その16
その後に漁船で金稼いでるんだからマジックバッグなら普通に買えるだろうと言ったところ
「いやぁ…便利だしもう少し必要性がでりゃ買うんだがな?基本生きたやつを持ってくるか、船上で〆て血抜きをするからバッグに入れる必要がないんだ…ついでに雑に扱ったら破けそうだしな」
「絶対に最後が理由だろ」
「そ、そんなことはないぞ!」
「ギルネット。貴方少し前にもギルドカードを割っていましたよね?」
「ありゃ脆いカードが悪いだろ!」
脆いか?と仕舞ったカードを取り出してみるが別段そのようには見えない…割と柔軟性はあるし、種族的に力があるドワーフの俺が握っても何も起こらないぞ。
「ああゴンゾさん。一応カード自体は獣人の方が思いっきり握ったり蹴っても大丈夫なように作ってありますので…ギルネットがおかしいだけです」
「まだ3回しかやってねぇぞ!」
「十分多いですよ…」
「俺もそう思うぞ」
「味方が居ねぇ!?」
周囲を見て助けを求めるが、サーっと目を背ける者と仕事だ!とギルドを急いで出る者が続出する始末。どうせなら割ったときの話を聞いてみようかと思ったが、呆れる気しかせんからやめとくか…
「あー、まぁ俺からは気を付けろよとしか言えんな」
「私もそうですね」
「……実は」
言いづらそうにゴソゴソとポケットを漁ったかと思うと、1枚のギルドカードを取り出した――真ん中に綺麗に穴が空いている。
「……貴方、またやったのですか」
「ギルドボードに依頼のある例のカジキが突っ込んできたから咄嗟に盾にな!目の前まで吻が迫ってきてダメかと思ったぜ!」
「盾にすんなよカードを」
「そもそも盾になるようなものじゃないでしょう…変なところで器用というか。ともかく再発行ですからね」
「俺の小遣いがまた減っていくぜ…」
「自業自得でしょう!」
多分マジックバッグが追加で買えないのは、こういう所で無駄に金を消費しているのもあるんだろうな。あの姉ちゃんが余計不憫に見えてきたぜ…これに惚れたばかりに。
項垂れるように隣の酒場に流れていく駄目男に売店を見てくると声を掛け、ギルドカウンターを背に向けて左手側にある店に向かう。
「い、いらっしゃいませー」
「おう、邪魔するぜ」
パーテーションで仕切られた店内には若い店員が1人…一瞬びくついたから、あのアホに難癖付けられた本人か?
「安心してくれ。アレみたいにキチンとした製品に不良品だなんていやしねぇよ」
「あ、あははは…分かります?」
「そりゃそんなに緊張されちゃあな。悪いな同輩が」
「いえ!流石に例外だと思っていますんで!」
そう思われるだけのことをやらかしたってことだよな。全く…これから世話になる場所に迷惑かけて何がしたかったんだアレは。
「ならいいんだが…んじゃあ早速品の説明を頼めるか?」
「かしこまりました。非の打ち所なくやらせていただきます!」
メンタル強いなこの店員?
精神が強くなければ、ドンチャン騒ぐギルドの一角で店などできぬ。
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