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Vtuberになったら妹が別箱の同期だった。  作者: 霧國


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第12話 同期仲を深めよう③

 全員揃ってのダーツ勝負を終えた俺たちは、次の遊びを探して移動を開始する。

 5人でうろうろと歩き回る中で、ピナがあるコーナーの前で足を止めた。


「わたし、あれやってみたいですっ!」

「あれって……うわ、何だあのでかいボール」


 ピナが指差した先にあったものを見て、リュウガが驚きの声を上げた。

 そこにあったのは、小学生の身長ほどの直径がありそうな、巨大なバレーボールだった。


「"でっかいバレー"……そのまんまですね。わたくしは少し休憩したいので、4人で楽しんでくださいな」

「おっけー、んじゃチーム分けしよっか。ぐっとっぱーでほい! もっかいほい!」

「綺麗に男女で分かれたな」

「みーちゃん、上着をお預かりしますね」

「ありがとゆきぴ、お願いね。行くよぴなち、2人で男どもをぼこぼこのめこめこにして吠え面かかしてやろーぜ」

「はいっ、がんばります! がおーっ!」

「謎に殺意がたけぇし、そっちが吠えるのかよ!?」

「お手柔らかに……俺たちはコートの奥側に行こうか」

「みなさん頑張ってくださいねー」


 それぞれのチームに分かれ、ネットを挟んで向かい合う。


「サーブはウチらからねー。あっ意外と軽ぅ……いよいしょっ!」

「ちょっ、でかいボールが落ちてくるの割とこえぇ……! てか打ち方わからな……わっ、と、と……!?」

「とりあえず上に弾いて向こうのコートに落とせばいいいんだ、ナイスレシーブ! それっ」

「おーらいおーらーい、ラストはいっけぇバレー部エース!」

「おまかせくださ──ってあぁっ!? 跳ぶのが速すぎましたーっ!?」

「ぴなちどんまーい。ボールめっちゃフワフワ飛ぶからしゃーなし」

「次はこっちサーブか。リュウガ、やってみるか?」

「あぇっ!? わ、わかった……うおりゃっ!」

「ないっさー」


 サイズ故の威圧感と不規則な軌道を描く巨大ボールと戯れた後は、オーソドックスなテニスのコーナーにやってきた。


「し、シラユキさん、一回バトンタッチ……疲れた……!」

「ふふ、はぁい。全員分の飲み物を購入しておきましたから、水分補給はしっかり行ってくださいね」

「あ、ありがとうゴザイマス……」


 ミュウとピナには大分慣れてきたのに、シラユキに対しては未だに少し畏まってしまうようだ。自分から話しかけられるようになっただけ圧倒的な成長を感じる。

 スポーツドリンクのペットボトルを手にベンチに座り込んだリュウガに、ミュウがけらけらと笑い声をあげた。


「がっくんひ弱~。同い年どころかいっこ下のガールに体力で負けるってどーなん?」

「ちょっと前までバリバリ運動部だったやつと、元引きこ…………っ、いや、まぁ……てか、むしろミュウは何でそんなピンピンしてんだよ!?」

「現役ギャルなめんなって話よ。こちとら毎日遊び倒すために身も心もバッチバチに鍛えてんの。いやごめん毎日は盛った」

「なんで盛ったんだよ……」


 大きな溜め息を履いて項垂れるリュウガ。そんな彼にピナが屈託のない笑みを向けて、


「がっくんさん、それならわたしと一緒にトレーニングしませんかっ? まずは朝のラジオ体操から!」

「おー、いいじゃん。ついでにウチも参加しちゃおっかな」

「うえぇ? なんでそんなこと……」

「だって……Vtuberさんって3Dをゲットしたら、ダンスしながら歌わないといけないですし……今の内から、体を動かすことに慣れておいた方がいいと思いますっ」

「ナイス囁き声の配慮……。確かに結構ダンスしてる人多いけど、それって別に強制ってわけじゃ」

「いや強制だよ? 何故ならウチが踊らせるから。もう選曲は初めてるから、ぜーったい二人でめちゃかわダンスのショート動画投稿しようね、がっくん♡」

「おれが知らない内に恐ろしい計画が進行している……っ!?」


 わいわいと盛り上がる学生組を遠目に眺めながら、覚束ない手つきでラケットを素振りするシラユキに声を掛ける。


「あんなこと言ってるが、シラユキはダンスに興味あったりするのか?」

「もちろんありますよ。せっかくVtuberになれたんですから、やれることはできる限りチャレンジしたいですし」


 そう言って、シラユキは実に楽しげな笑みを浮かべた。


「実はもう楠さんを通して、ボイストレーニングとダンスレッスンを受けられる手筈を整えていただいているんです。隊長さんも一緒にどうですか?」

「意欲に溢れてるな。そう言えば、妹が最近ボイトレとダンスレッスンで忙しそうにしてたな」

「『Lumina”Stage”』と言うだけあって、ライブパフォーマンスに力を入れていらっしゃいますからね。ふふ、”お兄ちゃん”として負けてはいられないのでは?」

「競ってるわけでもないし、その分野であいつに勝てるとは思わんが……前向きに検討しておくよ」

「はいっ♪」


 特に歌に関しては、美冬だけでなくミュウからも度々誘われているし。

 最近のV界隈ではデビュー一か月や半年記念などで、既存楽曲をカバーする”歌ってみる動画”、人によってはオリジナル楽曲を投稿するのが主流となっている。

 もちろんそうでない人もそれなりに居るが、新規層に訴求するための手段として、あるいは自己表現の一環として有効なことは間違いない。


「おーい、お嬢さん方。おしゃべりもいいが、そろそろゲームを始めよう」

「あいあーい。そんじゃもっかい、ぐっとっぱー」

「ほいっ! わっ、今度はゆきちゃんとですねっ! 頑張りましょう!」

「ふふ、よろしくお願いしますね、ぴーちゃん」

「こっちはたいちょーか……たいちょーかぁ」

「露骨に残念そうな顔をするな、普通に傷つくから……」


 恨むならあそこでパーを出した自分を恨め。


 ちなみにテニスは普通に負けた。ピナの運動量の暴力はもちろん、未経験というシラユキも普通に上手かった。

 元病弱故に持久力に問題があるだけで、運動神経はいいんだろうな。これはダンスの方も期待が持てそうだ。


 テニスの次は、リュウガの希望でゲームコーナーのゾンビシューティングをプレイすることになった。

 2人同時プレイの筐体の前にリュウガと並んで立ち、拳銃型のコントローラーを構える。


「前にやった1on1だとキャラコンの差で負けたけど、単純なエイムなら負けねぇぜ……!」


 FPSとガンシューティングは結構感覚が違うんだが……まぁ、気炎を吐くリュウガに水を差すこともないか。

 こちらも正々堂々迎え討ってやろうじゃないか。


「うおおおっ! これっ、結構むずっ……!?」

「ミスっても焦るな、余計にエイムがブレるぞ」

「わかってるよ! てか、隊長は何でこっち見る余裕あるんだ……!?」

「慣れだよ慣れ。グレは温存しすぎず集団に遠慮なく使え、満遍なく倒そうとせずに一方向ずつ確実に処理しよう」

「り、了解っ! あ、くそっ、また外した……!」


「……この調子だと、リュウガさんが隊長さんを超える日は遠そうですねぇ」

「そっちの方がコンテンツ的には美味しいんじゃない? がっくん的には不本意そーだけどね」

「二人ともすごく上手ですっ! がんばれー!」


 シラユキたちの寸評とピナの声援を背にゲームは進み……結果として、俺の圧倒的勝利で幕を閉じた。

 とは言え本人の宣言通りエイムはよかったし、もう少しゲームに慣れていればまた違う結果になったかもしれないな。


 その後もアーチェリーやエアポリン、バッティングやゴーカートなど様々な遊びを堪能した。

 エアポリンでは楽しく写真撮影をしたり、バッティングでは俺がついムキになってホームランを打てるまで粘ったり。

 シラユキがゴーカートにて、普段のお淑やかさからは想像もつかない暴走ぶりを見せて、ミュウから「たいちょー、これからも運転よろしくね」と真剣に言われたり。

 学生たちを見守るべき俺たち年長者も遊びに熱中してしまう、笑いあり波乱ありの実に楽しい時間――……しかし、そんな時間も永遠には続かないもので。


「……もうこんな時間か。そろそろ帰ろうか」

「そうですね。学生の……特に中学生のぴーちゃんを、夜まで連れ回すわけにもいきませんし」

「えーっ、もうですかぁ……? うぅ、まだ皆さんと遊んでたいのに……」


 へにゃり、と悲しそうに眉を顰めるピナに、おいおいと泣き真似をしながら抱きついた。


「ふにゅっ!?」

「うわぁぁぁん! ウチもさびしいっ、帰りたくなぁい! 皆で遊ぶの楽しすぎて、カラオケ忘れちゃってたしぃ!」

「あっ……お、おれもコラボグッズ買うの忘れてた……。つい熱中しすぎた……!」

「う、うぅ……みなさぁ~ん!!」

「ちょ、おれの方に来ないで……!」


 最後までわちゃわちゃと騒がしい年少組に、俺とシラユキは顔を見合わせて小さく笑う。

 最初の予定が頭から抜け落ちてしまうほどに、全員夢中で楽しんでいたということだろう。もちろん俺たちも同じ気持ちだ。


「大丈夫ですよ、皆さん。何もこれが最後の機会というわけでもないんですから。また5人で一緒に来ましょうね」

「次はしっかり計画を立てて来ようか。全員思う存分楽しめるようにさ」


 尚も寂しそうにするピナたちを宥めながら、後ろ髪引かれる思いを振り切って、俺たちは店の外へと足を踏み出したのだった。

 足早に、朝と同じ並び順で車内に乗り込んで車を発進させる。

 ピナの親御さんが迎えに来る予定になっており、社用車も返さなければならないので、一度事務所まで戻る必要がある。


「今日は本当に楽しかったですね。わたくしとしてはやっぱりゴーカートが爽快でしたねぇ」

「あんなゆきぴ初めて見たね……。ウチはやっぱダーツ、あーエアポリンも捨て難いなぁ。ねね、撮った写真待ち受けにしよーよ。配信用じゃなくて普段使ってる方!」

「まぁ、素敵です♪ ぴーちゃんも……あら?」

「およよ、ぐっすり寝ちゃってるねぇ。きもちよさそーな寝顔で……くぁ

。やば、ウチまで眠くなってきちゃった」


 どうやら最初に寝落ちしたのはピナだったらしい。いくら元気盛りの元運動部とは言え、一日中全力で動き回れば限界も来るだろう。


「眠たかったら寝てもいいよ。リュウガもそろそろ限界っぽいしな」

「……うぇっ? な、なに?」

「何でもないよ、事務所着いたら起こすから寝てな」

「わ、わかった……」


 返事をするなり速攻で寝落ちするリュウガ。チラリとバックミラーを覗き見れば、シラユキに寄り掛かってミュウも寝てしまったらしい。

 行きの車や先程までとは打って変わって、寝息だけが微かに響く静かな空間におかしさが込み上げてくる。

 シラユキも同じことを思ったのか、くすりと小さな笑みが聞こえた。


「皆さん寝てしまいましたね。隊長さんは大丈夫ですか?」

「眠いことは眠いが、運転中だしな。シラユキこそ声がふわふわしてるぞ」

「あら、バレちゃいましたか。こんなにたくさん体を動かしたのは、生まれて初めてかもしれません……ふわぁ」

「シラユキも寝ていい、と言いたいとこだが……俺が寝ないように、もう少し話に付き合ってくれると助かる」

「ふふ、もちろんです。何をお話しましょうか――……」




§




 それから数日後の昼下がり。

 Twitcherの『エコーリンク』公式アカウントに――そのおよそ一時間後に、『LuminaStage』の公式アカウントに、同じタイトルがつけられた投稿があった。



 ――【新人ライバーデビューのお知らせ】

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