第66話 【最終回】パン研!
イタリアから戻って少し経ってからの朝、豊心君が遅れて学校にやってきた。
右手にギプスを着けていた。
「豊心君どうしたの?」
「ちょっと転んでな」
その後豊心君は元気がなかった。
それはそうだろう、パンを作れないのだから。
翌日も豊心君はうつむいたままだ。
「豊心君。大丈夫? 僕になにか出来ないかな?」
「パンが食べたい。手作りのパンが」
豊心君は怪我で作れない。
ならば僕が。
昼休み、調理実習室に来た。
僕は入部した時に1度だけ豊心君に教わって作ったことがある。
ただ、その1回だけだ。
でも豊心君がパンを作っているところはたくさん見ている。
僕は材料を揃え、パンをこねていく。
そして発酵のためにボウルにラップをかけたのである。
授業が終わるとすぐに調理実習室に。
無事に膨らんで大きくなっている。
成功だ。
一旦部室に行く。
パニス・クアドラトゥスにお祈りをする。
「どうか成功しますように」
膨らんだ生地を伸ばして丸めていく。
そういえば何のパンを作るか決めていなかった。
冷蔵庫を開けるとチーズがたくさんあった。
では生地の上にチーズを乗っけてオーブンで焼こう。
時間を設定しているのだが、気になって何度もオーブンを覗く。
チーズの溶け具合が良い感じだ。
しばらくしてパンが出来た。
さっそく豊心君の元にいく。
「豊心君。手作りパンだよ」
豊心君は驚いたようだ。
「これ友久が作ったのか?」
「うんそうだよ」
豊心君は左手でパンを持ち食べていく。
「こねが甘いな。発酵も不十分だ。チーズも別のチーズを使った方がいい」
「そうか。ごめん」
「でも暖かみのあるいいパンだ。手作り感が強くて美味しいな。また食べてみたい」
豊心君が笑顔で僕に言う。
僕はうれしくなった。
そして豊心君が申し訳なさそうに言う。
「俺が手作りパンを食べたいって言ったのは、パン屋のパンでよかったんだぞ。今の俺だと店に行ってもトングとトレーを持てないからな」
そうだったのか。
作ることなかったんだ。
「でも、俺のために作ってくれたのはとてもうれしい。友久も立派なパン教徒だな」
「だから僕は無神論者だって」
「あんたたちなにやってんの。豊心君その怪我明日には治るんでしょ。またパンを作ってもらうからね」といつの間にかいた真奈美さん。
「それ本当?」
「ああ。明日にはもう大丈夫だ。ギプスなんて大げさなんだよ」
「それはよかった。じゃあ明日はなに作るの?」
「そうだなあ。西暦800~900年代、ヴァイキング時代のスウェーデン・ビルカの墓から小さなパンが見つかってな……」
(完)
お読みいただきありがとうございました。
今回パンの話を書きましたが、とても楽しく執筆出来ました。
調べていくうちにパンの奥深さや意外なこともたくさん知れました。
そしてパンを食べるのが楽しみに。
最後にパンに祈りつつ、読んでいただいた皆様に感謝を。




