その14
ギルド入会。
衛兵隊による器物損壊疑いの少年護送、もといガキのしょっ引きが終わると野次馬たちは早々にばらけてギルド前は先ほどまでの様相を取り戻していった。プレイヤーたちも落ち着ける場所で情報を整理したいのか去って行ったな…あの賭け事のあんちゃんはまた会いそうな気もする。
「さて、大分想定外なことが起きたがギルドに入るとするか!」
「これ以上想定外が起きないことを祈るわ」
「大丈夫なはずだ…多分!」
さっき不届き物の話をされて、まさに出てきたからこいつの多分って言葉はいまいち信用できんな…
ガチャリと音を立てたドアを開きギルドの中に入ると――テーブルや椅子そして掲示板らしきものが倒れているのを、中にいる者たちが総出で持ち上げなおしているのが見える。
「まぁあの騒ぎならこうなっているのも納得か」
「想定内ってわけだな!」
「想定外の延長だっての。でけぇテーブルもひっくり返ってるじゃねぇか」
「多分ギルマスが暴れたな!それで副ギルマスに説教中ってところだろ。いつもだったらギルドでの騒ぎは前に出てくるってのに外にいなかったし!」
「ギルド思いって言えばいいのか、ただの喧嘩バカって言えばいいのか…」
「どっちもだな!」
こういう脳筋がトップみたいなテンプレはいらないんだが。
”おーい!手伝ってくれー!”
そんな声があのテーブルの場所から聞こえてくる。
「……やるか」
「おう!」
これでギルドでの印象が良くならなかったら承知しねぇからな…
「いやぁ助かりました!たまたま力のある者たちが出張っていまして…それで、ギルドへの入会でしたか?」
「おう、元々それだけのつもりで来たんだ。色々とハプニングがあったがな」
魚介運びにガキの雄たけび、んで最後にギルドの整理だ。おかげで良い繋がりもできたがドッと疲れたぜ。
「あははは…お恥ずかしいところをお見せしました」
「本当にな!」
「うるさいですよ筋力係筆頭」
ギルネット達が力担当かよ…そりゃ居ないわ。あいつら今港で魚の選別やってんだろうし。
「構わん構わん、困ったときはお互い様だっていうだろ」
「そういって頂けると助かります。代わりと言っては何ですが、ギルドへの入会金はタダにいたしましょう」
「いいのか?」
印象が良くなればって手伝いはしたが、そういうのは上の指示を仰がなくちゃいけないんじゃないか?
「問題ありませんよ。ギルド前での騒ぎの報告を聞いていますし、尚且つあの筋力馬鹿がひっくり返したテーブルを直していただけましたし」
「そういやギルマスはどうしたんだ?」
「アレはまだ部屋で反省中です」
この言い草…
「もしかして、あんたここの副ギルドマスターってやつか?」
「ええ、ここ港町フィンドの水産ギルドで副ギルドマスターを務めている、ジグ・ブレンダと申します」
最初からナンバー2のお出ましかよ…んでこっちもテンプレらしさがあるなぁ。
恐らく実質のナンバー1。
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