第53話
第53話 強欲の悪魔2
黄金に輝く小さい子供のような姿をしたそれは、黒ずんだ金属の塊の中から出てきた。
強欲の悪魔が手を前に突き出し、唱えた。
「『火竜の咆哮』」
「な!魔剣の能力を使うだと!」
3人は驚愕した。ガルフの炎剣イグニコルアスの剣技を使ってきたことに。
マルスが立ちはだかり、剣技を放った。
「剣技!『打ち水』」
炎と水が相殺され水蒸気が辺りに広がった。
「強欲の悪魔は、相手の能力を真似ることができるのか!?」
「さっきの触手のような攻撃のほうが単調でよかったのですが、これが本体のようですね。」
「聖剣エクスカリオンの効果も発動していると考えるのがよいだろう。気を付けろ。」
すると強欲の悪魔は、瞬時にその場から消え、ガルフの目の前に現れ、蹴りを食らわせた。
かろうじて反応出来たガルフは、剣で蹴りを抑えたが、衝撃で壁に叩きつけられた。
「がはっ!」
叩きつけられた衝撃で、肺にある空気が無理やり口から外へ吐き出された。
すぐさま、マルスとユーアが切りかかるが、強欲の悪魔はひらりとかわし続ける。
強欲の悪魔の反撃は聖剣エクスカリオンの効果で強化されており、いなすことは出来ず、圧倒されてしまう。
倒れていたガルフも加わり、3人で攻撃を仕掛けるが攻撃は当たらずに反撃すら許してしまう。
そこでさらに強欲の悪魔が仕掛けてきた。
「『打ち水』」
大量の水の斬撃は、豪雨のように降り注ぎ、3人を飲み込んでいく。
捌ききれない質量に、なすすべなくダメージを追う3人。
「私の技まで・・・。」
剣と膝をつき、肩で息をしているマルスが言った。
それでもなお、前を見続けるガルフが剣を握りしめ剣技を放った。
「『火竜の咆哮』」
しかし、業火の斬撃は発動しなかった。
ただ剣先は空を切り、火の粉すら発生しなかった。
「強欲とは、欲するものすべてを奪うもの。」
強欲の悪魔がまたさきほど言った言葉を繰り返した。
「能力を真似るのではなく、奪うのか!」
「ということは、聖剣エクスカリオンの効果も我々には効いていないということになる。」
「下手に剣技を放てば、奪われてしまうということでしょうか。」
「そういうことだな。」
「なら、一撃で倒しきるまでだ。騎士団長の本領を見せる時だ。やるぞ。」
ユーアは、聖剣エクスカリオンを握りしめ、言い放った。
「剣技!『生命の聖域』」
部屋一体を囲む魔法陣が展開された。
『生命の聖域』は、自分の寿命を減らす代わりに、発動している間の大幅に能力を向上するものである。
本来であれば、聖剣エクスカリオンの常時発動している強化と併用することで、ヒューマンの領域を超えた能力を開放することが出来る。
しかし、現状、強欲の悪魔に常時発動している強化は、奪われてしまったため、通常よりも命を削り強化範囲を大幅に上げている。
その間にガルフとマルスが切りかかる。
その剣は、強欲の悪魔に届き、さらには反撃を避けている。
ユーアのおかげで、騎士団長の攻撃が届くようになった。
「ユーア殿にも限界がある。一気に攻めるぞ。マルス!」
「はい!」
マルスは、一人で強欲の悪魔の攻撃を受けきっている。その後ろでガルフが剣を構え力を蓄えている。
マルスが、強欲の悪魔の攻撃を弾いたその隙を狙い、ガルフは踏み込み下から上へと切り上げた。
「剣技!『火竜の飛翔』」
下から上に突き上げる大火は天井を貫き、一気に辺りの温度を上昇させた。
強欲の悪魔の体には一直線に裂傷が出来ており、炎に巻かれていた。
「マルス!」
今の攻撃で死んでいないとわかっていたガルフが叫んだ。
「行きます!剣技!『激流葬』」
マルスが放ったのは、水星剣アクアリウゼムを使った突きによる攻撃だった。
以前見た技を改良し、自分のものへと昇華させたマルスが放った突きは、超高水圧の一撃で、強欲の悪魔の腹部に風穴を開けた。
ユーアの展開していた魔法陣が消え、3人とも息を荒げ呼吸をして強欲の悪魔の動向を見守っていた。
炎は徐々に弱まり、強欲の悪魔の姿が見えた。
腹部に空いている穴から向こう側が見える。ガルフの付けた裂傷も残っている。
しかし、強欲の悪魔は生きていた。
「強欲とは、生きる欲すべてを得るもの。」
「対悪魔武器でなければやはり無理か。」
「次の一手を!」
「お待ちくださいませ。ここからは私たちがお相手しますわ。」
と、騎士団長の3人の後ろから声が聞こえた。
振り向いた3人が見たのは、先ほど先手を打たれて倒れていたメルトとアルトの姿であった。




