意味では弱い。なぜなら、術を発動する際には相手を10回以上斬りつけないと発動できないのですもの」
キリンにもそうすることが条件だった。ほぼ、こういう特殊なドレイン系や魅惑や魅了の類の聖剣には発動条件が付きものである。
キリンも結果としては成功したが魅惑の効果が薄く危険な状態でもあった。
「ローズ大国は結構な打撃を受けたはずですワヨネ今回ので」
「ええ、だと思います」
アイナは同意を示した。
クルルはあいかわらず我関せずを貫き通す無感情な瞳でぼうっとしている。
クルルはそれでも仕方ない。彼女の聖剣が彼女から感情を奪っているのだから。
「では、次の作戦を始めますワヨ。私たちの国再興と支配を願って」
まだ、これで終わりではない。
レミアスに活躍をしてもらわなくてはいけないし、再興や支配のためにもかつどうをしなくてはいけない。
(レミアスの使用者、キジョウユウキ。あなたには今後はどんどん他国を滅亡させていただきますワヨ。そうすることで、我が国は勢力を拡大できるのですから)
そう、死んだ国も村もわが手の打ちになる。
グランド王国の軍勢が今目の前にいるように――
長い間お待たせ手すみません!
そうして、グランド王国戦争編は終了です!
次回は新規投稿作品として発表いたしますが掲載予定は未定!今書いている作品が終わり次第というつもりですので当分先となります。いずれは書くつもりですのでこの作品のファンの方には申し訳ありませんが待っていただけるとうれしいです!
では、今までご愛読ありがとうございました!




