ドラゴンなのか?
Zhaerysは眠りについたが、Kaelianは寒さのせいでなかなか眠れず、彼女の近くに横になることを思いついた。
(体はかなり温かいな。どうやら冷血動物ってわけじゃないらしい。低体温症で死ぬわけにはいかないし、もう少し近づいても怒らないだろ)
結局、Kaelianはドラゴンを抱きしめるほど近づき、胸に顔を押し当てた。力強い心臓の鼓動を感じ、顔には温かな感触が伝わってきた。それから、手を温めるために手袋を外した。
(はあぁ……すごく気持ちいい。暖房みたいだ……なんて……心地いいんだ)
どうにか二時間ほど眠ることができた。Zhaerysは彼が近くにいることに気づいていたが、特に気にした様子はなかった。
目を覚ましたKaelianは、目を開ける前に、何だかさっきまでとは違う、もっと小さなものにもたれかかっているような妙な感覚を覚えた。
(えっ、どこに行ったんだ?)
目を開けると、そこにいたのはドラゴンではなく、人間の女性、あるいは人間に近い姿をした女性だった。Kaelianの顔はその女性の肩にもたれかかり、右手は彼女の腕の上に置かれていた。驚くべきことに、彼は反応する前になんとか冷静さを保った。
(えっ? えええええええええっ!? これって……Zhaerysなのか?)
頭の上にはドラゴンの耳が残っており、翼と尻尾もあった。しかし、Kaelianはまだ気づいていなかったことがあった。彼女に触れているにもかかわらず、アレルギーによる痛みも不快感も、まったく感じていなかったのだ。
(僕……触ってる? 彼女に触れているのか? どうしてそんなことが可能なんだ?)
(Kael、一番重要な疑問はそこじゃないと思うけど……どうして人間の姿をしているのかしら……?)
Kaelianは慎重に起き上がって彼女から離れた。すると、ちょうどそのとき、Zhaerysはぎゅっと目を閉じ、それから目を開けた。起き上がると、あくびをしながら両腕を伸ばした。
「何年も眠っていなかったかのように、ぐっすり眠れたわ。どれくらい時間が経ったの?」
Kaelianを見て立ち上がると、片手を腰に当てて尋ねた。
「もう一度試す準備はできた?」
Zhaerysの髪は黒く、腰まで届く長さで、あちこちに緑色の毛束が混じっていた。
彼女は、胸元がひし形に開いた、体にぴったりとしたノースリーブの黒い服を着ていた。金属部分のあるロングブーツを履き、ポーチの付いたベルトを締め、金属の装飾が施された指なしのガントレットを着けていた。
肌は温かみのある濃い褐色で、鋭い牙と二股に分かれた舌を持っていた。その姿にKaelianはすっかり見とれてしまったが、それでも尋ねた。
「ど、どうして……人間の姿をしているんだ?」
「ただ姿を変えただけよ。これから一緒に旅をするんだから、人間の姿になっていたほうがいいと思ったの」
(時間が経つたびに、あの子は……ドラゴンじゃないんじゃないかって気がしてくるわ)
「でも……人間にはそんな耳もないし、翼も尻尾もないよ」
KaelianはZhaerysの体格に気づいた。身長はほぼ二メートルあり、非常に引き締まった体つきで、二十歳くらいの女性に見えた。さらに、豊かな胸や腰、尻の大きさにも、つい目を向けずにはいられなかった。
Zhaerysは答えた。
「ああ、私の変身は完璧じゃないの。Narysを使って小さくできるのは体の大きさの一部だけで、残りは自分で縮めなきゃいけない。だから、耳と翼と尻尾は残さざるを得なかったのよ。そうしないと、巨人みたいになったり、太ったり、歩けないほど胸が大きくなったりするからね」
彼女は耳を左右に倒し、翼で体を覆い、尻尾を腰に沿って巻きつけた。
「こうすれば、耳は髪の一部みたいに見えるし、翼はコート、尻尾はベルトみたいに見えるでしょ? どう?」
「耳だけはそれでなんとかなりそうだけど、残りは後で考えよう。それより、その服はどこから出したんだ?」
彼女は自分の服を見下ろしながら答えた。
「お母さんのよ。特定のものなら吸収して、自分の体の中にしまっておけるの」
「お母さんの? お母さんも姿を変えられたのか?」
「ええ。人間と一緒に過ごすのが好きだったからね。とにかく、ここから出なきゃ! 準備はいい!?」
「う、うん」
(……裸の姿も見てみたかったな。こんなことを考えるのは変かな?)
(むしろ、そう考えるのが自然だと思うわ。人間の姿があんなふうになるとは、私も思わなかったけどね)
(本気で言ってるのか? 黒い鱗の黒いドラゴンだぞ。何を期待してたんだ? 白雪姫でも出てくるとでも?)
Zhaerysはドラゴンの姿に戻り、Kaelianは再び手袋をつけてから、その背中に乗った。
「……Zhaerys、少し違うやり方を試さないか? 僕が三と言ったら、翼を中間の位置に保ってくれ。そのタイミングで僕が突風を起こす」
「分かったわ、人間!」
「僕の名前はKaelianだって言っただろ。いち、に、さん!」
Zhaerysはすでに跳び上がっており、合図を聞くと翼を羽ばたかせた。タイミングは完璧ではなかったが、二人を浮かび上がらせるには十分だった。
「いち、に、さん!」
二人は十分な時間、空中にとどまることができた。しかし、ある羽ばたきの角度が原因で前進し始め、次の羽ばたきで、壁に向かってさらに速く進んでしまった。Zhaerysが叫んだ。
「曲がって!」
「僕が!? 君が主導権を握ってるんだろ!」
二人は壁に激突して地面に落ちた。二人とも眉をひそめ、数秒間、互いの顔をじっと見つめた。その後、Kaelianはどうすればいいのか説明することになった。
「尻尾があるだろ。曲がりたい方向へ尻尾を動かすんだ。それに、翼が補助できるように体も傾けないと」
再び挑戦すると、二人は数分間、円を描くように飛び続けた。だが、Zhaerysはここから出たいあまり、次第に焦れ始めて言った。
「いつまでこれをやらなきゃいけないの? もうお腹が空いたわ! 昨日の夜だって、ヤギを最後まで食べさせてくれなかったじゃない!」
「失敗せずに飛べるようになるまでだよ。出口がこんなに近いのに、落ちたくないからね」
Zhaerysは目を細め、鼻を鳴らしながら頭を振った。それから後ろを振り返り、自分の尻尾を見た。
(尻尾の先を回転させることはできるけど、何のためにあるのか、今まで知らなかったわ。これをやったらどうなるのかしら?)
尻尾を左に回転させると、体全体が急角度で旋回した。その回転の勢いでKaelianは危うく落ちそうになったが、Zhaerysは新たな発見に興奮した。
「今の見た!?」
「やる前に教えてくれよ!」
「はいはい……さあ、ここから出るわよ!」
背中を反らし、尻尾を持ち上げて上昇を始めた。羽ばたくたびに出口へと近づき、Zhaerysは興奮して咆哮を上げた。しかし、あまりにも真っすぐに上昇していたため、Kaelianはしっかりとつかまっていられなかった。それに、羽ばたくたびに、Kaelianの体はますます下へと押しやられていった。
「止まってくれ、落ちそうだ!」
「何ですって!?」
ついにKaelianは滑り落ちて落下し始めた。そのため、Zhaerysは空中で自動的に動きを止め、仰向けになって落ち始めた。頭を動かして振り返ると、Kaelianが虚空へと落ちていくのが見えた。
(……クソッ! もう少しだったのに。助けなきゃ。そうしないと、二人ともここで死んでしまう)
Zhaerysは体勢を立て直そうとし、翼をできる限り折りたたみ、尻尾をまっすぐに伸ばして尾びれを閉じた。その結果、ものすごい速さで急降下した。冷たい風が目を傷つけるため、耳で目を覆った。
ZhaerysはKaelianを捕まえると、自分の胴体に押しつけ、前足と後ろ足で守るように抱え込んだ。そして翼を広げ、Kaelianは落下を減速させるために絶えず風を起こした。しかし、二人はあまりにも速く落下していたため、地面への激突を避けるには不十分だった。
Kaelianが叫んだ。
「羽ばたいてくれ!」
Zhaerysはそうした。Kaelianは彼女の翼から全力で強烈な風を起こし、その勢いで二人は数十メートル上空へと押し上げられた。勢いを最大限に活かしてさらに高く上るため、Zhaerysは人間の姿に変わった。数メートル先に、壁の穴が見えた。
「私の巣よ! 落ちるときは気をつけて!」
「えっ!?」
ZhaerysはKaelianを穴の中へと放り投げた。穴の中に落ちたKaelianは床を転がり、あちこちに擦り傷を負った。一方、Zhaerysは口を開けて前方にプラズマを放ち、その反動で壁へと飛んでいった。爪で壁をつかむと、緑色の光線が全身を走った。そして、凄まじい力で跳躍し、足場にしていた壁を破壊しながら、その勢いで巣までたどり着いた。
着地すると、彼女は笑みを浮かべ、両手をぎゅっと握りしめた。
「私って最高ぉぉぉ!! えへへ、私がここから出してあげるわ!」
傷だらけのKaelianを見ると、ゆっくりと近づいていった。
「……ほら、もう起きなさいよ。ここから出たいんだから」
「ぐ……」
彼女は額を掻きながら、独り言のようにつぶやいた。
「力を入れすぎたのかしら? ううん、あんたが弱すぎるだけね」
Kaelianを仰向けにすると、その前にしゃがみ込み、爪で自分の手首を切った。青紫色の血が、Kaelianの口の中へ直接滴り落ちた。
Kaelianの瞳孔が縮み、口を閉じようとしたが、Zhaerysに顎をつかまれ、閉じるのを阻まれた。やがて傷口がふさがり、血が流れなくなると、彼女はKaelianの口を閉じさせて言った。
「飲み込みなさい」
Kaelianは視線で拒んだが、Zhaerysは歯をむき出しにして言った。
「飲み込みなさいって言ってるの!!」
ほかに選択肢もなく、Kaelianは血を飲み込んだ。するとZhaerysは彼を解放し、Kaelianは思った。
(……なんでこんなことをさせられたんだ!? ……でも、正直……結構おいしい)
Kaelianの傷は自動的に治り、Narysもその大部分が回復した。
「……ど、どうしてこれで治るって分かったんだ?」
「え? 知らなかったわ。でも、直感がそう告げていたの」
「ど、どうして最初からそうしてくれなかったんだ?」
Zhaerysは立ち上がり、両手を腰に当てた。
「誰にでも自分の血をあげると思ってるの!? それに、自分で治せるからって痛みを感じないわけじゃないんだからね。二度と期待しないでよ、人間」
「Narysを分けてくれるだけじゃダメだったのか?」
「私のNarysは、そのほとんどが血の中に蓄えられているから、そんなことはできないのよ」
KaelianはZhaerysのNarysと、自分の胃の中にある血に意識を集中させた。
(……確かに、彼女の血には膨大な量のNarysが含まれている。自然に体の周囲を取り巻いているNarysより、血の中にあるNarysのほうが多い。あれほど素早く姿を変え、傷を治せるんだから、栄養も極めて豊富で、途方もない量の酸素を運べるはずだ。間違いなく魔法の血だ)
Zhaerysは目を閉じて言った。
「……実は、この姿ならもっと効率よく、こんなに痛い思いをせずに血を分けることもできるんだけど、今になって思いついたのよ。とにかく、文句を言ってないで立ちなさい! Menry!」
Kaelianは身を起こしながら尋ねた。
「え? Menryってどういう意味だ?」
彼女は少し間を置いてから、笑顔で答えた。
「ドラゴン語で『友達』って意味よ!」
Kaelianは嬉しそうに答えた。
「ドラゴンにも言葉があるなんて知らなかった! 教えてくれないか!?」
「ええっと、もちろん教えてあげるわよ。えへへ」
【実は、Menryは「友達」ではなく、「弱い奴」という意味だ】
Zhaerysは目を見開き、巣の奥にある岩の裏で何かを探し始めた。一方、Kaelianは死んだヤギのところへ歩み寄った。Zhaerysが一部を食べていたものの、肉はまだ十分に食べられる状態だった。
Zhaerysは立ち上がると、何かを袋にしまった。それを見たKaelianが尋ねた。
「何を持ってるんだ?」
「そんなこと、あなたには関係ないでしょ」
Kaelianが目を細めている間に、Zhaerysは再びドラゴンの姿に戻った。Kaelianはその背中に乗り、彼女は前足でヤギをつかんだ。
Zhaerysは跳躍し、出口に向かって飛び立った。
「そんなに体を傾けないでくれ。また落ちたくないんだから」
「だったら、しっかりつかまってなさいよ!」
「どこをつかめっていうんだ!? つかまるのも難しいんだぞ。鞍か何かがあれば……」
「絶対にやめてよ!」
ついに二人は洞窟の空間から脱出し、顔に冷たい風を感じた。Zhaerysは咆哮を上げた。
「やっと出られたわ!!」
しかし、強い気流にあおられて制御を失い、落下し始めた。必死に翼を羽ばたかせて立て直そうとしたが、結局、洞窟の外の雪の中へと落ちてしまった。
「まあ……少なくとも外には出られたね」
Zhaerysは立ち上がり、体を震わせて積もった雪を振り払った。
「それで、次はどこへ行くの?」
「まずは仲間たちに紹介しないとね」
***
ドームの中では、火花とNaeviaが黙ったまま互いを見つめていた。火花は腕を組んでおり、Naeviaは体を覆う毛布を、わずかな力で押さえている。二人の間の気まずさは、Thylrosの高地の高さに匹敵するほど大きかった。
Naeviaが何か言いかけたまさにそのとき、Kaelianがドームに入ってきた。二人は笑顔を見せた。
火花は立ち上がって言った。
「やっと帰ってきた!」
Naeviaは視線を落として言った。
「お、遅かったですわ……何かあったのではないかと心配していました」
火花は片眉を上げて言った。
「ちょっと待って……食べ物は?」
空気の匂いを嗅ぎ、さらに言った。
「……それに、あんた、なんだかすごく変な匂いがする」
Kaelianの背後から巨大な影が差し、その姿をすっぽりと覆った。何かが中へ入ってくるのを見て、二人はすぐに後ずさった。
「後ろよ!!」
Zhaerysがヤギを肩に担ぎ、身をかがめて入ってきた。Kaelianは脇へ退いて言った。
「……か、彼女はZhaerys。これから僕たちの仲間になるんだ」
最初の驚きが収まると、ここまでの経緯とZhaerysの目的について説明した。その後、ヤギの肉でシチューを作り、火を囲んで座り、食事をした。
火花は眉をひそめてZhaerysを見つめていた。それに気づいたZhaerysが言った。
「Menry、この喋るキツネのNarysはすごく美味しそうね。食べてもいい?」
火花の髪と尻尾が逆立ち、すぐに立ち上がった。
「やれるもんならやってみなさいよ! 翼の生えた巨大ネズミ! その前に、あんたの肉の味を試してやるわ!」
Zhaerysが立ち上がろうとしたが、Kaelianは彼女の太ももに手を置いて制止し、仲裁するような笑みを浮かべて言った。
「ええっと……火花を食べるのはダメだよ。少なくとも今はね。でも、非常食として尻尾を取っておこう」
Zhaerysは思わず笑い出したが、火花は自分の尻尾を抱きしめた。
「変なことを吹き込まないでよ!」
KaelianはNaeviaの方を振り返った。Naeviaはぼんやりとした目で、Zhaerysを見つめていた。
「Naevia……大丈夫? どう思う?」
Naeviaは小さな声で答えた。
「そ……それは、怪物ですわ……」
Zhaerysは首を傾げて尋ねた。
「怪物……? それって何?」
KaelianはNaeviaを見て言った。
「怪物じゃないよ。ドラゴンだ。まあ、本人がそう言ってるんだけどね。はは」
会話はひとまずそこで終わった。しかし、Naeviaの意識はZhaerysの体を観察することだけに向いていた。Kaelianの手が何気なくZhaerysの太ももに置かれているのを見ると、胸の奥に深い虚しさが広がり、続いて心臓が激しく脈打った。
そこへ、王女の声が心の中に響いた。
(そのとおり、あれは怪物よ。でも、あなたは小さな雌豚。豚にとって、一口で食べられてしまうような相手は、誰だって怪物なのよ)




