第63話
第63話 四大精霊
「どわああああああ!!!」
中から飛び出してきた褐色の幼女と茶色いもこもこしたものが空中に打ち上げられた。
その様子を見ていた翠と藍が声を上げた。
「紅でありんす!?」
「茶々丸だ。」
地面に叩きつけられそうになったところを翠の風でふわりと着地した紅と茶々丸と呼ばれた犬は、辺りを見回している。
「おや?ここはどこですかぁ?」
皆が唖然としている状況で翠と藍が紅と茶々丸に近づき言った。
「こんなところで何をしてるでありんす?」
「わぁ。翠と藍だぁ。何って、アスティオ火山の噴火を止めようとしてたら、茶々丸が急にマグマだ溜まりに突っ込んできてさぁ。茶々丸がバカみたいに穴掘りまくって、マグマが至るところに流れ出したから地中を通って茶々丸と塞いでたんだよぉ!そしたら、急に茶々丸が暴れだして、地上に吹き飛ばされたの。」
「ワン!」
なぜか誇らしげな顔している茶々丸を撫でながら紅が言った。
「今から岩を砕こうとしたのにもう粉々になってしまったわ。どうなってるのよ!」
とリリィが言った。
「フィル様、こちら炎を司る四大精霊の紅と大地を司る四大精霊の茶々丸でありんす。」
「えへへ。翠このかわゆい男の子は誰?」
「な!紅!この方はわっちらの召喚主のフィル様でありんす!」
「四大精霊を召喚するなんてすごいねぇ。ね、茶々丸。」
「ワン!」
「どうも、初めまして、フィルと言います。この場にはいないのですが、魔人であるリンが一度、紅さんに遭っていると思いますが、その節はお世話になりました。」
「紅でいいよぉ。魔人・・・?ああ!あの時の私を助けてくれた人かぁ!こちらこそだよぉ!」
「紅、ちょっとなれなれしくしないで。」
藍がむすっとした顔で言った。
「だってうちら召喚されてないし、主従なんて関係ないもんねぇー?」
「ワン!」
「とはいえ、紅はフィル様の従者に命を救われているでありんす。ちょうどいいでありんす。この国の復興の手伝いをするでありんす。」
「えぇぇぇぇ!なんでよぉ!」
「絶対やるべき。」
「ちょうど地属性の力を借りたかったんだ。良ければ力を貸してくれないかな?茶々丸。」
フィルは紅を無視して茶々丸に尋ねた。
「ワン?」
「あれ?通じてない?」
「茶々丸はうちら四大精霊しか意思疎通できないでありんす。」
「なんでうちに聞かないのぉ!」
「嫌みたいだったから、しかも茶々丸は大地を司る精霊ってことだから今の作業にうってつけだとおもったんだよね。」
「ムキー!うちだって茶々丸に負けないもん!仕方ない手伝ってあげる!」
「仕方ないってなんでありんすか!フィル様、茶々丸はともかく紅はアスティオ火山に返すべきだと思うでありんす。」
「理由はどうあれ、やる気になってくれたみたいだから手伝ってもらおう。よろしく頼むよ。」
「はーい!頑張るぞぉ!」
「心変わりの早さ、大丈夫でありんすかねぇ・・・。」
―――――
「フィル様、お話は伺わせていただきました。四大精霊が勢ぞろいということでよろしいですか?」
マルスがフィルに尋ねた。
「そうですね。みんな力を貸してくれるそうです。」
「そうですか、そうしたら紅様には、折り入ってお願いしたいことがあるのですが・・・。」
「うん、なあに?」
「はい。この度堕天使ルシファーによって、大量の国民が死亡してしまいました。その遺体について、申し上げにくいのですが、どう処理したらいいか困っておる次第です。このままだとアンデットになってしまう可能性も出てきてしまうので、出来れば丁重に火葬していただきたい。」
「燃やすの?いいよぉ?」
「紅、何の罪のない人たちが殺されたんだ・・・。できれば、天界に届くように願ってほしい。」
「そうなんだぁ・・・。わかった!そういうことならうちに任せてぇ!」
「ありがとうございます。現在、遺体については、集団墓地に丁重に並べておるところです。良ければ私と一緒に。」
「わかった!じゃあちょっと行ってくるね!茶々丸!頑張れよー!」
紅は、手を振りながら墓地に向かっていった。
「紅だけでは心配なので、わっちも付いていくでありんす。」
「うん、わかった。よろしくね!翠!」
―――――
「じゃあ、茶々丸。この地面にある石材を取り除いてもらえるかな?」
「ワン?」
「ああ、ええっと・・・。」
「ここ掘れ、茶々丸。」
藍が指を差して、茶々丸に指示した。
すると、茶々丸は勢いよく、地面を掘りだし始めた。
「ここは、藍に任せた方がいいね・・・。お願いしたよ、藍。」
「承知。」
「私たちは、小さいがれきでも運びますか。」
「そうだね。どうせ、集めたがれきも新しい石材に再利用しなきゃいけないし、これは僕の役割だね。」
「では、微力ながら私の魔力も使ってくださいませ。」
「うん。ありがとう。」
茶々丸と藍は、手際よく地中に埋まっている石材を掘り出している。
リリィは持てるだけの石材を運び、フィルはそのがれきと化した石材を新しい綺麗な石材へと形質変化を利用して整えていた。作業は夕方になるまで続けられた。
一方、紅と翠は、集合墓地に着いていた。
「これは想像した以上の人数でありんすね。」
「わあ。これはすごい。」
「ルシファーの攻撃は、ケルン全体を覆っていました。外に出ていた者の多くがルシファーの攻撃で亡くなってしまいました。これでも、途中から避難誘導してくれた翠様たちのおかげで多くの命が助かっております。」
そこには、ずらりと白い包帯に巻かれた遺体が並べられていた。
「一瞬でありんしたから・・・。」
「・・・。」
紅がうつむく翠の顔を見上げながら言った。
「フィルも言ってたし、うちの最高の魔法で送ってあげるよぉ!」
紅は両手を大きく広げ、唱えた。
「『天照昇華』」
遺体は青白い炎に包まれ、燃えていく。
「紅、ありがとうでありんす。」
「魂はもうなかったみたいだね・・・。でも、みんな肉体は綺麗に浄化されたよ。」
「魂はルシファーに取られてしまったでありんすね。」
「うち、決めたよ。助けられたってこともあるけど、フィルの守りたいものを一緒に守っていこうと思う。」
「紅・・・。いいんでありんすか?」
「召喚されてるわけじゃないけど、共感は出来る。それにフィルはかわゆいからねぇ。」
「まったくでありんす・・・。」
夕日が沈むころ、青白い炎たちが辺りを照らしていく。そして、太陽が完全に沈み切ると遺体たちを包んでいた炎は消え、灰一つ残さずに遺体は消え去っていた。




