第64話
第64話 茶々丸と紅
王宮の跡地にあった大量のがれきは、フィル達のおかげにより、数日で新しい石材と生まれ変わった。
途中から藍の指導の下、茶々丸も新しい石材作りに参加していた。
大地を司る四大精霊ということもあり、石材を操るのはお手の物であった。
フィルは、茶々丸が新しい石材を作るたびに、いっぱい褒めた。
「茶々丸!すごいね!やっぱり地属性の形質変化ができるんだ!すごいよ!」
「ワン?」
最初は、フィルの言っていることが良く分かっていなかった茶々丸だが、だんだんと意思疎通がとれるようになった。
「藍、茶々丸とどうやって話してるの?」
「え?なんていうか普通に話してるから気にしたことない。」
「じゃあ、どうやって茶々丸の考えてることがわかるの?」
「なんとなく頭に浮かんでくるって感じ?」
「そっかぁ・・・。僕が思い浮かべていることを共有できればなぁ。茶々丸、これ分かる?」
フィルは人差し指を立てて茶々丸に聞いた。
「ワン?」
「ああ。ダメか。じゃあ、これは?」
またも人差し指を立てて茶々丸に聞いた。
すると、茶々丸は石材を咥えて、形質変化を使い一つの魔法陣を描いた。
「わお!」
藍はびっくりした。
「やっぱりそうか。念波をイメージ化すると伝わるみたいだ。よかった。これで茶々丸と意思疎通できる。」
「フィル様すごい。」
「これで茶々丸も一緒に復興のお手伝いしてくれるかな?」
「ワン!」
完全に意思疎通の取れるようになったフィルと茶々丸は、四六時中一緒にいた。
がれきの撤去作業も終わり、つぎに新しい王宮の建築に取り掛かろうとした時だった。
フィルはアドレニス王である父に、強固な城とするために茶々丸と紅を作業に参加させてほしい旨を進言した。
もちろん、アドレニス王は拒否することもなく、王国の再建に従事してくれるならと快く受け入れてくれた。
「さて、茶々丸。この石材に僕が思い描いている魔法陣を写せるかな?」
「ワン!」
茶々丸は大量にある石材の一つ一つに魔法陣を描いていく。
「どれどれ?茶々丸、ここがちょっと違うよ。ここはこう!」
「ワン!」
フィルが思い描く魔法陣は複雑で、茶々丸も一度では作ることが出来なかったが、何度も試行錯誤の末、完成させることが出来た。
「この魔法陣は何に使うのぉ?」
と紅が言った。
「これは、城全体を強固な魔法障壁で覆うための基礎的な魔法陣だよ。強度を上げるためにかなり複雑になったけど、茶々丸が覚えてくれたから簡単に量産できたよ。」
「魔力を流し込まなきゃ発動しないのが魔法陣でしょぉ?」
「そうだね、だから動力源には紅の力も借りたいと思っているよ。」
「わお!なんか大仕事の予感!」
「そうだね。人工魔石を作ろうと思ってるんだ。それもとびっきりのやつをね。紅と茶々丸と僕がいればできるはずだからね。とりあえずは、この魔法陣を刻んだ石材で城壁と城本体を建築していくところからだね。」
すると、そこに名工ギルドの虎徹が何十人もの鍛冶師たちを連れてきた。
「フィル様。手伝いに参りましたぞ。」
「虎徹さん!ありがとうございます。ダダンまで!」
「王宮が破壊されてからというもの、フィル様は工房に来なくなってしまったからのぉ。」
「今まで以上の最強の城を作ろうとしていて、それで手一杯だったんだ。」
「フィル様の考える最強の城ですか。とてつもないものになりそうですな。」
「えへへ。今回は魔法陣を多用するから寸分の狂いなく建築してもらいたいんだ。」
「そりゃあ、職人たちが喜びそうな話じゃな。」
「材料は僕たちが、生産するよ。各場所の建設は他の従者が設計図を持っているから指示通りに作ってもらえるとありがたいな。」
「かしこまりましたぞ。では、名工ギルド一同、アドレニス王国、再建のため尽力させていただく。」
「よろしくお願いします。」
―――――
リンは、とても重要な役割を任されていた。それは、城壁と城を含めた基礎工事であった。
その配置、そして、基礎自体が魔法陣となっており、完成すれば、城全体が巨大な魔法陣を形成するという代物だ。
リンは、てきぱきと名工ギルドの職人を使い、時には茶々丸の掘削能力を借り、基礎を作り上げていった。
翠と藍は、城壁、そして城本体の建築を任されていた。
石材の運搬や石材同士の接合に必要な魔水の生成などを請け負っていた。
リリィは、騎士団とともに新しい王城の建設中に攻め入る者がいないかの警備や魔物退治などを請け負っていた。
破壊され王国として、機能が停止している今、隣国や魔物の侵略から国を守るために尽力していた。
―――――
王城の建築が順調に進んでいるころ、フェデルブルク教会を拠点としていたアドレニス王とサリープの元に聖王国アルムストラの救援が届いた。
その数、荷馬車にして五千台。とてつもない量の人と物資だった。
ルシファーに破壊されたのは、王城のみであったが、大勢の命が奪われ、両親を失い孤児となる者や働き手を失った店の労働力など、人材と物資が大量に贈られた。
サリープが、中心となりケルンの街の状況を把握しており、迅速に人材と物資が行き渡っていった。
「この度は、アドレニス王国の復興のために力を貸していただき、誠にありがとうございます。」
サリープが、聖王国アルムストラから来た使者にいった。
「いいえ。この度アドレニス王国を脅威に陥れた堕天使を討伐していただいたことを鑑みれば当然のことであります。我々聖王国も堕天使の攻撃を受けていた可能性もあります。聖王であるレイデン・リニア・アルムストラ様も全力で支援することを約束するとのことでした。」
「本当に感謝いたします。この御恩は、何かでお返ししたいと思います。」
「そんなことよりも一刻も早い再建を願っております。」
「重ねて感謝を。」
こうして、順調にアドレニス王国は再建の道をたどっていく。




