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Vtuberになったら妹が別箱の同期だった。  作者: 霧國


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第11話 同期仲を深めよう②

「遊ぶ前に改めて注意事項を確認しとくぞ。怪我に気を付けることと、他のお客さんに迷惑をかけないことは前提として――声量には十分注意するように!」

「「「「はーい……」」」」


 受付と支払いを終えたところで、楠さんからも言われていた注意事項をもう一度、抑えた声で全員に通達する。返事の声も自然と小さくなる辺り、皆気を遣っているようだ。


「まだデビュー前だけど、身バレは気を付けるに越したことはない。特に名前を大声で呼んだりは控えよう。人が多いと、どこで誰に聞かれるかわからないし」

「わかりまぁ……した」

「ぴなちえらい! ウチも気を付けんね」

「了解っす……そもそもおれ、大声出すのそんな得意じゃないし」


 いつものように大声を上げかけたピナが慌てて声を潜め、シラユキが頷き、リュウガも仮面越しに小さく手を挙げた。

 もっとも、あまり神経質になる必要もない。


「とはいえ、今は夏休み真っ只中でそこそこ混雑してるし、多少の声は周りの喧騒にかき消される。アバターと俺たちの容姿は大分違うし、マイクを通した声と生の声って結構違う。今日この日に来店した客が俺たちのリスナーで、デビューまでの2週間俺たちの声を覚えてる……なんて奇跡はそうそうない」

「「「…………」」」

「おい年少組、何だその怪訝な目は」

「隊長さんが”奇跡”と称しても、あまり説得力がない気がしますわね」


 ……正直俺もちょっと思った。

 実の妹が、別の事務所から同じタイミングでデビューする同期で、更にその名前が同じ”カミシロ”……。果たしてどちらが”奇跡”なのか。


 閉口する俺を見て、シラユキがくすりと微笑んだ。


「ふふ、少し意地悪でしたね。ともあれ、注意は必要ですが神経質になりすぎることもありません。隊長の言った通り怪我には気を付けて、皆で楽しみましょうね」

「「「はーい!」」」


 シラユキの総括に、さっきよりも少し明るく返ってきた声に思わず苦笑する。

 まぁ少し抜けているところさえあれど、分別のない面子じゃない。危ない時は俺とシラユキがフォローすればいいだろう。


 今日の目的は、アミューズメント施設内にある、様々なスポーツやゲームを遊び放題で楽しめるレジャー施設だ。

 数日前にフリータイムで予約をしていたので、全員疲れ果てるまで思う存分楽しめる……その前に、だ。


「がっくんさー、そろそろそのフード外した方がいんじゃない? ただでさえめっちゃキョドってんのにそんなカッコしてたら、警備員呼ばれても文句言えないって」

「キョドっ──し、仕方ないだろ初めて来たんだし! そこまで言わなくたって……え、そんな不審者スタイル?」

「うん」

「くぅっ、揶揄うとかじゃなくて真顔で詰められるのキツい……! わ、わかったよ……」


 ついにリュウガもしっかり目を合わせて話してくれるようになったか、感動するなぁ……。




§




 まず最初は全員で楽しめるものをということで、ダーツをプレイすることになった。

 初心者も多いので簡単なカウントアップルールで、1人3回を1ラウンドとして2ラウンド勝負だ。


「わたくしダーツを実際にやるのは初めてで……よろしければ、基本的な投げ方から教えていただけますか?」

「お、おれも教えてほしい、かも……」

「わたしもおねがいします」

「もちろん、一回俺がやって見せようか。一番スタンダードな持ち方としては、こうして3本の指で持って……こう!」

「「「おぉ~」」」


 控えめな歓声の中投げ放たれた矢は少し外側によれて、15のダブルに突き刺さった。


「あら、15の場所に刺さったのに30点なんですね?」

「そそ。あの外側の枠はダブルって言って点数が2倍になんの。もいっこ内側がトリプルでこっちは3倍になって、ど真ん中が50点! んで1人3回投げて合計点を競うってワケ。おけー?」

「お、おっけー! なるほど、一番点数が高いのは20のトリプルだけど、めちゃくちゃ狭いからみんな真ん中を狙うのか……」

「理解が早いな。……ほい、3投目、次は誰が投げる?」

「さっきは中断されちゃったので、もう一回じゃんけんで決めませんかっ? 今度はゆきちゃんも!」

「いいね、さんせー。たいちょーはちょっとお座りしててもらって……じゃーんけん!」

「俺は犬か?」


 聞いちゃいなかった。ぽん、ぽんとあいこを繰り返すこと数度、ピナ→リュウガ→シラユキ→ミュウの順番となった。


「いっきまーす! ちょいやー!」

「おっしー! ギリプルの外かー」

「いい投げっぷりだな、経験者か?」

「初めてです! たいちょーさんのフォームを見てたら大体わかりましたっ!」

「す、スポーツマンガの天才キャラみたいなセリフ……!」


 流石は元運動部のエースだけあって、身体の扱い方に習熟しているらしい。

 恐れおののくリュウガを他所に、2回目、3回目と投げ……最後の1回で見事にプルを射抜いてみせた。


「やったぁ~……あっ、大声ダメなんでした……」

「そのぶんボディランゲージで喜べばいーじゃん! ほらぴなち、うぇーい!」

「うぇーい! ゆきちゃんも!」

「ふふ、是非♪ うぇーい」

「……混ざらなくていいのか、リュウガ」

「混ざれるわけねぇだろ……!」


 俺もそう思う……あの3人の間に割り込もうもんなら、どこからともなくヒットマンとか湧いてきそうだ。

 少し居心地が悪そうにしながら、こそこそとポジションに付いたリュウガがダーツを構える。覚束ない手つきで放たれた矢は……残念ながら、ボードに辿り着くことなく地面に落下してしまった。


「うぇっ!? マジか……」

「狙いは悪くなかったけど、もうちょい強めに投げた方がいいぞ」

「ちょいちょいがっくーん、JCにパワーで負けるのはちょーっとダサくなーい?」

「くそっ、ミスったら絶対煽られるから見てない内に済まそうと思ったのに……! てか一つしか違わねぇし、運動部と帰宅部で比べるなよ!」

「がっくんのあっさい企みなんて、コミュ力つよつよギャルのミュウちゃんにはお見通しよ。ほらほら早く2回目投げなって! がんばれ♡ がんばれ♡」

「……う、うおおおっ!」

「照れんなよ思春期」

「照れてねぇしっ! ……あ、やべっ」

「がっくんへったくそー」


 記録的な大暴投にミュウがけらけらと笑い、そんな彼女を恨みがましそうに見るリュウガ。

 そのやり取りで余計な硬さが解れたのか、リュウガの最後の一投はプルのど真ん中に突き刺さった。

 やはりこの2人は案外相性がいいのかもしれないな……まぁ、リュウガが遊ばれてるだけかもしれんが。


 続けてラインの上に立ったのは、やたらキリッとした表情のシラユキだ。

 ダーツを真っ直ぐに構え、片目を瞑って至極真剣に照準を合わせている。

 完全に未経験という話だったが、この気迫はもしかすると…………あっ、壁に当たった。


「あら……うーん、難しいですね」

「まっ、ボードのとこまで飛んだだけがっくんより上だよね」

「そこでおれを引き合いに出す必要ないだろっ?」

「初めてで飛ばせただけ凄いよ。今ので少しは感覚掴めただろう?」

「確かに、何となくわかった気はします……。真っ直ぐ狙い通りに飛ばすための、コツなどはありませんか?」

「はいはいっ! ぎゅぎゅぎゅーって狙いをつけて、ひゅおんって飛ぶように投げるといいと思いますっ。あっ、あと投げるのに合わせて手首をぐいんってするのもいいかもっ」

「ぴーちゃんは可愛いですねぇ」

「それでいいのか……?」


 本人にとってはよかったらしい。どうにか0点を回避したシラユキの表情は実に晴れやかだった。

 そんな彼女とハイタッチを交わし……バサッと上着を脱ぎ捨ててダーツを手に歩き出す影が一つ。


「そして最後はウチの出番……真打登場ってワケよ」

「いやじゃんけんで全負けしただけだろ。てかこの上着どうすりゃいいの……?」

「終わるまで持ってて!」

「なんでおれが……」


 上着を手に呆然と立ち尽くすリュウガを放って、涼しい表情でダーツを構えるミュウ。

 実にリラックスした雰囲気のまま、流れるように矢を放ち……当然のようにトリプルへと突き立った。


「「「おぉ~!?」」」

「すげぇな……。かなり練習したんじゃないか?」

「まっ、今時ギャルの経験ってやつよ。何を隠そう、ウチの会員ランクはプラチナなんだぜ」


 そう言ってニヒルに笑ったミュウは次々と矢を放ち……俺たちの喝采を浴びながら、圧倒的大差で勝利を収めたのだった。

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