第87話
第87話 地獄の門、再び
フィルはメグを連れて宿屋に帰ってきた。
フィルは、従者の皆にメグの店での話をした。
「悪魔と契約したのですか!?」
リンが驚くように言った。
「まあね。正直、魂の修復に関しては、八方ふさがりだったし、悪魔の手も借りたいところだったんだ。」
「その契約の最中に地獄で問題が発生でありんすか。」
「クロムウェルもかなり切羽詰まってたみたいだからね。何か大変なことがあったんだろうね。」
「それで、フィルは地獄にいくのかぁ?」
「うん。今回は、メグさんも一緒に行ってもらう。ちょっとした別の用事があるからね。護衛はしっかりね。」
「地獄はダンジョンの地獄の門に行けば、入れますわね。」
「そうですね。私がただ閉めただけなので、すぐ入ることはできると思います。」
「どれくらいかかるかな?」
「今日出発しても2週間は確実にかかります。バルカンの近隣の森の中まで帰らなければならないので。」
「地獄の時間の流れってどうなってるんだろう。早く行ったほうがいいと思うんだよね。」
「地上の一時間が、地獄では一日のように、地獄のほうが早く進んでいると思います。」
「そうなんだ。ならなおさら早く行かないと。」
「フィル。それなら、黒魔術で転移する方法を使ってみるのだ。」
「それは便利だね!どうやるの?」
「『ステッカーパウダー』を使うのだ!これがあれば、一度行ったことがある場所なら瞬時に移動できるのだ。とても貴重なのだ!心して使うのだ!」
『ステッカーパウダー』とは、対象物をシールのようにし、別の場所に張り付けることができる。
この黒魔術の応用は、例えば本の中に張ったシールを現在地として、それをはがし、別の場所に張り付けることで移動を可能とするマジックアイテムである。もちろん行ったことがない場所には適用されない。
「じゃあ、これを使えばあっという間に地獄の門の前まで移動できるね。準備を済ませたら、さっそく地獄の門へいこう。」
―――――
そのころ天界では・・・。
「ミカエルよ。父上からの慈悲に感謝するといい。」
「ガブリエル。私がやろうとした行い自体は間違っているとは思っていない。」
「天使が直接地上に手出しすることは、父上の望むことではない。」
「・・・。地上は我々が手出ししなければ、自ずと混沌に堕ちていく。」
「それも父上がいう、自由意志というものなのだろう。」
「では、天界が脅かされるまで何もしないのか?」
「我々が負けることがあると思うのか?」
「お前にはわからないのか?今、地獄にいる者の存在を。」
「さて、気にしていない。どんなことがあろうとも天界にこれるのは、天使だけだ。」
「・・・。」
「地上と地獄は地続きになっている。ゆえに地上の者のほとんどが地獄へ落ちる。天界に行けるのは善良な民のみ。悪意の持たない完璧の善良の民などほとんどいない。架け橋を降ろすのも天使であり、こちらからでしか干渉することはできない。」
「一部の者を除いてだがな。」
「何が言いたい。」
「フィルというヒューマンは、神の力を使ったのだぞ?地上または地獄にそれと同様、もしくははるかに超える存在が現れてもおかしくないと思わないか?」
「ミカエル。貴様は、下界が反乱を起こすとでも?」
「反乱かどうかは、我々の動き次第だと思うが、今地獄にいる者は、無の存在だ。何をするか、理解できない。」
「その者が脅威だとしても我々から何か行動することはない。」
「それも父上の意思ということか?」
「わかっているじゃないか。そういうことだ。天界を脅かす存在であれば対処すべきであろうが、その存在が地表での蟻と同じなら、わざわざ天界から降りる必要もない。」
「ガブリエル。お前は、フィルも今地獄にいる者も地表を這う蟻だと思っているのだな。」
「私からしたら取るに足らない者だ。」
「甘く見ないことだな。」
「ははは、笑わせる。」
―――――
フィルたちは、『ステッカーパウダー』を撒いた。
すると、粉が燃え上がり、全員を包み込んだ。
転移したのは、ダンジョン奥にある地獄の門の前だった。
「これは?」
「地獄の門が封印されています。」
「誰の仕業だぁ?」
「こんなことができるのはルシファーかミカエルしかいない。」
「フィル様、この封印を解くことは可能でしょうか。」
「出来るけど、魔力を結構持っていかれちゃうな・・・。」
「出来れば戦いに向けてフィル様の魔力は温存しておきたいでありんす。」
「確かに。」
地獄の門に何かないかと辺りを探し出す従者たち。
フィルは門を開ける術を持っていたが、魔力を温存するために出し渋っていた。




