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【2025年7月30日完結!】天界の司書、転生したら最強でした!  作者: 愛猫私


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第80話

第80話 色欲の悪魔1


 地獄の門が開かれ、ルシファーとミカエルが解き放たれたころに遡る。

 悪魔たちは一斉に世界へと飛び出し、ルシファーやミカエルに従うもの、恐怖から逃げ出すものがいた。

 大罪と呼ばれる悪魔たちは、ルシファーやミカエルに利用されていた。

 そのうちの一人、色欲の悪魔は、ルシファーの恐怖におびえていた。

 色欲の悪魔は、愛というものを知らない。

 しかし、ルシファーの父親に対する異常な愛を目にして、恐怖していた。

 命令に従うことしかできず、ケルンの街の娼婦を憑代として、男を食い漁り、魂を献上していた。

 

 色欲の悪魔は、愛というものを知らない。

 恋心すら芽生えたことがない。しかし、生に対する執着だけは、ルシファーの恐怖を受け体に染みついていた。

 ルシファーの命令に背き、結果の出せない悪魔は消えていく。

 大罪の悪魔でも例外ではない。現にルシファーから嫉妬の悪魔はミカエルによって消されたと聞いていた。

 ミカエルは何を考えているのか理解できない。しかし、そんなことよりも目の前の恐怖の化身であるルシファーから逃れる方法を考えていた。


 そんなときだった。

 ルシファーとミカエルは、強欲の悪魔のいる屋敷に向かうという話を聞いた。

 色欲の悪魔は、チャンスはここしかないと思った。

 誰にも気づかれないように、フェデルブルク教会を抜け出し、貧民街を抜け逃げ出した。


 逃げている最中も、いつか見つかってしまうであろう恐怖と見つかってしまったらどうなってしまうのかという恐怖でおかしくなりそうだった。

 色欲の悪魔は、娼婦の体を捨て、何人もの体に乗り移り、憑代を転々とした。

 

 そんなあるとき。色欲の悪魔の目に留まったのは、はつらつとした綺麗な女性だった。

 自分とは大違いであり、なぜこんなにも生き生きとしているのか。

 自分は恐怖で押しつぶされそうになっているのに、この女はなぜこんなに幸せそうなんだと。

 そうして、色欲の悪魔は、彼女に乗り移った。

 

 彼女は、なんとも悲惨な過去を持つヒューマンだった。

 両親は夜盗に襲われ殺され、自身は奴隷商に売り飛ばされ、生きていく希望を失っていた。

 しかし、そんな彼女がなぜこんなにもはつらつと生きていけるようになったか。それは、色欲の悪魔の知らない感情だった。

 奴隷商に捕まっていた彼女を救い出したのは、一人の商人だった。

 その商人は、彼女を買うと奴隷としてではなく一人の人間として扱ってくれた。

 商売の手伝いやお金の計算、在庫の確認から発注まで、一人前の人間として育ててくれもした。

 そんな彼女の魂の過去を見た色欲の悪魔は、ただひたすらにうらやましいと感じた。

 

 色欲の悪魔が取り付いてからの彼女は、少し元気がなくなっていた。

 それを不思議に思った商人が、彼女にどうしたのかを尋ねた。

 

 「最近、元気がないけど大丈夫かい?」

 

 色欲の悪魔は、ハッとした。

 彼女に向けられた言葉だとしても、自分を按じてくれていることに。

 それまで感じていた恐怖が少し和らいだ気がした。

 

 それからというもの、色欲の悪魔が取りついた彼女は、今まで通りしっかりと働くようになった。

 色欲の悪魔も彼女を模倣することで、恐怖から解放されようとしていた。

 

 そんなあるとき。

 身を隠していた色欲の悪魔は、天から降りそぐ糸を見て怖気が止まらなくなった。

 ルシファーの暴力的な魔力で作られた死そのものが天から降り注いでくる。

 彼女を救った商人は、不思議そうに外で王宮のほうを眺めていた。

 

 なぜそうしたか色欲の悪魔には理解できなかった。

 商人を部屋の中へ引きこみ、死から救ったのだ。

 大罪である色欲の悪魔がヒューマンを助けたのだ。

 理解できない行動に色欲の悪魔は混乱した。

 彼女の魂が色欲の悪魔の行動を制したとでもいうのか。

 

 色欲の悪魔は、彼女の魂と自分の思考が完全に混同していた。

 

―――――

 

 商人は、彼女に言った。


 「私の妻になってくれないか。」


 色欲の悪魔である彼女は、困惑しながらも了承した。

 色欲の悪魔は、愛というものを知らない。

 だが、徐々に理解しつつある目の前にいるヒューマンに対しての愛情というものが。

 それを知るたびに、深く広い心になっていくことを感じていた。

 色欲の悪魔が、彼女の魂と同一化していく感じがした。

 

 「新居は、聖王国アルムストラにしようと思うんだが、どうだろう。」


 商人は、ルシファーによって破壊されたケルンを捨て、新天地で新しくやり直そうとしていた。

 それを断る理由がない。むしろ、一緒であればどこでもやっていける気がした。

 

 ケルンを後にし、聖王国アルムストラに向かう道中にそれは起きた。



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