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カミサマが助けてくれないので復讐します  作者: つくたん
ミーニンガルド
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倒壊する交錯

どうやって。言いかけたアルフが、あ、と声を上げる。そうだった。猟矢には特殊な能力が備わっていた。1日に1度だけだが、どんな物事でも"キャンセル"する能力が。

それでもってこの召喚自体を"なかったこと"にしてしまえばいい。砲台がなければ砲弾は発射できない。どんなに強力な弾だったとしても、打ち出すものがなければ打てない。つまり、あの双子の精霊を"キャンセル"して消してしまえば破滅の閃光は免れる。

「…できるの、それ」

ダルシーが氷剣"ラグラス"を構えながら静かに問う。相討ち、むしろ返り討ち覚悟で突っ込んでしまった方が早いのではないか。どんな強力な能力だろうが神だろうが、その力の基礎となる武具さえ破壊してしまえば意味はなくなる。倒錯の双子がその手首に提げている召喚武具さえ壊せば求心力を失って召喚物は消える。破滅の閃光は免れるのだ。

バルセナもそれは同じ意見のようで、すでに特攻を仕掛ける腹づもりであった。だがダルシーとは少し目論見が違った。

あの双子の術者によって奪われたものがある。それを取り返す。倒錯の呪いをもたらした武具を破壊すれば呪いは解ける。だが、術者を殺すことでも呪いは解ける。つまりバルセナの目当ては術者そのものの殺害だ。召喚された精霊については二の次だ。

猟矢は"この場に召喚したこと"を打ち消すことで双子の精霊を消そうとしている。対してダルシーはその双子の精霊を顕現させている武具を叩き壊すことで消そうとしている。またバルセナは術者そのものの殺害を狙っている。手段は違うが、どれも結果は同じだ。

「できるかわかんない。けど、やってみる価値はあると思う」

少なくとも返り討ち覚悟で闇雲に突っ込むよりは。それにナルド・リヴァイアは言っていた。力を示せと。

これは海竜ナルド・リヴァイアが力を貸すにふさわしい実力と覚悟を持っているのか見極めさせるための戦いだ。玉砕覚悟の鉄砲玉作戦など繰り広げては認められはしないだろう。

そう訴える猟矢にダルシーは黙って剣の切っ先を下ろす。やるというならやってみろ、と目で伝えた。

「…わかった」

ただし"キャンセル"が効かなかった場合は迷わず特攻する。そして倒錯の呪いの双子を殺す。刺し違えてでも。

ごくりと猟矢は唾を飲む。この召喚自体を"なかったこと"にしてあの神の眷属を消す。できるだろうか。否、しなくてはならない。これが失敗すればアッシュヴィトが苦渋の決断を下すだろう。ナルド・レヴィアの生息近海に被害が及ぶと知って水神を召喚する。

「おやおやおや? できるのかなそんなことが!」

何処からか軽快な道化の声が聞こえてくる。猟矢にしか聞こえない。この道化の声は猟矢が"キャンセル"の力を使おうと思った時に現れる。この状況で"キャンセル"の力を使えるかどうか判定する役割を負っている。

「いいや、できるとも! 君がそう望みさえすれば!」

道化の声に太鼓判を押され猟矢は覚悟を決めた。あの双子の精霊の召喚を"キャンセル"する。

あれさえ消してしまえば破滅の閃光どころか、術者である双子を守るものはない。丸腰となった双子に攻撃を加えることができる。攻撃が加えられるなら倒錯の呪いの武具も破壊できる。

「あの召喚物…イービルとライヴの召喚を"キャンセル"!」

ばしゅん、と。猟矢がそう言った瞬間、閃光が弾けた。空気が破裂するかのような衝撃があたりを走った。閃光の眩しさに咄嗟に閉じた目を開けば、双子の精霊の姿は消えていた。そう、打ち消せたのだ。

だが打ち消したのは召喚という行為そのもの。双子が再び魔力を合わせ詠唱を重ねれば再度精霊は召喚される。だがそれよりもバルセナとダルシーが双子に切り込む方が早い。すでにバルセナが六尺棒を振りかざし踏み込んでいるしダルシーも氷剣を振り上げている。その棒と剣がそれぞれ双子の首に下がるチェーンを心臓ごと貫く。その寸前。

「僕らがただここで突っ立って眺めているだけだと思った?」

「僕らがただここで突っ立って眺めているだけだと思った?」

同じ動作で飛び退った双子は、にぃ、と笑う。双子の精霊を喚んだ後、再び魔力を合わせ詠唱を重ねて別の武具を起動していた。

そう。その武具とは。

「倒錯する呪いを。交錯する呪いを。"クロイスプント"」

「倒錯する呪いを。交錯する呪いを。"クロイスプント"」

双子が指を鳴らす。同時に、海竜の苦悶する咆哮が聞こえた。引き裂くような苦痛の煩悶。

まさか、と気付いた頃にはもう遅い。すでに倒錯の呪いは海竜ナルド・リヴァイアに対して発動している。


「大海の海竜王、ナルド・リヴァイア…しっかりなさって、気を確かに」

神殿の3階から戦いを眺めていたら唐突にナルド・リヴァイアの周囲に魔術式が展開した。展開した文字式はナルド・リヴァイアをぐるりと囲み、そして脆弱な蜥蜴へと変えてしまった。

それでも海竜の力は健在のようで、泡を模した結界の中に身を閉じ込めて防御の姿勢をとった。海面から少し浮いたところに泡の結界が浮かんでいる。

その黄色の目は自身をこのような脆弱な姿に変えた呪いへの怒りに満ちていた。咄嗟に泡の中に閉じこもって防御したが、この蜥蜴の姿に慣れれば反撃に転じるつもりだ。時化の体現、荒ぶる海の具現、その名の意味を示そう。

すでに番の異変を感じ取り、ナルド・レヴィアが怒りに身をよじりながらこちらに向かっている。凪の象徴である穏やかな気性の雌竜の怒りはナルド・リヴァイアの憤怒を凌ぐ。ミーニンガルドどころかディーテ大陸そのものすら水没させるのを厭わない。

あの双子は、まさに竜の逆鱗に触れたのだ。

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