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監禁と騎士としての初命令

 優騎は王国に到着してそうそうに説明をさせられた上で、監禁された。

 理由は無断で国を出たことによる処罰。

 理屈はどうあれ、現在の優騎は最初に王女にであった時点で彼女の所有物となっているということであり、しかも、騎士就任直後に騎士活動を放棄するかのように傭兵になり勝手な判断で任務と称してバルハ遺跡にまで向かったことが処罰の原因となっている。

「ちっ、んなの知らねえってんだよ」

 王国地下の岩壁に囲まれたようなありきたりな中世ヨーロッパ時代の地下牢に閉じ込められた優騎はただむくれながら座り込んでいた。

「にしても、よかった。リッソルト村の人たちは無事に逃げられてたか」

 バルハ遺跡で優騎があの『アイスグラシエル』の守護獣らしき怪物と退治してる時にリッソルト村の彼らは逃げ延びて出口に出たようだった。

 そこで、偶然にも王女様らと遭遇し事情を話し合ったそうだ。

 そこで、王女様たちは退路を絶たれてる入口から優騎を待たずにその山頂部で優騎が来ることを予期して待機していた。

 そう、バルハ遺跡はどうやら、遺跡という山岳だった。

 なにはともあれ、リッソルト村の人たちは無事に村へ戻って暮らしてるという話を聞いて優騎はホッと安心していた。

 しかし、エゲムあの優しいオヤジの死亡を聞かされたときは大きな絶望感を抱いた。

 けど、くよくよはしてられない。

 オヤジだって優騎がよわよわしく物事を諦めることは望んじゃいないと思った。

 だからこそ、優騎は今やるべきことを極力考えて行動をとってみる。

「しかし、どうやってここから出るか」

 監禁されて初日で脱獄を考えるあたりが優騎らしさであった。

 優騎はとにかく退屈は嫌いだ。

 何かをしないと禁断症状が起こる。

 ただし、誰かに左右されるのも嫌なのだが・

「あのクソ冷酷王女、俺は知らないってんだよ。なぁにが騎士になってるんだからだとか騎士になれだとかだよ。まあ、衣食住は欲しいから従うしかねえがよっと」

 唯一の壁にある通気口のような鉄柵のついた窓枠に手をかけて壁に足をかけ力いっぱい踏み込み鉄柵を外しにかかった。

「んぐぐぐ――はぁはぁ」

 諦めるようにして手を離し床に経たり込む。

「くそったれ」

 壁を蹴り上げながら頭上を見上げる。

「ああ、つまんねえ」

 何もかも取り上げられた状態。

 自分で手に入れたあの『吸収するレミアス』も手元にない。

「あの建にいろいろ聞きたいことも山積みなんだってのに。この世界の神だとか選ばれただとか言われてもしっくりこねえし。つか、異世界をつなぐ道具だとかあいつ言ってたがまさか、異世界同士を結合させろってことか救うって。いや、でも戦争を止めろとか言ってたっけ。つか、戦争してるのかこの世界?」

 さまざまな疑問を独り言のように羅列してつぶやいてくと外で開錠音が響いた。

 地下室の扉が開かれた音だ。

 だれかがこの地下牢に近づいてくる。

「キジョウユウキ、出ろ」

 地下牢の鉄扉が開かれ、ひとりのおっさんが優騎に出所を促した。

「けっ、ほんの数分前に入れて今度はでろと? 随分身勝手な感じじゃないか? え?」

「いいからでろ!」

 無理やり頭を捕まれ立たされる。

 そのまま剣の柄で背を押されながら地下室を出されるのだった。


 *****


 王室の間を歩いていき目の前の王座に座るあの冷酷王女、リリア・ローズがこちらを睥睨して見下ろした。

「膝まづきなさい」

「誰がてめぇに膝ま付くか」

 背後に控えたさっきの騎士が優騎の膝を後ろから無理やり打撃で折り曲げさせた。

「ってぇーわぁーったよ」

 イライラとしながら王女を見て何を言われるのかと待つ。

「で、なんだよ。俺を呼んだ理由は?」

「まず、あなたの処罰ですがなしといたしますわ」

「おいおい突然だな。なにかあったか?」

「ええ」

 リリアはそばに控えたアリシアから『吸収するレミアス』を受け取って鞘から刀身を引き抜く。

 きらびやかに光る水色の刀身。氷細工のような剣が太陽に反射されて光を散らす。

 王室の間にいる誰もが息を呑み「うつくしい」と言葉をこぼしていた。

「この剣はどこで手に入れましたの?」

「あん? それは街の武器屋で買ったよ」

「武器屋? この街に武器屋はありませんわよ」

「はあ? 何言ってんだよ。自分の国のある店すら知らねえのかよ」

 優騎が毒を付いて言った瞬間、リリアが立ち上がって歩み寄り優騎の顎を蹴り上げた。

「がぁ!」

 そのまま、後ろに倒れ目を回す。

「口に気をつけなさい。もう、私の騎士なのだから無礼な口調は許しませんわよ」

「わるかったな‥‥敬語は‥‥不得意なんでな」

「なら、少しでも努力なさい。これは返しますわ」

 乱雑に優騎の上に放り捨て上手く溝に鞘に収まった剣が落下する。

「ごふ――てめぇ、わざとか」

「あら、わざとじゃありませんわ。たまたまですわ」

 絶対わざとだとわかるような微笑をたたえて王座に座り直す彼女を見据えて優騎は話を元に戻す。

「で、刑罰をなかったことにした理由が俺の剣と関係あるのかよ?」

 姿勢を下にただし、優騎は単刀直入に問いただす。

 数秒ためらいを見せたあとアリシアとは逆に控えた神官らしき装束に身を包んだ老人男性が一冊の本を優騎に手渡した。

「んだよ、こいつは?」

「『暗黒時代』、この世界が戦争の大火に見舞われた時代を記した書物ですわ」

「暗黒時代‥‥」

 それは傍らに置いた剣が教えてくれた内容。

 そして、あの観た映像。

「その時代、各国は自らの土地を奪おうと躍起になっていましたわ。多くの国や民がその戦争の被害によって死亡しましたわ。とくに、その戦争時代にはモンスターまで領土を獲得しようと自分の土地から出てきて人間を襲って殺した時代でもありましたわ」

「そりゃぁ、こええ話だな」

「そんな時にあるひとりの放浪の騎士が現れましたの。透明な剣を携えた謎の騎士ですわ。あるときは傭兵でありあるときは急ごしらえで雇われた騎士である謎の放浪者。彼はいくつもの戦地を駆け、戦争を終結に導いたとされてますわ」

「なに?」

 戦争を終結という言葉に疑問を感じる。

 優騎が見た映像では彼は最後無残な死を遂げていた。

「どうかなさいましたの?」

「いや、終結って本当か?」

「ええ。最後の戦争、このローズ大国とモンスターを使役、所有する国家『アルツランド神皇国』の大戦を期に終止符を打ったとされてますわ。同盟をかっこに結ばせてと。現代でもその成果が残って戦争を禁止する条例が各国でなされてますわ」

「そうか」

 妙な引っ掛かりはあったが書物にもそういう記載がぴらぴらっと見たが記されていた。

「そこで、私が気づいたのはその剣はその放浪者が使っていた剣と同じということですわ。あなた、その放浪者の子孫か何かではありませんのかしら?」

 優騎はガテンが言った。

 彼女が刑罰を無効にしたのはそういうことかと。

「なるほど。俺がその時代の英雄の子孫なら無礼はやめにしようってわけか。だけど、俺はその子孫じゃないしこの剣がその時代の剣かどうかは俺にはわからない」

「あら、そうなんですの。でも、その剣はあなたにしか使えないのは明白ですわよね」

「あん?」

「先程アリシアたちにその剣を使わせてみたところ剣を振るう際に手が凍結されますのよ。けど、あなたはその剣を平然と使ってましたわ」

「凍結だぁあ?」

「ええ。その剣をあなた以外使えませんのよ」

 どういうことだろうか。

 優騎は首をかしげながら剣を見つめる。

「うそだろ?」

「こんなことで嘘ついてなにか得しますの私が?」

「いや、しねえな」

「まあ、ともかくそういうことですのよ。だから、もしあなたがその英雄の子孫ならいま治安の悪くなってるこの世界を救ってくださる英雄になるのではと期待したんですけれど期待はずれでしたわね」

「期待はずれで悪かったな。じゃあ、また閉じ込めるか?」

「いえ、あなたには再度その奇妙な剣を使って国の騎士として貢献していただきますわ。どうやら、この国のはずれにあるひがしの村がモンスターに襲撃されたみたいですのよ。そうの偵察にあなたを推薦致したいと思いますの」

「はあ? なんだよ。仕事をやらせるために仮釈放ってか?」

「いえ、完全な釈放ですわ」

「それは随分と優しい対処で不気味だぜ」

「あら、私は優しくってよ」

「どこがだよ」

「何か言いまして?」

にこやかな笑みを向けた彼女の目はあきらかに笑ってはいないことが見え見えの殺気が漏れていた。

「いや。でも、その偵察あんたのお抱え騎士なら大勢いるだろうからそいつらに行かせりゃァいいだろう。わざわざ犯罪を犯した俺なんか活かすんじゃなくってさ」

 その問いにアリシアが答えた。

「それは無理な相談です。貴様がグランド大国の騎士ともめたことで他の騎士はグランド大国側との小規模な戦争を食い止める旅に出ています。ほかにも、町や村がモンスターに襲われたという被害報告を受けそっちに人員がさかれてます」

「なるほど、猫の手も借りたいってやつかよ」

 優騎は大きく息をつく。

「金は出るのだろうな?」

「ええ、仕事をこなせば衣食住やお金は保証しますわよ」

「なら、いいさ。従ってやる。この町を知るためには金や住む場所やどうにも職は必要みたいだしな」

 じっとしていてもしゃーない。

 そう結論が出される。

「では、アリシア。彼を騎士の宿舎に案内を。そこで任務の説明をしてあげなさい」

「ん? まてよ。今からか? もう外は暗いんだぜ。少しは休ませろよ」

「休みなんてあなたにはありませんわ」

「じょ、冗談じゃねえ! 俺はさんざん戦ってクタクタで――」

「こいキジョウユウキ! 王女の命令だ!」

「まて、俺に休みを――クソ王女がァああああ」

 優騎の絶叫が王室の間に響きながら遠のいていきアリシアに連行されてくのであった。

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