全ての真実を見つけました
順調に成長しつづけるマルメ、その先に待つのは?
ガーネダンジョンは、順調に拡大していました。
『本来の姿で戦えるようになったのが助かる』
セブンがご機嫌で、高位クエスタとの対戦を行っていた。
それをダンマスルームで見ていたマルメは、少し悩んで居た。
「このままで良いのかな?」
それに対してリントさんが言う。
『いいと思いますよ、ダンモンも増え、人気も上々、お宝だって高価な物に置き換えた』
クスクスが嬉しそうに言う。
『猫耳喫茶も売り上げも好調ですよ!』
全てが上手く行っている様に見える中、ヤバがやって来た。
「盲目のバジリスクって居るんだけど、マルメの所で引き受けてくれない?」
『お前は、本気でここを問題あるダンモンの引き受け場所だと思っていないか?』
クエスタを倒したセブンが突っ込むがマルメがあっさり頷く。
「引き受けさせてもらいます!」
こうして、マルメは、あっさりとその問題あるダンモンを引き受けてしまう。
『実際、どうするんですか?』
リントさんの質問にマルメがワーハに言う。
「ワーハとコンビ組んで貰うね。作戦は……」
作戦を聞いて、ワーハが納得する。
『了解しました。任せて下さい』
こうして、ガーネダンジョンに新たなコンビが誕生した。
熟練クエスタのパーティー。
この頃、人気が高い、ガーネダンジョンに挑んで居た。
リーダーの魔法剣士が言う。
「このダンジョンは、ダンモンよりトラップの方が手強いから気をつけろ!」
それに対して、シーフあがりの忍者が胸を叩く。
「拙者にお任せあれ」
そして、幾多のトラップを突破し、最深部、九階に到着した。
「ここまで来ると敵も強い奴が居ますね」
ウィザードの言葉に魔法剣士が頷く。
「油断するな!」
そして、現れたのは、バジリスクだった。
「面倒な奴が出てきたな。相手の正面には、行くな!」
魔法剣士がそう指示して、側面に回ろうとした時、バジリスクが素早く反応して、クエスタ達を正面に捕らえる位置に移動した。
「こいつ出来る!」
魔法剣士がバジリスクに神経を集中してスピードを上げた時、その背後からワーホワイトタイガーのワーハが襲い掛かる。
「しまった!」
バジリスクに気をとられた魔法剣士が致命的な一撃を受けた瞬間、ウィザード達の気がそれ、バジリスクの尻尾が側面から直撃する。
ダンマスルーム。
『あいつらも、あのバジリスクが盲目で、石化能力無いとしっていたら、あんな無様な真似には、ならなかっただろうな』
セブンの突っ込みにマルメが頷く。
「多分ね」
グルットが言う。
『一回限りの手じゃないか!』
苦笑するマルメ。
「普通のクエスタにダンモンの個体識別出来ないよ。だいたい、盲目のバジリスクなんてふざけた話を信じるクエスタが居ると思う?」
リントさんが肩をすくめる。
『絶対に居ないだろうな』
こうして、マルメは、格安ダンモンでクエスタを倒し、利益を増やし遂には、ダンジョンを地価十階まで拡張する事になった。
『これは、堅甲じゃないか?』
スケさんが拡張した先の空間で見つけた甲羅を見て驚く。
『本当か? それが出るのは、もっと深い階だったと思ったが?』
熟練者のカクさんも不思議がる中、マルメは、セブンをつれてその甲羅を手に取る。
「多分、色々と特殊な条件が重なったんだよ。一つは、このダンジョンは、元々、お祖父ちゃんの手で堅甲を出現させていたから」
スケさんが頷く。
『その可能性は、あるな』
『だとしたら、得したな、これは、あらゆる攻撃を防ぐ最強のアイテムだ。セブンに持たせればかなり有利になるぞ』
カクさんも気楽に言う中、マルメは、堅甲を持ち、セブンと一緒にヤバの傍に行く。
「そろそろ、はっきりさせておきますか?」
ヤバが振り返る。
「何を?」
マルメが言う。
「うちに回されるダンモスの事ですよ。故意に産み出されたダンモンですよね?」
ヤバは、眉をよせる。
「何でそうなるの? 偶々そういうダンモンが居て、貧……、節約家のマルメの所に紹介しただけだよ」
マルメが真剣な目で言う。
「あのね、泣かないバンシー、グルメな吸血蝙蝠、病弱なワーホワイトタイガー、究めつけは、盲目のバジリスク。ここに来る前は、皆どうしていたんですか?」
クスクスが驚く。
『あれ、そういえばあたし、ここに来る前って……』
ワーハやグルット、新入りのバジリスクも困惑する。
ヤバが微笑みながら言う。
「もしも、故意的に産み出されたダンモンだとしたら、どうするの?」
『だいたい、どうしてそんな駄目駄目なダンモンを故意的に産み出したんだ?』
セブンの問い掛けにマルメが言う。
「あちきへの試練だった。この堅甲は、試練をクリアした商品でしょ?」
ヤバは、苦笑する。
「そうだよ、堅甲を得るには、それ相当のダンマスとしての才覚を見せなければいけない。マルメは、それを見せたから最短の十階で出したんだよ」
不穏な空気に緊張が走る中、マルメが言う。
「特別なダンモンの製造し、提供する。一介の営業に出来る事じゃない。それに思い出した、小さい頃、一度だけ貴方を見た事があった。その頃と全く変わってないから別人かもと思ったけど違う。貴女は、只者じゃない」
ヤバが頭をかいて言う。
「多少、気付くのが早すぎた気がするね。今の貴女じゃ、まだ足りないかもしれない」
ヤバを覆う空気が変わった。
『足りないって何がだ!』
セブンの言葉にヤバが告げる。
「あなたがその可能性が高いって事だよ。届くかな」
「牙翼甲鱗の獣って事ですね?」
マルメの言葉にヤバが頷く。
「そこまで気付いてたんだね。でも、その下地には、多分、ご両親とおじいさんが居る」
マルメが頷く。
「そうだと思います。両親がクエスタとして鍛え、攻牙と天翼を与えてくれ、おじいちゃんから引き継いだダンジョンだから早く堅甲が手に入った。後は、龍鱗のみ。セブン、力を貸して!」
ヤバが問う。
「この世界は、何だと思う?」
マルメが答える。
「この世界は、ペンタゴングループが作り出した実験を行う世界。あちき達は、貴女達のモルモットってやつですよね?」
その言葉に周りのダンモン達が反応し、攻撃の準備をした時、ヤバが気配を放った。
それだけで動けなくなるダンモン達。
『これは、魔法でも術でもなんでもない、純粋な気配。それだけでこちらの動きを封じるなんて?』
スケさんが呻き、カクさんも必死に足掻こうとするが、指一本動かない。
その中、セブンのドラゴンワールドに護られたマルメだけが動けた。
「貴女は、神様なのかもしれない。それでもあちき達は、モルモットである事を認めない!」
歩みだすマルメ。
「取り敢えず、お約束だから」
ヤバの指先から力が放たれる。
それを堅甲で防ぎ、マルメがクエスタ時代の愛剣を抜く。
『天翼』
マルメの背中に光の翼が生まれ、力の増幅が始まる。
「穿つ為の牙に、攻撃を高め、届かせる翼もある。攻撃を防いだ甲羅も手に入れた。最後の近づく為の鱗は、有効かしら?」
ヤバは、余裕で問いかける。
マルメは、進んでいくが、セブンが呻く。
『強すぎる! この気配に打ち勝つのは、無理だ!』
セブンの弱音にマルメが怒鳴る。
「甘えないで! セブンは、負けクセがついてるだけ、セブンだったら出来る!」
セブンが自分を信じるマルメの言葉に頷く。
『任せろ! お前をあいつの傍まで連れて行く!』
セブンのドラゴンワールドが強まり、マルメの歩みを護る。
「あちき達は、自分の意思で進む!」
振り下ろされたマルメの一撃がヤバに決まった。
長い沈黙の後、ヤバの額から一筋に血が流れる。
「お見事。合格だよ」
拍手をするヤバ。
そして、その周りに神の気配を纏った、ペンタゴングループの幹部が現れる。
「これで、この世界の役目は、終わりましたね」
ムショの言葉にヤバが頷く。
「この世界へのあちき達の干渉は、ここまで。システムだけ残して、あちき達は、立ち去るよ」
そして、消えていくヤバ達であった。
数日後のダンマスルーム。
『結局、なんだったんだ?』
セブンの言葉に、ダンマスとしての仕事を続けるマルメ。
「実験が終わったって事だよ。そして、この世界の未来は、あちき達に託された」
そういって見せられたのは、ペンタゴングループの解散の記事。
『おい、ペンタゴングループが解散したら、このダンジョンシステムは、どうなるんだ?』
「それを考えるのがあちき達の役目だよ。多分、不合理だったこの世界を平穏無事に動かしていたのは、神様の力。それが無くなった以上、自分達の力で新しいルールを作らないといけない」
マルメがそう答えて立ち上がる。
「だけど、それが普通なんだよ。失敗するかもしれないし、不幸な行き違いもあるかもしれない。それでも、ゲームみたいな世界のままでは、新しい一歩は、踏み出せないよ」
「そうそう、神々が求めるのは、自分達の意思で進化していく世界なんだから」
そういったのは、ヤバだった。
『干渉をやめるんだったんじゃないのか?』
ヤバがあっさり頷く。
「そうだよ。とりあえず、ペンタゴングループは、マルメのご両親を始めとする有力者に分割した状態で委譲してあるしね。あちきは、普通の営業として働くだけ。それでこれが新製品のパンフだよ」
差し出されたパンフを手に取るマルメ。
「高い、値引きしてよ」
ヤバは、頭をかいて言う。
「一般社員のあちきにそんな権限ないの。今日中にノルマ達成しないと給料が差っ引かれるの。あちきを助けると思って買って!」
そんなやり取りに呆れた顔をするセブン。
『結局、やることは、変わっていないって事か?』
『そうそう、生まれがどうとか関係ないよ』
クスクスが猫耳を装着しながら答える。
『自分達に出来る事を精一杯やる。その先によりより未来がある筈です』
ワーハが言うと新しい相棒のバジリスクも頷く。
「あちきは、このガーネダンジョンを最高のダンジョンにするんだから!」
マルメの夢は、世界が新しい一歩を進みだしても変わることは、無かった。