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妖狐の私、人間の社会で稼ぐためVtuberとして百合営業をしていたら相方の化け狸がガチだった件  作者: パッタリ


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25/30

25話 妖怪系VTuber(本物)たちの集い

 『みんなー、こんばんきつたぬー!』


 夜の八時。

 今日の配信は、事務所内コラボだった。

 参加者は四人。

 妖狐の私、シズク。

 化け狸のコノハ。

 烏天狗の新人、アヤメ。

 そして先日の3D合同企画で絡んだ、猫又系先輩VTuberのミヤビさん。


 表向きは、ただのゲームコラボである。

 画面には、四人で協力してダンジョンを進むタイプのゆるいアクションゲームが映っていた。


 『今日は妖怪系VTuberコラボということで、みんなでまったりゲームしていきます』

 『よろしくお願いします、皆さん』

 『シズク先輩! 本日は同じ戦場に立てること、光栄です!』

 『ゲームだからね』

 『いやー、妖怪組が揃ったねえ。画面の圧がすごい』


 ミヤビさんが、気だるげな声で笑う。


 [コメント]

 ・妖怪組きた!

 ・狐、狸、猫、天狗

 ・画面がもふもふしてる

 ・アヤメちゃん気合い入りすぎw

 ・ミヤビ先輩いると空気ゆるいな


 ゲームが始まる。

 私は剣士キャラ。コノハは回復役。アヤメは弓使い。ミヤビさんは、なぜか素手の格闘キャラだった。


 『猫又なのに殴りにいくんですね』

 『猫ってさ、獲物を前足で叩くじゃん? あれの延長』


 とはいえ、ミヤビさんはゲームが上手かった。だらだら喋りながらも、敵の攻撃をひょいひょい避け、的確に殴り倒していく。


 『シズクちゃん、右から来てるよー』

 『わかってます』


 私は敵を切り伏せる。

 もちろんゲーム内の話だ。ただ、反射的に動きが戦闘寄りになるのか、コメント欄には妙な反応が流れた。


 [コメント]

 ・シズクちゃん動きガチ

 ・敵の処理早い

 ・ゲームなのに殺気ある

 ・コノハちゃんの回復早い


 『シズクちゃんはさー、きつたぬの中だとツッコミ役で振り回されてるイメージあるけど、実際かなり前に出るタイプだよね』


 ミヤビさんが、敵を殴りながら言った。


 『そうですか?』

 『うん。コノハちゃんが柔らかく場を整えて、シズクちゃんが決めるところ決める。配信だと夫婦漫才っぽく見えるけど、ユニットとしてはけっこう役割分担できてるよ』

 『ふ、夫婦ではありません』


 私が否定するより先に、コノハが反応した。


 『ですが、相方として支えられているなら嬉しいです』


 [コメント]

 ・夫婦否定が弱い

 ・ミヤビ先輩の分析助かる

 ・きつたぬ評いいな

 ・コノハちゃん嬉しそう


 ミヤビさんは、ふんふんと気楽に続ける。


 『外から見るとね、コノハちゃんの重さでシズクちゃんが困ってる、っていうのがまず面白いんだけど。でも最近は、シズクちゃん側もけっこう受け入れてる感じ出てるよね』

 『出てません』

 『出てる出てる。出汁みたいに染み出てる』

 『例えが嫌すぎる』


 コノハが何か言いたげにこちらを見る。

 私は画面内の敵に八つ当たりするように斬りかかった。


 『シズク先輩はお優しいのです! その化け狸が図々しく居座っているだけで!』


 アヤメが横から弓を放ちながら叫ぶ。

 コノハの声が、すっと甘くなる。


 『アヤメちゃん、回復いりますか?』

 『い、いりません!』

 『そうですか。では自力で頑張ってくださいね』

 『あっ、ちょっ、敵が多いです! 回復を!』

 『今、いらないと』

 『コノハ先輩!』


 [コメント]

 ・後輩教育w

 ・回復役を怒らせるな

 ・アヤメちゃん草

 ・バチバチで助かる


 ミヤビさんが笑う。


 『アヤメちゃんはさ、早めにキャラ方針決めた方がいいよ』

 『キャラ方針、ですか?』

 『うん。真面目な尊敬系後輩でいくのか、生意気に先輩を煽っていく小悪魔後輩でいくのか。今のままだと、シズクちゃん相手には崇拝、コノハちゃん相手には喧嘩腰、リスナー相手には清楚、みたいになってるから、ちょっとブレてる』


 アヤメがぐさりと刺されたように黙った。


 『うっ……』

 『もちろん、それを多面性として見せられるなら強いよ? でも新人のうちは、まず入口をわかりやすくした方がいい。切り抜きで一発で伝わるキャラがあると伸びやすいからね』


 先輩風を吹かせるのはうざい。だが言っていることは的確。

 私も頷く。


 『ミヤビ先輩の言う通りだね。アヤメは素材はいいけど、今はちょっと全部乗せになってる』

 『シズク先輩まで……』

 『真面目にやるなら、敬語で礼儀正しいけど時々毒舌。生意気後輩でいくなら、煽るけど最後はちゃんと慌てる。どっちにしても、軸は決めた方がいいよ』


 コノハも回復魔法を飛ばしながら言う。


 『アヤメちゃんは、素直に悔しがるところが可愛いと思います。そこを活かすのは良いのでは?』

 『コノハ先輩に褒められると、なんだか複雑です』

 『あら、素直ですね』

 『うぐぐ……! では私は、礼儀正しくも誇り高い烏天狗として、時に先輩方を見返す後輩という方向で……!』

 『長い長い』

 『切り抜きタイトルに入らないねえ』


 ミヤビさんが容赦なく斬る。


 [コメント]

 ・先輩たちのガチアドバイス

 ・アヤメちゃん育成回

 ・ミヤビ先輩口悪いけど的確

 ・きつたぬも真面目に仕事してるな


 ゲーム内では、ボス戦に突入していた。

 巨大な魔物が画面中央に現れる。

 アヤメが慌てて弓を構え、私は前に出る。

 コノハが支援を入れ、ミヤビさんが横から殴る。


 『アヤメ、焦らない。距離取って弱点狙って』

 『はい、シズク先輩!』

 『コノハ、回復お願い』

 『任せてください』

 『ミヤビ先輩、そっち行きました』

 『はいよー。猫パンチで止めるね』


 だらだら喋っていたわりに、連携は悪くなかった。ボスの体力が削れていく。


 『これさ、妖怪組で定期コラボにしてもいいかもね』


 ミヤビさんが言う。


 『ゲームしながら妖怪あるあるとか、事務所の裏話にならない程度のVTuber仕事話とか』

 『いいですね。コラボ名どうします?』

 『もふもふ妖怪会議』

 『私、羽なんですが』

 『じゃあ、もふもふと羽』

 『雑です!』


 [コメント]

 ・定期化して

 ・もふ羽会議w

 ・妖怪組好き

 ・アヤメちゃんツッコミもいけるな


 ボスを倒すと、画面に勝利演出が出た。


 『やった!』

 『ふふん、私の弓が決まりましたね!』

 『最後に削ったのはシズクちゃんですけどね』

 『コノハ先輩、そういうところです!』

 『はいはい、仲良く』


 ミヤビさんがゆるくまとめる。

 配信はその後も、軽い探索と雑談を続けた。

 ミヤビさんは先輩として、やや上から目線で話す。でも、3D企画やコラボでの見せ方、後輩の伸ばし方については普通に参考になることを言う。


 アヤメは悔しがりながらも、ちゃんと聞いている。コノハは笑顔で釘を刺しつつ、必要なところではフォローを入れる。

 私はその間で、敵を倒したり、話を整理したりする。

 なんだかんだ、悪くない空気だった。


 【配信後】


 通話を切ると、私は椅子にもたれた。


 「思ったより成立したね、妖怪組」

 「はい。ミヤビ先輩は少々振る舞いが強いですが、視点は的確でした」

 「アヤメにも刺さってたしね」


 スマホが震える、アヤメからだった。


 『本日はありがとうございました。キャラ方針について、少し考えてみます。ですが、シズク先輩への敬愛は絶対に削れません』


 続けて、もう一通。


 『コノハ先輩の助言も、少しだけ参考になりました』


 私はそれをコノハに見せた。

 コノハは、にこりと笑った。


 「少しだけ、ですか」

 「成長してるよ。前も同じこと言ってたけど」

 「次のコラボでは、もう少し素直に感謝できるよう教育しましょう」

 「ほどほどにね」


 さらに、ミヤビさんからもメッセージが来た。


 『妖怪組、数字よかったね。またやろ。あとシズクちゃん、コノハちゃんの嫉妬制御うまくなってるじゃん』


 私は画面を伏せた。


 「……あの猫又、見てるなぁ」

 「何か?」

 「なんでもない」


 妖狐、化け狸、猫又、烏天狗。

 表向きは、ただの妖怪モチーフVTuberコラボ。

 実際には、本物たちがゲームをしながら、仕事とキャラ立ちと相方ポジションについてだらだら話す会。

 ゆるいようで、案外ちゃんと得るものはあった。


 「コノハ、次の妖怪組コラボ、ありかもね」

 「はい。ただし、シズク殿の隣はわたしです」

 「そこはブレないね」

 「相方ですので」


 私は苦笑しながら、配信のアーカイブを確認した。

 コメント欄には、もう切り抜き候補が並び始めている。


 ──アヤメ、キャラ方針を刺される。

 ──コノハ先輩、回復で圧をかける。

 ──ミヤビ先輩、うざいけど正論。

 ──シズク、妖怪組の保護者になる。


 保護者ではない。

 そう思いつつも、私は少しだけ笑った。

 面倒くさい妖怪が増えるほど、配信のネタも増える。

 現代社会で生き残るには、たぶんそれくらい図太い方がいい。

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