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カミサマが助けてくれないので復讐します  作者: つくたん
ミーニンガルド
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倒錯する交錯

「おや?」

「おや?」

揃った声、揃った動きで双子がこちらを見た。片方は左腕を露出し、もう片方は右腕を露出していた。その腕にはそれぞれパンデモニウムの刻印が入れ墨されていた。

それ以外はまったく同じデザインのサーコートを身につけ、まるで鏡写しのような格好をした双子はアッシュヴィトを見た。

「うわぁ、ビルスキールニルの生き残りがいる」

「うわぁ、ビルスキールニルの生き残りがいる」

妨害するのは領主だけだと思っていたのにとんだ誤算だ。ディーテ大陸の反パンデモニウム同盟とやらは随分手回しが早い。苦虫を噛み潰したような顔で双子が唸った。

だが立ちはだかるからには倒さねばならない。大丈夫、たとえ誰が相手でも倒錯の災禍を振りまき獣に変えてしまえばいい。変化さえ決まってしまえばあとはどう料理しようと自由。

「自己紹介は必要かな? 僕がアスクトネリコ、片割れはエムブラニレ」

「自己紹介は必要かな? 僕がエムブラニレ、片割れはアスクトネリコ」

左袖無しがアスクトネリコと名乗り、右袖無しがエムブラニレと名乗る。声だけではどちらが男か女か判断はつかない。体格もよく似ている。

どうぞよろしくと一礼した双子はバルセナを見て、あ、と声を上げた。

「もしかして、以前お会いした?」

「もしかして、以前お会いした?」

まったく見覚えはないが、彼女が連れている鷹から自分たちが振りまいた変化の呪いの気配がする。変化の呪いをかけた相手など路傍の石のようにいちいち覚えてはいないが、気配から察するにおそらく以前会ったことがある。

きょとんと目を瞬かせる双子の前に険しい顔をしたバルセナが一歩踏み出す。右手首のバンクルがきらめいた。

「えぇ? ちょっと待ってよもう」

「えぇ? ちょっと待ってよもう」

こんな人数とやり合うなんて聞いてない。そんなことを口を揃えて言った双子は手を繋ぐ。それぞれの手首にある銀色のブレスレットが魔力を受けて輝く。

5対2だなんて。それならばこちらは助力を呼ぼう。膨れ上がった魔力にアルフが警告を発した。

「召喚!」

なにも召喚武具はアッシュヴィトだけのものではない。神そのものは無理だが、神に通じる眷属ならば適性とある程度の魔力があれば呼べる。

2人でひとつの双子は魔力を重ね詠唱を重ねて召喚魔法を発動する。長々と詠唱を紡ぎ、魔力を練って召喚する。

「闇にありては闇なる光、死に至る川を渡れ……イービル」

「光にありては光なる闇、生に至る山を登れ……ライヴ」

それは主と同じく2つでひとつのものだった。向かい合い、指を絡め両手を繋いだ瓜二つの人間。片方は真っ白の肌と髪を持ち、片方は真っ黒な肌と髪を持つ。螺旋のように絡み合っている下半身は蛇のもので、上半身と対照的に黒と白の鱗をしていた。

神そのものではない。神の眷属の眷属のそのさらに眷属。神の位でいえば最末端だ。精霊だとか妖精だとかの類にあたる。

Evil(イービル)Live(ライヴ)と名のつけられた対の精霊はこつんと額を合わせて人には聞き取れない言葉で文言を紡ぐ。それに呼応して胸のあたりの空間に光が収束していく。

まずい、とアルフが直感した。あれが完成したら桟橋ごと吹き飛ばされる。あれは破滅の閃光だ。

「ヴィト、召喚!」

召喚には召喚で対抗しよう。末端とはいえ神の眷属相手に人間が太刀打ちできるはずがない。

アルフの催促にアッシュヴィトは首を振る。確かにアッシュヴィトが従える神を召喚すればこんな末端の眷属など一瞬で吹き飛ばせるが。しかし。

「ココじゃ水神ティアマトしか喚べナイヨ…」

アッシュヴィトの召喚とて万能ではない。強力すぎるが故に場所を選ぶ。アッシュヴィトの召喚武具"インフェルノ"は場の属性元素を引き出して神を喚ぶ呼び水とする。水場の側ならば水の神。火の側ならば火の神を。荒涼とした山場であれば地神を。場の元素が多ければ多いほど召喚にかかる魔力も詠唱も減る。それを無視して召喚することもできるが、注ぐ魔力も詠唱も膨大なものとなる。

そしてこの桟橋は海竜ナルド・リヴァイアのそばだからか、あまりにも水の元素が満ちている。他の元素など排斥するかのように水の元素にあふれている。これでは水神以外の召喚は絶望的だ。

喚べないわけではない。じっくり魔力を練って詠唱を重ねれば召喚できるだろう。だがそれをしている時間がない。その前にあちらの破滅の閃光が完成する。

時間がない。ならばすぐさま召喚できるものを喚べばいい。だが、この場においてその条件が満たせるのは水神ティアマトのみ。

だが忘れていないだろうか。水神がナルド・リヴァイアの側にいる時、番の雌竜が嫉妬に狂うことを。水神が雄竜を誘惑する気がなくとも、側にいるだけで妬くことを。その悋気が凄まじいことを。

「…ココで喚んだラ……ナルド・レヴィアが津波を起こすヨ」

喚ぶのは簡単だ。召喚すればこの末端の眷属など一瞬で葬れる。水の元素が満ちているこの場では、まるで息をするように容易だろう。

だが嫉妬に怒り狂った雌竜はどうなる。怒りに海は逆巻くだろう。津波が発生し、すべてを押し流す。その被害を被るのはナルド・レヴィアの生息域付近の無辜の民だ。

アッシュヴィトの召喚のせいで無用の天災が発生する。それで滅ぶ都市も村もあるだろう。それで生き残った人間はどうなる。ナルド・リヴァイアを守るために水神を召喚したためと言われて納得するのか。

つまり、水神は召喚できない。その他の神を喚ぶには時間が足りない。召喚は使えない。しかしだからといって、生身の人間では神の眷属に太刀打ちできない。

どうあっても詰みの状況。否。

「やれるかわかんないけど…やってみる」

完成されつつある破滅の閃光を前に、猟矢が立ち上がった。

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