Irethaの日
注意:本章にはセンシティブな内容が含まれています。
太陽は雲に半ば隠れ、差し込むわずかな光も木々の葉に遮られている。森の中で、Irethaは木の近くを掘って根を探していた。
(毎週ここへ来て、ポーションを作るための根や薬草を探している。比較的すぐに見つかるけれど、お祖母ちゃんは一瞬で見つけていた気がする。Irethusの女に共通する才能みたいなものね)
Irethaは根が詰まった袋を手に、森の中を歩く。
(Terniaに住んでいた頃は、いつも植物学の基礎を知っている少年にお金を払って材料を集めてもらっていた。たまにErickに行かせたこともあったけど……あの人は薬草とただの葉っぱの区別もつかなくて、本当にひどかったわね)
歩きながら空を見上げる。
(今は……毎週自分でやらなきゃいけない。誰かにお金を払って任せて、私は一日中Kaelianの世話をしようとも考えたけど……誰もまともに仕事をしてくれなかった。それに……長い目で見たらすごく高くつくし、今となってはそんなの贅沢に思えるわ)
Irethaは村に着くと肉屋へと向かい、売り子の女性に挨拶をしてから卓に数枚の硬貨を置いた。女性は燻製肉を数切れ取って小さな樽にしまったが、Irethaが口を開く。
「ねえ……いつもと量が違うんだけど」
「分かってるよ。値段が倍になったんだ」
「どうして?」
「戦争だよ、あんた。Ragnorysとの戦争さ」
「今度は何が原因なの?」
「去年、目の教団の連中が王国に侵入しようとしただろ。二年前の侵入に加えて、奴らがRagnorysと同盟を結んだからね……Vladmistの連中もとうとう痺れを切らして、宣戦布告に踏み切ったってわけさ」
「RagnorysとArkhenarysの残りの国々との果てしない戦争……これ以上悪化しなければいいけど」
「心配しなさんな。争いは国境に集中してるし、王国の出入りは誰にもできない……Ragnorysの連中から身を守れるって点では安心だけど、その反面……財布には大打撃さ」
「ええ……本当にね」
女性は燻製肉をもう一切れ手に取り、樽の中に入れた。
「ほら、少しおまけしとくよ。小さなKaelもしっかり食べて大きくならないとね」
「ふふ……どうもありがとう」
樽を受け取って歩き出すと、屋台から女性が声をかける。
「それと、私を見るたびに怖がらないでって伝えといてね!」
Irethaは果物と野菜の屋台に向かいながら考える。
(採集の後、毎週少しのRanesと引き換えに村の人たちのためにちょっとした仕事をしている。家の掃除とか、洗濯とか、たまに恋人に贈りたいという特定の花を探したりとか。Kaelには内緒にしてる……診察で稼いだお金だけで生活してると思ってるけど、実際にはひと月の食費の半分を払うのがやっと。別に恥ずかしいわけじゃないけど、これ以上あの子に余計な心配をかけさせたくないの)
Irethaは野菜を買うと荷物を家に持ち帰る。Kaelianは不在だったため、すべてを貯蔵庫にしまい、寝台に横になってため息をついた。
「残りは……六Ran……今月の『貢ぎ物』を払うには足りないわ。もう少し節約できたかもしれないけど……働くために十分な食べ物は常に買っておきなさい、お腹が空いて動けなくなるからって、お母さんが言ってたわね。私は食べる量を減らせるけど……Kaelianはダメ、育ち盛りだもの。あの子が最優先……唯一のね。必要なら自分の腕を切り落としてでも食べさせるわ。ふふ……幸いなことに、あの子はビーツのスープで満足してくれるけど」
Irethaは家々を回ってちょっとした仕事がないか尋ねて歩いたが、この状況では仕事を頼めないと断られてしまう。しかし、Borealだけは引き受けてくれた。
IrethaはBorealの家で棚の上に置かれた剣を磨いている。
(Borealの奥さんは本当に馬鹿な女よ。ポーションの代金を約束した値段で払わせるために、ほぼ毎週のように言い争わなきゃいけない。Borealは毎回、より濃度の高いポーションを必要とするから支払いも増えるけど、お客さんが減ってるから……以前より稼ぎが増えてるわけじゃないのよね)
Irethaは綺麗な水が入った樽から水を汲み、寝室の窓際の椅子に座っているBorealの元へ運ぶ。
Borealが口を開く。
「ん?……あなたは誰かね?」
「Irethaですよ、Borealさん」
「ああ、Irethaか……すまない……わからなかったよ」
Irethaは卓に水を置き、ポケットからHaraの根のポーションを取り出す。
「まあ! ありがとう、あんた。さて、私が取りに……」
Borealは椅子から立ち上がろうとしたが、手足に力が入らず再び椅子に倒れ込んだ。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、うん……痛みがね……」
「早く飲んでください」
Borealはポーションを飲むと、すぐに安堵の息をついた。
「ふう……だいぶ良くなったよ。財布はあの机の上にあるから、そこから代金を取っていきなさい」
「必要ありません。先週、前払いで頂いてますから」
「本当かね?……覚えていないが、とにかくありがとう。息子さんは元気にしているかね? しばらく見ていないが……名前は何と言ったかな?」
「元気です。気にかけてくださってありがとうございます」
Irethaは稼いだ硬貨を数えながらBorealの家を後にする。
心の中で考える。
(本当は二日前にBorealに……というか、奥さんに薬を渡したのよね。でも、実際に渡したのは、色を変えるのに十分な量のHaraの根を入れただけの瓶。
あの人は何年も病気を患っている。私が処方した薬なら、すべての症状を抑えていられるはずなのに、なぜかいつも悪化するの。奥さんは絶対に私を中に入れて、直接薬を渡させてくれない。でも、自分の家を掃除するのは面倒なくせに、すごく怠け者だから、今日みたいな日はBorealがちゃんと薬を飲むようにするために利用してる。記憶も……あまりにも衰えているから、ポーションを飲み忘れているのか、それともそもそも一度も受け取っていないのか、分からない)
Irethaは家路につこうとしたが、その途中で二人の男に出くわした。一人が声をかける。
「Irethusさん。こんなところで会えるなんて嬉しいし、都合がいいですね」
もう一人が付け加える。
「ああ……へへ、都合がいい」
Irethaは完全に真顔で答える。
「……VikとKiv Tasfer……ええ、都合がいいわね。まさか待ち伏せしてたわけじゃないでしょうね?」
Vikはニヤリと笑う。
「いやいや、とんでもない。へへ、それはそうと……『貢ぎ物』は用意できているでしょうね」
「ええ、そうね。はい、これ」
Irethaは袋から硬貨を取り出してVikに渡すが、Vikはそれを見もせずにしまい込んだ。
「足りないな」
「何ですって? いつもと同じ額よ。それに数えもしなかったじゃない」
KivがVikに寄りかかる。
「だからだよ。貢ぎ物の額が上がったのさ」
「上がった!? 約束したじゃない! 黙っててくれる代わりに月十二Ranって。そんな勝手に引き上げるなんて無理よ」
Kivが口を開く。
「最近は何もかも値上がりしてるだろ? だから俺たちもそうしなきゃならないのさ」
Irethaは目を細めて答える。
「ゆすりの額まで戦争と一緒に値上がりするなんて知らなかったわ」
Vikは肩をすくめて言う。
「ゆすりだなんて人聞きの悪い。俺たちは貢ぎ物って呼ぶ方が好きなんだがな」
Irethaは苦々しくため息をつく。
「はぁ……何でもいいわ。いくらなの? 今は一Ranも持ってないから、来週まで待ってもらうしかないわよ」
Kivは首を傾げて答える。
「大した額じゃない。たったの十二Ran追加するだけさ」
「倍も取るっていうの!? そんなの暴利よ。そんなに払えないわ」
Vikは笑みを浮かべる。
「ああ、それは残念だ」
KivがIrethaに近づく。
「もし硬貨で払えないなら……別の方法で払ってもらってもいいんだぜ。そう言ってるだけだが、違法な治療師がいるって王都に手紙を送りたいわけじゃないからな」
Vikも近づき、Irethaの首筋に触れながら胸元へと視線を下ろす。
「へへ、素晴らしい体だ。あんたを抱けた幸運な男が羨ましくてたまらないよ。あの二つの素晴らしいものを味わえた息子にすら、少し嫉妬してしまうな」
IrethaはVikの股間に膝蹴りを食らわせ、地面に倒れ込ませた。Kivも思わず後ずさる。
「死んでもあんたたちなんかと寝るもんですか、この変態ども!」
Kivは拳を握りしめる。
「このクソ女、ただで済むと思うなよ!」
Irethaはそのまま家へと向かい、KivはVikが立ち上がるのを手助けする。
「大丈夫か、兄弟? すぐに王都にあのクソ女のことを報告しなきゃな」
「ゲホッ……グルルル。いや! 牢屋にぶち込むだけじゃ生温い……苦しめてやろう……誰にでも身を委ねるしかなくなるまでな」
***
Irethaの家で、彼女はZoraと卓に向かい合って座り、ミードを飲みながら話している。
「……ということがあったの」
Zoraはミードの入ったジョッキを強く握りしめる。
「あのクズども! 身を守って正解よ」
Irethaは飲まずに自分のジョッキを見つめている。
「分かってる。一方でゆすりは終わったと思うけど、もう一方で……Vladmistの衛兵が私を捕まえに来るかもしれない」
「どうして免許を取らなかったの? だって、Kaelに高価な手袋を買えたじゃない」
「ちょっと、あれは三年以上も貯金して買ったのよ。でもお金の問題じゃないの。免許を取るには、試験に合格してから魔法学院に治療師として登録しなきゃいけない。私はRagnorysの学院であるTolkenberで取得したんだけど、あそこでは本気で治療師として見てもらいたいなら必要なの。でもここでは義務付けられていて、免許なしで働くのは違法なのよ。みんなが知ってるわけじゃないけど」
「じゃあ、持ってはいるの?」
「逃げてきた時に前の家に置いてきちゃった。それに、持っていてもここでは何の役にも立たないわ。他の王国で治療師として働くこと、あるいは働いていたことはここでは禁止されているから」
「別のを取るのに何が邪魔してるの?」
「学院同士は情報を共有しているの。新しい免許を取るためにVladmistの学院に違う名前で申請したとしても、魔法の記録だから私が誰だかバレてしまうわ」
「……厄介ね」
「あなたは? そっちの状況はどうなの?」
Zoraは頬杖をついて答える。
「あなたのところほど複雑じゃないわ。酒場の売り上げは落ちる可能性が高いけど、何とかなると思う……Lionを助けるために仕事を探そうかとも思ったんだけど……あなたに回ってくるかもしれない小さな仕事を奪いたくはないの」
「ありがとう……でも今は……診察料を上げなきゃいけないと思う。前にもそれで客を減らしたけど、今回は選択肢がないの。こんな状況だから……私も値段を上げるしかないわ」
Zoraが卓に両手をつきながら言う。
「ねえ、私たちで一緒に商売を始めない!?」
Irethaは目を見開く。
「何の商売?」
「私たち二人とも読み書きができるでしょ。代書屋になったらどれくらい稼げるか想像してみてよ」
「ふふ、名案ね。でも、食費を節約しなきゃいけない時に、お金を払って手紙を書いてもらおうとする人がいるとは思えないけど」
「んー、確かにね。でも少なくともいいアイデアだってことは認めてくれたじゃない」
「いつか実現するかもね。それがあなたにとって唯一のいいアイデアよ」
「そんなことないわよ! LionとJurtetするのだっていいアイデアでしょ」
[注:Jurtetとは、三人の間で結ばれる親密な関係を意味する]
「あなたたち、不道徳なウサギのつがいにとってだけでしょ」
Zoraは微笑み、Irethaの方へ身を乗り出して答える。
「法律じゃ、男が結婚して一緒に暮らせる女は一度に一人だけってなってるけど、複数人と寝ちゃいけないとは一言も書いてないわよ」
「あはは、そうだとしても答えは『遠慮しとく』よ。悪く思わないでね」
「むう。残りの人生ずっと誰とも寝ないつもりなの?」
「私をそこまで惚れさせてくれる男が他にいるとは思えないから……そうなるかもね」
「いつまでそう言ってられるかしらね。未亡人だとしても、あなたはまだ若くて、そういう欲求もある女なんだから。一人で寂しい時に、自分の指だけでは物足りなくなる時がきっと来るわ。そうなったら、私たちの扉はいつでも大きく開いてるからね」
***
一週間後、Irethaは根や花の採集に出かけ、終わると家路につこうとする。
(今日の夕食は何にしよう?……シチューにでもしようかしら?)
家に着いて扉を開けると、最初に目に飛び込んできたのは自分の膝を抱え込むKaelianの姿だった。
「……Kael?……」
***
Zoraの肩に寄りかかりながら、Irethaは涙を浮かべて言った。
「奴らよ、Tasfer兄弟の仕業に決まってるわ!」
すでに夜になり、卓は数本の蝋燭で照らされていた。Lionが怒りに任せて卓を叩き、口を開く。
「クソ野郎どもめ。あの胸糞悪い二人組には二度とミードを売らねえ」
Zoraは片眉を上げて彼を見ると、再びIrethaに視線を向ける。
「ねえ……何を盗まれたか分かる?」
「う、うん……瓶も、ポーションも、大釜も……仕事に使うもの全部よ」
Lionは眉をひそめて言う。
「何か手を打たねえと!」
Zoraは視線を下げて答える。
「もう近所の人たちには話を聞いてみたけど……中に入るのを見た人は誰もいないみたい。一番近い町に手紙を送って衛兵に調査してもらうこともできるけど……証拠がないとどうにもならないわ」
Irethaは指先で涙を拭う。
「それに……今は無免許で治療師として働いていた証拠もない……奴らにそれを提出させることは、盗みを認めることと同じだから」
Lionは卓に手をつく。
「行き詰まりだな。でも、これじゃあんたは仕事ができねえ」
Irethaは息を吸い込む。
「……もう小さな仕事だけじゃ生きていけない……今の状況じゃ……売春をするしかないと思う……」
Zoraが彼女の両肩を掴む。
「本気で言ってるんじゃないわよね!? ……そうなの?」
「……他に選択肢がなくて……Kaelianを養いたいなら……そうするわ」
ZoraはLionをじっと見つめながら言った。
「そこまでしなくていいのよ。聞いて、少し時間をちょうだい。Lionと私で何か助ける方法を見つけるから。ね、Lion?」
Lionは腕を組み、微笑む。
「ああ! 未来の婿の母親を助けねえとな」
Irethaは顔を上げて尋ねる。
「……よく聞こえなかった。なんて言ったの?」
Zoraは引きつった笑いを浮かべながらLionの口を塞ぐ。
「何でもない! あんたを助けるって言ったのよ」
Lionはどうにか振りほどいて言う。
「……心配すんな。あんたもKaelianも見捨てやしねえよ。二人が食べていけるように、必要なら俺が昼夜問わず酒場で働いたっていい」
LionとZoraがIrethaの肩に手を置く一方で、家の外では窓のそばに座ったKaelianが、キツネの姿をした火花と一緒にその会話をすべて聞いていた。
Kaelianは考える。
(僕のために、お母さんが本当にそこまですると思う?)
(決意しているようにも、諦めているようにも聞こえた……本気で言っていたのは間違いないわね)
火花が鳴く。
「キャン」
「心配しないで……もう計画はある……これを持ってる」
Kivの血が付いた割れたガラスの破片を手にし、嫌悪感と少しの吐き気を覚えながらそれを見つめる。
「計画を立てていたけど……お母さんをゆすっていたと分かった以上……少し予定を変えなきゃね。火花、手伝ってくれる?」
「キャンキャン!」




